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第5章 19

 地面に置いたランプがもたらすわずかな光だけでも、彼女の顔は細部までよく分かる。長く整った睫毛には、二、三粒の真珠のような涙がのっていた。滑らかな頬は紅をさしたように赤い。小ぶりな鼻には毛穴一つない。戦いの中にいても、鮮やかな唇は常に潤っていた。

 華がさらに身を乗り出す。身を引こうとした訓の肩を掴んで固定し、華は囁いた。

「ご……ごめんなさい」

 その声はいつもより少しうわずっていた。何を謝っているのか。そう考えるより前に、華が訓に口づけした。

 驚きのあまり仰け反りそうになる自分の体を、訓は必死に抑えつけた。唇を離した華は、震えていた。

 ようやく訓も理解した。華が何を求めているのか。今度は訓が華の背中に手を回して抱き寄せた。華は全く抗わない。もう一度口づけを交わし、互いの目を覗き合う。

 華は口を押さえ、目をつぶった。どんどん彼女の顔が真っ赤になっていくのを、呆然と眺めた。きっと自分も同じような顔色をしているのだろう。

 彼女の手の中から、鈴を恐る恐る振ったような声がこぼれ落ちた。

「わ……わたしの愛を、受け取って……」

 訓には、こんな時に相応しい返しがすぐに思いつかない。ただ、また華の体を引き寄せた。訓の腕の中で華はするすると上着を脱ぎ始めた。訓もそれに習う。ただの布と化した衣をはらりと互いにかけて、二人は抱き合った。その暖かさが心地よく、訓は目を閉じた。    



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