圏外じゃない?謎の紋章と地図
お腹がいっぱいになったら眠気がやってきた。
ジーク達は良くしてくれるし、少し安心したのだと思う。
ジークとマリアは交代で見張りをするらしい。
私も…と言ったけれど、慣れてないだろうからいいとやんわり断ってくれた。
せめて何かしてあげたいと思って、コーヒーを淹れることにする。
スティックタイプで、お湯を注げばいいものだ。
シングルバーナーとケトルでお湯を沸かす。
「シュゴォォーって音がした?!」
「誰が触れても同じように炎が出るのか…未知の道具だな」
アンの驚いた声にジークが唸る声。すぐに沸騰したのにも驚かれる。
「お湯を注いだだけで、飲み物ができたよ?!」
「一瞬で混ざったぞ…!魔法薬か…?」
「まあ…!砂糖は高級品で、ミルクは生ものなので旅先には無理なのです。それが一本の棒からでてくるのは…至高の贅沢ですよ」
三人がそれぞれ言った。
ジークとマリアはカップを両手で持ち、大事に飲んでいるようだ。湯気も一緒に楽しんでいる。
特にマリアはまろやかな甘さにまた遠い目をしているようだった。
アンにはココアを作った。
「すっごい甘い!疲れも吹っ飛ぶよ!」
はしゃぎすぎて、もう少しでこぼしそうになっていた。
この世界のこと、地理や文化や魔法、どうやって生きていくか、考えることはいっぱいだ。
でもそれは明日にして今日はゆっくり休むことにした。
私は車の中でシートを倒して寝ることにする。
アンとマリアは封筒型のシュラフがとても気持ちよさそうだと気に入ったみたいで、それを貸してあげることにした。
寝袋というものは無いらしい。外套にくるまって、焚き火のそばで丸まって寝るとのこと。
アンが言う。
「背中が痛いのは我慢なんだよ」
「シュラフでゆっくり寝てね…」
せっかくだし、休むならとテントも立てることにする。
簡単組み立てのワンタッチテントだ。
一瞬でテントが組み立った姿に、
アンは「家を出す召喚魔法?!」と叫んだ。
「こんなに小さく畳めるとは…」ジークが周りを見ている。
テントというものも無いらしかった。
こちらでは天幕と呼ばれ、非常にかさばって重いらしい。
馬車を持っている商団、貴族や軍の人達が使うようだ。
少し肌寒いけど、その程度の気候で良かった。星がとてもキラキラして綺麗だ。
いつもの癖で寝る前によく聴く歌をかけた。
女性だけのダンスユニットだ。彼女達のダンスする姿が自然と目に浮かぶ。
(こんなところで音楽が聴けるなんてびっくりされるだろうな。それとも魔法でどうにかなるのかな?音楽文化、あるといいなあ…)
そんなことを考えてるうちにそのまま眠りについた。
(ここは…)
ぼんやりとしながら枕元に置いていたスマホを見る。
朝の6時と出ていた。
(そうだ、私、異世界に…)
いつもの癖で操作してみた。
メッセージアプリと電話はやはり使えない。
それはそうか、と思いながら何気なく右上の方を見る。
━━━圏外になっていなかった。
電波のマークが変化していた。翼を広げたような見覚えのない紋章に。
(どういうこと…誰が私のスマホを書き換えたの…?私のスマホまで異世界仕様になるなんて…)
心臓が少し早くなる。
もしかして、電波ではなくてこの世界の魔力を拾っているのだろうか?
試しに地図アプリを開いてみた。
そこには細い山道が表示されている。
《迷いの森、コブ山》
川や池がぽつりぽつりとあるだけだったけれど、周りを見るとかなり離れたところに祠の印があった。
そしてスライドしてさらに離れた場所を見たら、
《オオサキア王国》
(これってここの地図…?!)
ドキドキしてきた。
バッテリーが心配になり、非常用の手回し充電器をグルグルと回す。
「あ、いけるみたい…」
少しホッとした。胸の奥の緊張がわずかに緩む。
後でみんなに言ってみよう。これは絶対に役立つはず。
第8話も同時に更新しています。よろしければ合わせてお楽しみ下さい。




