魔法の炎で温めるチキン
「美味しいお肉の匂いがする!」と車を調べてたアンが言った。
フライドチキンを買っておいたことを思い出した。
とりあえず食べよう。
レジャーシートを敷いて防災用のランタンを出してきた。
こんな不思議で丈夫な布は見たことないと三人は順番に触ってみている。
フライドチキンは、アンの炎の魔法で温めて、皆で食べることにした。
…いきなり呪文らしきものを唱えたと思ったら、小さな炎が出現してびっくりした。
アンの生み出した炎は揺れが少なかった。
暗闇の中、オレンジから赤へと揺らぐ炎。パチパチと爆ぜる薪から飛び散る小さな火の粉が、星空へと溶けていく。
「でも、魔力はもう少ししか残ってないから節約中!」
「へぇ〜そうなんだ」
よく眠ると回復するらしい。
(…私もそうなのかな…)
大人数で食べることを考えてたから量は充分にある。
これにバーベキューの予定だったけど、流石に食べきれないからそれはやめた。
ポテトのボックスとメープルシロップつきのビスケットもある。
それから、買って冷やしておいたコーラも出してきた。
これが合うんだと私は言った。
「なにこれ!美味しすぎるぅ〜」
フライドチキンを食べたアンが泣いている。
「……なんだこの複雑な香りは!一口噛むごとに違うスパイスが弾けるぞ!」とジークも驚いていた。
「…甘い…しょっぱい…甘い…ミュウ、これ無限に食べられるよ…」
ビスケットにメープルシロップをかけたアンが呟いている。
マリアは特にメープルシロップをとても気に入ったみたいだった。
貴重なハチミツともまた違い、滑らかでここまで甘いものは貴族でも中々食べられないらしい。
そんなに喜んでもらえて、買った甲斐があるというものだ。
「食べたらこんなに貴重なものが無くなりますね」と、マリアは当然のことにしょんぼりしていた。
コーラにも驚いたみたいだった。
「おい、この黒い液体、飲めるのか…?」
「ただの炭酸飲料だよ」
「炭酸とは…?随分と濃い色をしていますね…これは本当に飲み物なのですか…?」
それでもジークとマリアはペットボトルの美しさを褒めたたえ、開けるのに苦戦していたからまた開けてあげた。
「面白そうだし、私からいくね!」
アンが、がぶっと飲んで目を白黒させている。
「舌が痛いのにすごく甘いよ?!」
アンを見てジークとマリアも恐る恐る口をつける。
「未知の刺激だな…!水の中にパチパチ跳ねる精霊がいるのか…?飲むとシャキっとするな」
「おいしいですが不思議な味がしますね。どうやって作るのでしょう?この配合は…?」
でも脂っこいものによく合うコーラは3人とも気に入ったようだった。
「ねえねえ、この世界に揚げ物ってあるの?炭酸飲料はないみたいだけど…」
「少量の油で揚げ焼きってところだな。魚の塩揚げぐらいだ」
「ガリガリだよ!こんなにサクサクしてないよ!」
私の問いに、ジークとアンが答えた。
食べて、私はちょっとだけ元気になってきたみたいだ。食べることって大事。
これからのことを考える。この世界で生きながら、帰る方法を探す。
……お姉ちゃんにこの車を返さなきゃいけないし、バイトも大学も行きたい。
帰れる保証なんてどこにもない。
でも、帰りたい。
読んで下さりありがとうございます!
次回は3/8(日)の19時に更新予定です。
ミュウたちの旅の続き、ぜひまた遊びに来てください。




