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休み時間 2

 「ううん」サクラちゃんが首を振った。「薫ちゃんは髪の毛とか、ちょっと可愛げに手を入れたりしたらすごく良くなると思うよ?」

優しいなサクラちゃん。私は幸せな気持ちになる。

「結構さぁ」とサクラちゃんが続ける。「薫ちゃんは『あんま笑わない』って感じ強いじゃん。だからたまにパァって笑うと可愛いなって思うよ」

 あぁ…本当に嬉しいな。



 サクラちゃんとミノリちゃんは他の女子とは違うのだ。

 誰かが買ったたいして可愛くもないペンケースを「可愛い~!私も欲しいな~」って言うような女子じゃない。たいして可愛くもない意地悪な子がちょっと違う髪型をしてきた時に、ウソの塊で「似合う~~」とかそういう事も言わない。

 私は2人とまた同じクラスになれて本当にラッキーだった。

 神様ありがとう。

 そう思ったら、桜井が「私は神様だよ」と言っていたのを思い出した。



 「なんかでも、私がドキドキしちゃった」サクラちゃんがふふっと笑いながら言う。

「今朝のオオツブライ君が薫ちゃんに言ってた感じって、ちょっと少女漫画っぽい感じだったよ~。何か結構薫ちゃんの事を好きって感じっぽかった」

「え~」とミノリちゃんが言うと、

 サクラちゃんがキラキラした目で詳しく説明しはじめたので、私は恥ずかしくてたまらなくなる。ツブツブが帰って来て聞いてたりしたら嫌だから、キョロキョロするが今ツブツブはいない。



 「なんかそういう出来過ぎなセリフっぽい言葉を普通の男子が言ったらイタいけど、オオツブライ君はそんな感じしなかった」

サクラちゃんがつけ加えた。ミノリちゃんも「私もそれ見てたかったな」と言うので私は首を振る。

 そういうんじゃないんだよ。

 私だって今朝はドキドキしたけど、そして今でも思い出すと嬉しいけど、

ほぼ桜井に仕組まれてる事なんだから。



 みんなは桜井先生の事どう思ってるのかな。

 やっぱりこの2人には桜井の話をバラしたい。

 私の感じているざわざわした不安な感じを共有して欲しい。それでもバラさないのは、2人に変な風に思われたくない気持ちが強いからだけど、私がバラした事で、こんな良い子の2人に何かわけのわからない迷惑がかかったらいけないから。



 ため息が出そうになるのを我慢して、水筒のお茶を飲むのに視線をずらしたら、3つ斜め前の席に異動してタカダの前の席にこちらを向いて腰かけ、焼そばパンを食べているヤグチと目があった。

 ヤグチは焼そばパンが似合うな、と思う。

 ひどくがっつくでもなく、それでもおいしそうに食べている。



「昨日も桜井先生に呼ばれたのに、今日も高森に声かけられてたね」

ミノリちゃんが言うので私はまた視線を近くに戻した。

「なんかね」と私は説明する。「出席番号が最後の人にって感じで仕事振って来たんだよね」

「そうなの? 日直でもないのに?大変だね。一人で大変な時は私達が付いてってあげるよ」

サクラちゃんがそう言ってくれるとミノリちゃんもうなずいてくれた。

「ありがとう」私は2人に心からお礼を言った。



 ヤグチがお昼をたべ終えて席に戻って来たので、サクラちゃんが立ち上がって席を返そうとするとヤグチはそれを止めた。

「いいよ、まだ座ってて。ちょっと山根に話があるから。山根、弁当食い終わったら非常階段の下のとこまで来て」

 2時限目の休みに言ってたやつか…

 本当にヤグチが3人目なんだな。でも2人目のスズキナツミの話を私はまだ聞いてない。

 スズキナツミの姿を捜すが今教室にはいなかったので、取りあえずヤグチに「うん」と軽く返事をすると、ええ~という顔をミノリちゃんとサクラちゃんがしている。きっとヤグチの言葉に勘違いをしたのだ。

 いや、どう考えても2人が考えてるような恋バナ系じゃないから。

 私が桜井から与えられたミッションだから。



 「たぶん相談なんだよ」私は2人に説明する。

「それか愚痴。なんかそういう話聞いてって事言われてたんだ」

それでもまだ2人はええ~~という顔をしている。

「薫ちゃんて、そんなにヤグチとよく話してたっけ?」

ミノリちゃんがちょっとからかうように聞いてくる。

「全然。でも普段話さないから相談とが逆にしやすいのかも。ほら、今席が近いからそういう話しになったんだよ」

 2人に言い繕ろうのはちょっと後ろめたい。それに本当は今、ヤグチの所に行きたくないのだ。ヤグチの所にというよりこの場を離れたくない。今日はいつもよりももっといろんな事を2人と喋れた。2人が、私の事を可愛いと励ましてくれたのに。

 このまま昼休み時間いっぱい喋っていたい。それにスズキナツミにも話を聞くと約束してしまったから教室に居た方がいいような気がする。



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