やたら電話が 1
そして泣いている所にもう1件メールが来た。ハヅキモエノだった。
「大丈夫?」とだけ。
私は返信する。「大丈夫だよ」
すぐメールが来た。「ほんとに?」
「ほんとはちょっといろいろ怖い」
でも今のサクラちゃんとミノリちゃんからのメールで心はとても温かい。
「だよね~。でも大丈夫」ハヅキモエノのメールは自信有り気。
何を根拠に?
「そうかな?」と私は返信する。
「所詮夢だもん。実際にはキタはなんもしてこないって桜井言ってたし」
「それ、信じるの?」
「とりあえずはね。やっぱめんどくさい今から電話する」
すぐに着信が鳴った。
「薫ちゃん」と呼ばれる。
「はい」
「うわ、何か『はい』って言われるのいいな」
「…」意味がわからん。
「ねぇユウリにメール返した?」
「返してないよ、まだ」何でそれをハヅキモエノが気にする?
「ユウリ結構そういうの気にするんだよ。全く気にしてないよ、って感じを装おうとするんだけど、めっちゃ気にするんだよね。私はそれも嫌でカノジョを止めたんだけど」
あそう、と心の中で少し悪態を付く。
「でもそんなの気にしなくていいんだよ」
どっちだよ!と思う。
「私が男の子だったら薫ちゃんの事、私が彼女にするのにな」
「え?」
「ユウリにもヤグチ君にもあげないのに」
「…」
「あ、気持ち悪いとか思わないでよ?」
「…思わないよ?びっくりはしたけど」
ハハ、とハヅキモエノは笑う。
「私が男でなくてもやっぱり好きなんだけどね。女の子が好きってわけじゃなくて私、男の子とか女の子とかそんなの関係なく好きな子は好きなんだよね」
「…ありがとう」
「そういう事返してくれるのがすごくいい感じだなんだよ。私、女の子の友達なかなか出来ないんだよ」
「私もだよ。今はアライサクラちゃんとクリハラミノリちゃんが仲良くしてくれてるからいいけど」
「あ~あの二人は可愛いよね。本当に可愛い。攻撃的じゃないのにちゃんと意思も持ってて、しかもやわらかい感じがするってなかなかいないよね」
私は二人の事をほめられて嬉しくなった。
「薫ちゃん、私の事どう思ってる?」
言われてドキリ、とする。ヤグチにもそんな事を言われた。
私は素直に自分の気持ちを話す事にする。私の大事な友達をきちんとほめてくれたからだ。
「今日一緒にいてくれてありがとう。心強かったよ。私が変な事頼んでるのに全然気にしないで楽しんでるみたいにも見えて」
「うん」
「本当にありがとう」
「薫ちゃん、大好きだよ。私の事を考えながら寝てね。おやすみ」
それだけ言うとハヅキモエノは電話を切った。私の「おやすみ」も待たずにだ。
何か…告白されたような気分になるのはなぜだろう。
いや、これ、告白だよね?違うの?だって人間として好きだってちゃんと言われた。とても嬉しい。
私は考える。
とりあえず今のハヅキモエノとの会話は置いておいて、ツブツブとサクラちゃんとミノリちゃんに返信するメールの内容についてだ。
まずツブツブに送る事にする。
「メールありがとう。
今日は帰りにいろいろと
高森先生と桜井先生に用事を頼まれて遅くなったけど
ヤグチ君とハヅキモエノさんも手伝ってくれて
何とか下校の放送が鳴る前に学校を出る事が出来ました。
おやすみなさい。また明日」
メールをもう一度見直す。
完璧だ。これ以上は書けない。ヤグチとハヅキモエノの名前を入れたのはわざとだ。
それからすぐに、サクラちゃんとミノリちゃんあてのメールを考えるがなかなかまとまらない。どんなに私が嬉しかったか、どんなに私の心が震えたか、二人に伝えられるだろうか。
私はもうしばらく考えて、『どちらにしようかな』でまずサクラちゃんを決めて電話をする事にした。
滅多に夜、用事もないのに電話したりしないからびっくりするかな。
でも話したい。
けれどベルを鳴らしてもサクラちゃんは出なくて、ミノリちゃんに電話をするが、ミノリちゃんも出ない。
がっかりしてしまうが仕方ない。
宿題だってしてるだろうし。お風呂だって入ってるだろうし…。
今日ゴトウハルカに渡されたサクラちゃん宛てメモを思い出す。
ゴトウハルカの事は結構好きだったような気がするんだけど、それでもゴトウハルカがサクラちゃんを好きだと思うのは、ちゃんとまともな、女の子を見る目のある人だったんだなと思えるから、嬉しいけど寂しい、みたいな、サクラちゃんの事を好きになるようなちゃんとした男の子じゃ私の事なんかやっぱり好きになってもらいないだろうな、みたいな残念な考えも浮かんでくる。
と思っていたら着信だ。サクラちゃんだ!
「もしもし?薫ちゃん?」少し焦ったようなサクラちゃんの声。
「うん、こんばんは」と私が答えた後もサクラちゃんの声は焦っている。
「大丈夫?」
「うん」
「…そっか。何か変なメール送ってごめん。変だなって自分でも思ったんだけど心配だったからだから許してね」
「ありがとう。あのね、すごく嬉しかったよ。ほんとにすごく」
「薫ちゃん、私ゴトウ君とは別になんともならないよ」
「え?」
「薫ちゃん、ゴトウ君の事好きだったでしょ?」
びっくりだ。ゴトウハルカを好きな事は誰にも言っていないのに。
でも桜井は知っていたけど。
「知ってたの?」
「うん。気付いてたよ。ミノリもね」
私も気付いていた。ミノリちゃんとサクラちゃんの好きな人の事は。
ミノリちゃんは同じクラスのニシダヒロキ君。派手でもない地味でもない、でも優しい感じのサッカー部の子だ。
サクラちゃんは別のクラスのタカミナソウタ君。去年一緒のクラスだった子で、結構女子に人気のある背の高いバスケットボール部の子。
そうか、すごいな。嬉しいな。私がサクラちゃんとミノリちゃんの事に気付いていたように、二人も私の事に気付いていてくれたなんて。
「薫ちゃんも私の好きな人知ってる?」
「うん。…タカミナ君だよね?」
「そうそう。何か恥ずかしいけど。まだ好きなんだ。ゴトウ君がメモをくれたけど、それでもまだ好きなんだよタカミナ君の事」
「…そっか」
「薫ちゃんはまだゴトウ君の事が好き?」
「ん~…」わかんないな。
「でも薫ちゃんの事いちばん気にしてるのはヤグチ君だよね。今日も一緒にいたし、ヤグチ君さ、…ヤグチ君にバラしたらダメだよ?去年一緒のクラスじゃない時から、結構薫ちゃんの事気にして、私たちにいろいろ聞いてきてた。薫ちゃんには自分が聞いた事黙っててって言いながら」
「…それ、本当?」
「ほんとほんと。薫ちゃんの事すっごい好きなんだと思うな。だからオオツブライ君が薫ちゃんに話しかけ始めて焦ったんだと思うな」
「ねぇサクラちゃん。美術の時間に絵を描かされたでしょ?どんなの描いた?」
「え~~何かね、何かおかしいかもしれないけど一面オレンジ色で塗った。
あの時それがパッと浮かんだの。それでね、ちょっと気持ち悪いんだけど
なんとミノリとほぼ同じ!何かキモくない?」




