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休み時間 1

 2人目!

 スズキナツミが2人目か。

 ねえ?そうなの?2人目?と誰ともなく自問自答しながら、スズキナツミの目をちらっと覗き込んで見るが、高森の用事を聞いて来た時と様子は変わらない。

 イヤフォンで何か聞いていた前の席のヤグチヒカルが、イヤファンの右側だけ外しながら振り向き、私とスズキナツミの顔を見た。

 スズキナツミが少し困った顔をしたように思ったので、私は彼女を席に戻すために「うんわかったよ」と言った。

「昼休みにね」



「お前、オレの話も昼休みに聞く?」

右側だけイヤフォンを外したままのヤグチが言った。

「へ?」

全く予想していなかった申し出に驚くがヤグチで3人目?早くも?

 聞くよ、聞く聞く!と私は嬉しい。早く終わらせたいもん。

「うん聞く!」

即答した私にヤグチが少しびっくりしてから笑った。

 笑うと優しい顔なんだな。

 でもまず話を聞く時に「お前」って私を呼ぶのを止めさせよう。



 3時限目が終わって昼食だ。4時限目の後で昼食の学校が多い中、うちの学校は3時限目の後に昼食込みの昼休みがあって、その後掃除、4時限から6時限がある。

 3時限目の後の昼食はありがたい。中学の時の時の4時限目、おなかが空き過ぎてほとんど授業が頭に入らなかったから。


 アライサクラちゃんとクリハラミノリちゃんが、可愛らしいお弁当を持って今日も私の席にやって来てくれる。私の席が教室の端なので移動して来やすいのだ。

 みんながだいたいどこかへ移動するので、椅子は近くの開いた席を持ってきて使う。

 全開にした窓からゆるくて生温かい風が入って来た。明日は雨になるんだろうか。



 サクラちゃんが弁当箱を私の机に置いて、椅子に腰かけるなり嬉しそうに私に言った。

サクラちゃんはヤグチヒカルの椅子を使っている。

「ミノリに今朝の事話していい?」

 私は困ってしまう。きっとツブツブの事だ。今ツブツブは教室にいない。

たぶん購買にでも行ってるんだろう。


 本当は恥ずかしいから嫌だけど、嫌って言いにくい。

 ツブツブとの事は昨日の放課後の桜井との話があっての事だ。桜井のあの話がなかったら、私とツブツブは1年間、ほとんど何も喋らずに終わっていただろう。だから今朝の話をされても私はどんな顔をしていたらいいのかわからない。



 「いいけど…」と私は言い淀む。「別に何もないよ」

サクラちゃんが「え~~」と残念そうな声を出し、ミノリちゃんが、何なに?という感じで、私とサクラちゃんの顔を交互に見比べるので、私は思い直して自分で説明をすることにした。

 昨日の放課後からのツブツブ絡みの話だ。

 2人には誤解されたくない。

 もちろん、桜井に呼ばれたのはプリントのとりまとめを頼まれたのだとウソをつく。

 高森に出されたお茶で気分が悪くなったのはそのまま教えた。



「だからね、心配して今朝は声かけてくれたんだよ」

「そうなんだ~」ミノリちゃんは納得してくれる。

「大丈夫だった?帰ってから」

大丈夫じゃないし、今もいろいろ考えるとあんまり大丈夫じゃないけど、もちろん私は「大丈夫!」とニッコリ答えた。



 2人に昨日の桜井の話をしたらどんな反応をするだろう。

 他の女子なら単に私を、頭がおかしくなったと思ってただ気味悪がるだけだと思うけれど、2人はきっと心配してくれるだろう。

 …でもそれは他の人と同じように、私の頭がおかしくなったと思ってのことからかもしれない。

 それとも…やっぱり気持ち悪いと思われて一緒にご飯を食べてくれなくなるだろうか。

 そんな事ないよね?



 それでも昨日の桜井との事は私だけの秘密だ。誰にも気味悪がられたくないし、頭おかしくなった前提の心配もして欲しくない。

 サクラちゃんとミノリちゃんにはなおさらだ。


 私の頭はおかしくないはずだ。

 たぶん…おかしくないはずだと思うけど…

 今日だって桜井が言った通り、普段話をしないスズキナツミが私に聞いて欲しい事があると言ってきた。お弁当を食べ終わったら、スズキナツミの所に行かなければ。



「高森先生ってやっぱちょっと変わってるよね」サクラちゃんが言った。「相当変な味だった?そのお茶」

「相当変な味だった!」

私は高森のお茶の味を思い出しながら答える。

「なんかさ、」ミノリちゃんが言った。「理科室で作ってんじゃないかな。

アルコールランプとビーカーで。校庭の草とか煮てさ」

 本当にそうかもしれない。

 私は今朝の、高森が手に持っていた黄色い半透明のビーカーを思い出す。

黄色い半透明のビニルボールのはずだった高森の手の中の…


 「けどさ、高森、一部の女子に人気あるよね」

サクラちゃんがちょっと目を細めて小さい声で言った。「全然気持ちわかんないけど」

うんうん、と私とミノリちゃんも相槌を打ってハモった。

「「全然気持ち分かんないよね」」



 「でも薫ちゃん、良かったじゃん」とサクラちゃんが言った。

「たまたま通ったのがオオツブライ君で。男子ってめんどくさいと平気で

『オレ無理です』とか言うじゃん」

「あーそうだよね」私もそう思う。

「可愛い女子とかだったら用事あっても送るんだろうけど」

私が言うと、

「私、薫ちゃんは可愛いと思うよ」

とミノリちゃんが言ってくれるので紅くなってしまう。

「そんな事全然ないよ」

本心はとても嬉しいのだけれどそこはもちろん否定した。

 実際自分に対するひいき目を全くなくし、全くの客観的な目で自己採点すると、私は68点から74点くらいの間だと思う。

 ダメダメな時が68点で、感じ良い時が74点。




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