存在しなくてもいい自分(短編小説)
ストーブの音とスマホをタップする音だけが聞こえる部屋。SNSを無言で見つめ他人の行動を監視する自分。スマホの光が目に辛くて何回も治そうと瞬きをする。そんなことしてるうちにスマホにも飽きて寝ようとするけど寝れなくてただベッドの中で自分を問いただす。「私って何ができるんだろ、、趣味とか特技ないよなぁ」ひとりぼっちの部屋でそう呟く。中学3年生受験勉強をしないといけない頃から夜になると自分の存在意義を考えるようになってしまった。勉強のせいでストレスが原因で友達と喧嘩し人間関係が崩壊したまま卒業を迎えた。そんなこともあり、高校でも疲れると度々休むようになった。高校は色んな人がいて自分がちっぽけに見えてしまう。顔も特別可愛いわけではないし、運動、勉強がめちゃくちゃできるわけではない。だからなのか知らないが自分を悲観するようになった。学校が始まって最初の自己紹介なんて地獄だ。趣味も特技もない私にとって何を話せばいいかわからない。テキトーに「映画鑑賞とかお菓子作りが趣味です!」とか言うけど正直そんなことはない。映画なんかサブスクで月に1.2本見る程度。お菓子作りもパンケーキとか簡単なものしか作らない。友達がSNSにギター、編み物、キャンプ、ネイルなんて載っけていたら発狂もん。趣味がある友達が羨ましい、ただそれだけ。自分が友達と同じ趣味を持ったら比較されてしまう気がして手を出せない。決して被りたくない訳じゃない。「なにか、なにか、」と趣味を探すうちに自信をなくして結局何もせずに一年を終える。「今年こそはなにか趣味を見つけて他人に興味を持ってもらいたい」こんな承認欲求のせいで自分を苦しめていく。それが何より辛い。小さなことで病んでしまって、何をするにも周りの目が気になってしまう身体になってしまった。だんだん悪化して、自分を病人にしたくてたまらなくなる。インターネットで色んな精神疾患を調べては無理矢理にでも自分を当てはめて、ADHDの自分、適応障害の自分として日々息をする。自殺をしたら他人がどう思うかを考えて喜ぶキモチワルイ自分がいる。
そんな時
「自分は存在しなくてもいいんじゃないか」
と、呟いて宙を舞っていく。