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異世界の口コミサイトは信用できる? 魔法のレストランで知った贅沢の正体

 次は東エリアでの食事会だ。


 沢山の飲食店が立ち並ぶ場所に足を踏み入れた瞬間、

「わぁ〜……」

 スパイスの刺激的な香りや、ほっとするような香りが押し寄せてきた。

 沢山の人が行き交っていて、夕方近くでこれだから夜にはもっと混むだろう。



 何かお店の情報はないかとスマホを広げてみると、まさかの”グルメ口コミサイト“のようなものが表示された。


(……誰が書いてるの、これ……?)


 魔法ミスでスープが凍る、なんてコメントや、接客は最高、ただしデザートが一度空を飛んで行ったので星3という意味不明な口コミまである。

 向こうの世界では絶対に見ないレビューだ。


(まさか……コヨリ様が星をつけてたりして)


「ここは良いぞ」とか言ったりして。

 想像してしまい、思わず笑いそうになる。

 でも、異世界の情報ってどこまで信用していいんだろう。

 これは慎重に見ておかないとね。

 


「あっあそこじゃないかな?」

 スマホのナビが示したのは、グルメ街の喧騒から少し離れた路地の奥。


 そこには周囲の活気とは一線を画す大きな瓦屋根がついた門があり、店の人が立っている。


 木々に囲まれて奥は見えないけれど坂になっているようだ。

「昔の魔術画家の私邸を改装したみたいだね……」

 私が調べた情報を言うと、

「窓から見える景色が魔導具になっているから、時間帯によって違ったりします」

「俺も行ったことがある。デザートがふわふわ浮いたりと、面白かった記憶があるな」

 マリアとジークが続けた。

「それって楽しそう!」

 異世界ならではで、心が躍る。


 口コミ評価は3.8と高すぎず低すぎず、これくらいがちょうどいいと思う。


「わーい!友達に自慢出来る!」

と、アンははしゃいでいる。

 ジークとマリアも賛成してくれたので、この店に決めた。



 私達が近づくと、門の紋章がパッと強く光った。

「あれは、その光で予約の有無、人数、魔力の強さを把握できるのですよ 。

ミュウの高い魔力に反応したから、光も強かったのでしょう」

 マリアが教えてくれる。

 ……そんなことが出来るなんて、ちょっと不安かも……



「……ようこそ。当店は初めてのご利用でしょうか?」



 お店の人の案内に続き、坂を登っていく。店側と魔導具でやりとりをしたようだった。

 石畳の道の両側には、通るとふんわりとした光が灯る魔導具の明かり。

 炎が揺れず、色がゆっくり変わっていく。



 途中の美しく手入れされた庭園では、ひとりでにホウキが掃除をしている。

 私が驚いてじっと見つめていると、優雅な礼をされた。


「えっ……ホウキがお辞儀した……?」


「魔力感知式の自動清掃だよ」

 アンが説明してくれる。


「ミュウの魔力に反応したんだよ。珍しいね」


 ……私の魔力って、そんなに目立つのかな。

 変に注目されたりしないといいけど……



 広い敷地内には、大小様々な建物があるようで、大規模化なパーティー、結婚式など用途に合わせて使えるらしい。

 活気あふれるナニヴァルで、突如として現れる隠れ家的名店のようだ。

 


 私たちが食事をする建物に着いた。石造でこじんまりとしてるように見えるけど、情報ではかなり広いようだ。


 入ってすぐのところは吹き抜けで、待合スペースとなっており、気持ちが良さそうなソファーが置いてある。


「ふかふかー!これ、魔力回復効果があるよ!」

 アンが早速座ってみている。

「わぁ、本当だ……」

 疲れを吸い取ってくれるようだ。

「魔術と商売の街は、こういう魔法家具も多いのですよ」

 マリアが教えてくれた。



 絵画がいくつも飾ってある長い廊下を通り抜けていく。

 果物や花の絵に近づくと、その香りが漂ってきた。

「近づいた人の魔力に反応するんだ」

 ジークが教えてくれた。


 音の絵もあり、私が近づくと音楽が流れ始めた。

 時間帯によって色が変わるというのもあるらしい。

 マリアもジークも詳しいなあ。こんなに珍しいもの、写真に撮って友達に送りたい。



「トイレを見てきたよ!重厚、って感じ。

魔力で自動洗浄されるタイプ。あと、鏡が魔法で曇らないよ」

 いつの間にかアンはトイレチェックしてきたらしい。

「それはいいね!」

 流石高級店。私も後で行ってみよう。


「ミュウの世界にも、そういうのがあるの?」

 アンが聞いてくる。

「うん。トイレは水で流れるし、温かくなったり音楽が流れたりもするよ」

「ええ……水を流す……!?それってすごい贅沢!」

 トイレの事情も違うんだな。普通のところはどんな感じだろう?


 

「こちらになります」

 案内された場所もパーティーができそうな広さだった。

 高い天井に使い込まれた木の梁の温もりが心地よい。



 窓側の席が空いていたようで、アンとマリアを窓際にして座った。

「やったー!ありがとう!」

「なんだかすみません。ありがとうございます」

 

 その窓はどうやら魔導具らしく、穏やかで美しい海を見せてくれている。


 どれにしようかとメニューを見ていると、店長おすすめという文字が浮かび上がり、キラキラ光った。

「……それなら、これにしようかな」



 メニューを選んだら、すぐに飲み物が運ばれてきた。

 冷たい飲み物を注ぐと、グラスに彫られた紋章が反応して、キンキンに冷えるというものらしい。


 みんなで乾杯をする。


「ミュウへの激励と、マリアにゆっくり休んでねの意味を込めて乾杯!」

 アンが音頭を取る。


「え、そういう感じだったの?」

 マリアへのプチ送別会のつもりでいたからちょっと驚いた。



 運ばれてきたのは、地元の食材を魔法で調理された目にも鮮やかな料理。

 前菜は野菜と生ハムが使われてて、柑橘系の香りがする。

「魔力の波長で香りが変わるんだよ。面白いでしょ?」

 アンが得意げに教えてくれた。

「えっ、そんなことあるの!?」

 アンのは爽やか、ジークとマリアは落ち着いた香りのようだ。私のはほんのり甘い香りが立ち上っていた。


(……甘いって、どういう意味なんだろう。

 私の魔力って、やっぱりちょっと変わってるのかな?)



 みんなの食べ方は相変わらず綺麗で、無駄がない。

 マリアはもちろんだけど、アンもジークも上流階級の所作が出ている気がする。


(……ジーク、ナイフの持ち方まで綺麗。 どこか、育ちの良さが出ているような……)

 

 そんなことを考えていたら、ジークと目が合った。

 彼は何でもないように微笑む。


 胸が少しだけ、きゅっとした。



 平たい楕円形の濃厚なパスタとメインは魔力で温度が保たれていて、 最後まで熱々だった。

 麺は光を反射して少しキラキラして見える。


「私がいた世界にもこういう料理はあるよ。でも、こんな魔法の演出はないなぁ」

「ミュウの世界って不思議だよね!魔法がないのに便利だし」

「……ミュウの話は興味深いな」

「いつか行ってみたいですね」

 三人が自然に話を広げてくれるのが嬉しい。



 デザートには月光と名前がついたプリンが出てきた。

 月の光を閉じ込めたように淡く光っている。スプーンを入れると色が変わる。 私のは“薄紫”に変わった。


「色が変わるのは魔力の影響だよ!」

「えっ、私のせい!?」

「……ミュウの色だな」


 ジークがぽつりと言ったその声が、妙に優しくて。胸の奥が、また少しだけ熱くなる。

 ジークは何か言いたげに私を見て、それから静かに視線をプリンへ落とした。


「これとろけるね!おいしい!」

 プリンはとろけるように滑らかで、甘さも上品。

 色が変わったことすら忘れそうになるほど美味しかった。

 こういう不思議なことに、いつか慣れる日が来るのだろうか。



 最後に香り高い紅茶が出てきた。湯気の向こうで、魔導具の窓に映る海の景色が揺れている。


 その海に、新しい装備を身につけた私の姿が重なって見えた。


(……私、本当にこの世界でやっていけるのかな。でも、みんながいるから……大丈夫、だよね)


 紅茶を一口飲むと、胸のざわつきが少しだけ落ち着いた。

 


読んで下さり、ありがとうございます。

伝説(?)路上ライブで稼いだ軍資金で、いざ高級レストランへ!

異世界のグルメ口コミサイト、ちょっと見てみたいです。コヨリ様が「スープが凍ってた(星1)」なんてレビューを書いていたら……と思うと、神様も意外と身近に感じてしまいます。

それにしても魔力で色が変わるデザート、実際にあれば食べてみたいものです。

さて、美味しい食事を楽しんだ後は、いよいよマリアとのしばしの別れ。

そして美優には、ある「修行」の時間が待っています。


第24話も同時に更新しています。

ナニヴァルの街での新生活、本格始動です。

ぜひ、続けてお楽しみいただければ嬉しいです。

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