カラスによると①
少し前にアルフレドと仲良くなった。
アルフレドからしてみればずっと前から友達だったのだろう、しかし、トナリからしてみれば初めての友達である。最初は一緒に居ると楽しかった。そう、楽しかったのだが、流石に毎日はキツかった。それにトナリは元々たくさん喋るタイプでは無かったのだろう。よって真っ先に話すネタが尽きた。沈黙されるととても気まずい。もちろんアルフレドと一緒に居る時間も好きなのだが、1人の時間も大好きだ。
少し前に「心配してくれてるのは分かるんだけど毎日ここに来るの大変でしょ?そんなに来なくても大丈夫だよ」と遠回しに毎日来ないでと、言ってみた。帰ってきた返事は「俺が来たいから来てるんだから大変なことは何も無いよ」である。この爽やか筋肉には残念な事に伝わらなかったようだ。
今日は申し訳ないがアルフレドが来る前に、逃げた。別に逃げるとは言っても、夕方には帰ってくる予定。ちょっとお買い物ついでについでにこの間見つけたカラスのスケッチの裏にモデルになっている場所が記されていたので行ってみることにしただけだ。それにちゃんと〝夕方までには帰ります〟と書き置きして来たし大丈夫だろう。
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「すんごい眩しい」
トナリは朝日を全身に浴びながらベリューの森を目指して進んでいた。
トナリ達の住んでいるのはパレスカペと言う町だ。都会と田舎の良いとこ取りをしたような比較的穏やかな場所だ。そこから馬車に乗って30分行った所にあるのがべリューの森だ。言わずもがな、スケッチ裏に書いてあった言葉は《べリューの森より》、題名と同時に場所を記すの兼ねているのだろうか。しかし200年も前の事だ。見つけるのは困難かもしれない。例えその場所はあったとしても、森だって生物だ。その当時の姿のままとはいかないだろう。とはいえ元々しばらく1人になりたいがために行くのだ。特別その場所を見つけたい訳では無いし、むしろ見つけられたらラッキーぐらいにしかトナリは思っていない。
べリューの森に着いた。道中馬車の屋根の役割をしている布が風で飛ばされるハプニングはあったものの、それ以外は何も問題は無かったから良かった。
気を取り直して森に足を踏み入れると、とても日当たりが良く気持ちのいい場所だった。だが、何だかおかしい、そのおかしさの正体はほかの森より花の種類が多いことだった。種類が多いことに問題は無いのだが、季節違いの花が咲いていることに問題がある。今は春、なのに夏の朝顔だったり秋のパンジーだったりの花が咲いている。ホント意味分からん。と、悩んでいるその時だった。
「こげなとこでなんしょっと」
「うわっひゃぅ!!!」
思周りを見渡すも人影は無い、さっき森に入った時も誰もいなかったはずだ。姿もないのに喋り掛けられた。姿が見えない=幽霊?となってしまいプチパニック中のトナリ、そんな姿を見てか相手の幽霊?は何だか楽しそうだ。
「ぐっはっはっ!!!そげびっくぁせんでも良かとによ」
「だっ、誰ですか!普通に出てきてくださいよ!」
「悪い悪い、えらい久しぶりだったもんでよ、そげん怒るなよ」
そう言って現れたのは1羽のカラスだった。喋るカラスなんて初めて会った。そりゃあ姿も見えない訳だと納得した。それにしても方言と訛りが強い、言わんとすることは何となく分かるが今度は返答に困る。
「そんでお前さん、こげなとこで迷子か」
「カラスが、喋った……?」
「なんだ、喋るカラスは初めてか?」
「はい……」
「ぐっはっはっはっ!だろうな!俺も会ったごいねぇしよ!」
「……へー」
このカラス、ちょっとイラッとする。驚かせに来たと思えば、今度はからかって来るし、丁寧に接するのが馬鹿らしく思えてきた。それにしても何だかこのカラス、やけに人間じみてる気がする。身振り手振りで特に喋り方あたりがまるで大口で話す気のいいおじちゃんみたいだ。おかげで恐怖は無くなったがよく分からないことが多すぎる!幸い時間はたっぷりある、買い物は諦めてもいい。そのぐらい聞きたいことはたくさん出来た。
「……それじゃあ、何でしゃb」
「喋んごいなるかって?それには深〜い訳があってなぁ〜」
「……へー」
「話し、ちょいと長ぁーなるけど聞くか?」
「そこは気になるので勿論聞きますよ」
「ぐっはっはっ!久しぶりの会話だかいよ、楽しぃなるな!」
「そうなんですねー、早く話してください」
所々棒読みになってしまうのはカラスが悪いと思う。あ、もう孫の話とか興味無いのでとにかく早く話してください。
社会人18日目、忙しいです。
読んでくれてありがとうございます( . .)"