勇者乱立!?南南西の勇者と魔法の流行
後片付けをしながら、ゆっくりと話す。
「この世界は一人の女神様がお創りになったと言われています」お皿を拭きながらマリアが言った。
「エルフやドワーフなども?」と聞くと頷かれる。
「ええ、魔族も一緒に。でも争いが絶えなくて」
魔族は定期的に勇者が現れて倒すのだと言う。
「今は南南西の勇者が一番有力なんだよ!」アンが元気よく言った。
「南南西って…?」そこで手を止めた。
「そこまで方角を刻む必要がある?」
「面白いよね!」
アンが笑う。
「勇者が増えてきたから東西南北だけじゃとても足りないんだよ」
「私も会えるかも?」
魔法のことも聞く。
「それじゃあ、魔法を使える人は結構いるんだね」
アンは言う。
「うん、魔力があれば誰でも使えるよ」
魔法にも流行りがあると言う。
マリアが教えてくれた。
「今の流行りは生活に根ざした魔法をいかに便利に使えるか、ということなんです」
「へぇ〜」
他にもこんなことを言っていた。
「黒目黒髪は異世界人の特徴なのです」
日本人が沢山いるのだろうか。
ジークが続ける。
「便利な道具や知識を持っていると有名だ。ミュウみたいな」
「今はそれを逆手に取り、黒髪に染めて詐欺を働く者もいるようです」
「えっ、そんなのもいるんだ…」
アンが言う。
「ミュウの髪は紫がかってるから大丈夫だよ」
「最初に聞いたけど、『紫の目』ってそんなに魔力が高いんだね」
と言うと、深く頷かれる。
「そちらにいないのが不思議だな」
「都会では結構見かけるよね」
「でも、ミュウのような深い紫はすごく珍しいです」
それからマリアが少し真剣な目でこちらを見た。
(魔力が高いなら、魔法で日本に帰れたりしないかな?)
一瞬だけ希望の光が見えた気がした。
でも…魔法なんて使ったことないしな。私に使えればな…
「こちらは科学というものが発展してるんだよ」
「便利なのはいいですね」
「魔法が使えない世界ってあるんだね」マリアとアンが言った。
「魔法じゃなくても火や水はそういう『仕組み』で動かすことが出来るんだよ」といってもキョトンとされた。
「この小さな道具、ライターっていうんだけど、これがあれば一瞬で火がつくの。魔法を使わなくても」
実際にカチッとやって見せる。
「すごい! 魔道具みたい!」とアンに感心される。
「でもこれ、魔法じゃないんだよ。仕組みなの」と言っても、マリアは、
「仕組み……? つまり呪文がいらない魔法かしら?」と言う。
どうしたらうまく伝わるかなぁ。
ジークとアンが言う。
「戦争があるのは同じだな」
「魔族がいないのはいいなあ。人間以外がいないのは困るけどね」
「魔物と魔族って違うの?」と私が聞くと、答えてくれた。
「魔物は自然発生するものだな。植物や動物が魔力で変異したものもいる」
「魔族は魔力が高い人型の種族だね。角とか耳とかが変わってるよ。魔物と違って会話も出来るし、人間と仲良くなれるのもいるみたいだけど…私は嫌だな…怖いもん」
「どこで会ったりする?」
「滅多に会わないけど、魔族の集落はあるみたい」
「ふーん…そうなんだ」
人間に近い異種族って感じなのかな。
読んでくださりありがとうございます。10話までたどり着くことができました。見守ってくださる皆様のおかげです。
今回は異世界の『常識』についてのお話でした。
ライターの火を『魔法』だと思ってしまうマリアたちの反応、書きながら『文化の違いっておもしろいな』と感じていました。
そして紫の瞳。これから物語にどう関わってくるのか、楽しみにしていてくださいね。
次回は来週、3/22(日)の19時頃に更新予定です。よろしくお願いします。




