ナビの示す先は迷いの森
「ちょ、ちょっと待って待って━━?!」
飛び出してきた車のヘッドライトが視界を真っ白に染めた。
……衝撃。エアバッグの匂い。それから、耳が痛くなるような静寂がやってきた。
私は目を覚ました。
そこには━━
《オオサキア王国》
《迷いの森コブ山》
ナビに出された名前を見て、3秒間瞬きを忘れた。
…いやいや、そんな地名ないでしょ。今日行くキャンプ場ってそんなファンタジー寄りだっけ?事故のショックでおかしくなったのかな?
生き物のように動くグニャリとした文字でそれは表示され続けている。
「ま、まさか心霊現象…?神隠し…?!待って待って…!」
聞いたこともない場所に連れていかれて、踊る化け物を見せられたりして…
「ギャアアア!!!」妄想して、思わず悲鳴を上げた。
怪談は好きだけど、私はものすごい怖がりだ。しばらく様子をみる。
今のところ、ナビ以外に変なことはない。フロントガラスを叩く音も変な手形もない。
どれくらい時間が経っただろう。こういう時、無闇に降りたら駄目だと聞く。
(でも…)
このまま車にいても助けは来ないかもしれない。
「…とにかく降りて少し歩いてみよう」
姉が防災用に積んでいたキャップライトを頭に装着する。
貴重品と食料が入った小さなリュックを背負った。
そして、心霊現象には除菌スプレーが効く、ということをネットで読んだのでそれを右手に持つ。
除菌99.9パーセントということは、霊にも99.9パーセント効くということだ。
根拠は知らない。でも今はネットを信じるしかない。
思い切ってドアを開けてみた。
……森の匂いが何だか違う気がする。今まで嗅いだことのないような、甘くて重い空気が流れ込んでき
た。
空の色も微妙に違う。
「深呼吸しとこ。すぅ〜はぁ~〜…うん、これで大丈夫」
前に見えている細い獣道を、そのまままっすぐに進むことにする。
その時、私は消えかかったナビが小さく音を立てたのに気付かなかった。
初めての投稿でとてもドキドキしていますが、大好きな「異世界」と「美味しいもの」を詰め込んだお話を書きました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。




