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放課後の約束 2

 どうするんだろう私。ツブツブと帰るのかな…帰りたいな。

 でもきっとヤグチに引きとめられそうな気がする。

 それで結局ヤグチの「見届ける役」って、何をしてくれるんだろう。私の事を助けてくれると言っていたけど…

 ヤグチだって30人の中に入っているのに、その30人の話を聞くのに何を見届けるんだ?一緒に話を聞くって事か?


 

 そしてやはり私の心は桜井に対する不信感でいっぱいだ。

 私にはヤグチの存在を教えなかったくせにヤグチには私との話を全部聞かせてたなんて。すごくバカにされている。

 やっぱり断れば良かったのだ。そしてどっちにしろ断れない話だとしてももっと大騒ぎして嫌がっててこずらせてやれば良かった。



 放課後、私はどうするべきなんだろう。

 やっぱり高森の所に行こうかと考えて躊躇する。スズキナツミにも行かないと言ったし、ツブツブにもせっかく誘われたのに。

 ツブツブと帰りたいな。

 浅ましいかな…浅ましいよね…


 でもいいや、帰りたいから帰ってしまえ。

 ツブツブが桜井の思惑になんか関係なく、私の所に来てくれたんだったらいいのに。



 6時限目の現国は、半分先生の話は耳から入りながらも、脳みそのほとんどではツブツブと帰る嬉しさと、私の仕事に対するヤグチの立場の不確かさと、桜井への不満と、後27人どんな風に私の所へやってくるんだろうかと取りとめもなく考えていたので、頭が相当ほんわりしているうちにいつのまにか1時限たっていた、みたいな感じで終わった。

 高森の所へ行くのは止めだ。取りあえず今日はツブツブと帰る事に決定。

 そして明日桜井に問いただす。

 チャイムとともに速攻で帰り支度をはじめようとしたが、やっぱりヤグチがすぐに振り向いて来た。



「どうする?かばん持ってく?」

「今日はやっぱり高森のとこには行かない」

「ふ~ん…」ヤグチが探るような眼をする。「じゃあどっか寄って話してく?」

ヤグチは完全に私と帰るモードだ。なんでこんなに理不尽な仕事にノリノリなんだろうヤグチ。

 助けてくれるのはありがたいが、今日はスズキナツミとヤグチで私の仕事はもうお仕舞。だから私は首を振った。

「今日はちょっと急ぐから」

「もしかしてさ」ヤグチが不機嫌になる。「今日もオオツブと帰んの?オレの方が先に誘ったよな?まだ話全然終わってねぇし。てか、これから話詰めていか…」


 困っているところに「ヒカル!」とヤグチを呼ぶ声がして私は助かった。

 ヤグチも呼ばれた方へ振り向く。

 ヤグチを呼んだのはエダノノカだった。トイレで私をじろじろ見てきた子だ。



 エダノノカは巨乳だ。たぶんFカップぐらい。

 女子の制服はベージュのブラウスに紺のブレザーなのだけれど、もう6月なので今はベージュの長袖ブラウスか、薄い水色の半そでシャツか、どちらを着てもいい中間の期間だった。

 エダノノカはベージュのブラウスの袖をまくり、一番上のボタンをはずして着ていた。


 私は女だがナイスバディな女の人の体を見るのは好きなので、エダノノカの事はあんまり好きじゃないが、エダノノカがブラウスのボタンをはずす事には賛成だ。

 なんならもう1,2個開けてくれたらいいのに、とさえ思う。

 それでもエダノノカの、私の中での点数は63点だった。

 私よりも低い。

 Fカップを見るのは好きだし、少しキツイ感じはするけどまあまあ可愛いが、性格が好きじゃないのだ。

 エダノノカも同中だが、たぶん向こうも私の事を嫌いだと思う。



 「ヒカル、今日一緒に寄って欲しいとこあるんだけど」

エダノノカが目をキラキラさせて、少し甘えた声でヤグチヒカルに言っている。

 私はエダノノカのように、相手が男子か女子かで声のトーンを変えるやつは嫌いだ。さらにエダノノカは目の光まで違う。

 私が男だったら嬉しいかもしれないが、私は男も女もない目線で見て、エダノノカの点数はやっぱり48点くらいに下げとこう。

 エダノノカはヤグチの事が好きなのだ。

 というか、見た目が派手で目立つ男子が好きなのだ。中学でもヤグチみたいな感じの男子と付き合っていた。



 「無理」とヤグチは簡潔に断り、エダノノカがムッとする。

 行けばいいのにヤグチ。

 私が男子だったら困りながらもたぶん、誘われるがままにエダノノカに付き合うかもしれない。

 が、言わなくてもいい事までヤグチが言った。

「今日山根と帰るから」

エダノノカが私を思い切り睨んできた。

 バカじゃないのヤグチ。私はエダノノカが好きじゃないけど、エダノノカに嫌われるのは嫌なのだ。面倒くさいから。

 嫌だな。脱出しよう。そして早く校門に行こう。見るともうツブツブはいない。


 「ごめん!ヤグチ君」

私はいつもより格段に明るい声で言った。「今日私、歯医者の予約あった」

即座にかばんを手に持って教室のドアに向かう。

「山根!」ヤグチが叫んだけど無視だ。




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