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第5章 14

 宮廷軍を追い返した後、すぐに軍議が開かれた。今回の戦いは犠牲も大きい。黎文悦時代からの名臣が何人も戦死した。指揮官の配置の変更と、宝玉の扱い方に議論を重ねる。大龍側がどんな手を使ってでも玉を取り返そうとしてくるのは目に見えていた。停戦は戦の中断ではない。公にならない戦いは延々と続くのである。


 文懐の話を輪の隅で聞いていた訓だったが、背中をつつく者がいる。

「……マリア?」

 背の低い聡明な少女が、何故か険しい顔で後ろに立っていた。

「どうした?」

 マリアは大きく息を吸い込んだ。

「先生、一緒に来て下さい」

「今軍議中……いや、」

 マリアの顔を見て訓は慌てて方向転換する。

「分かった。行くよ」

 隣にいた双に中座を耳打ちし、訓はマリアの後をついて行く。


 暑い森の中は、既に肉が腐る異様な臭いが至る所で漂っていた。味方の遺体も敵方の遺体も、こちら側で埋葬してやらねばならない。生き残ってまだ体力に余裕のある兵士たちは、どこかしこに穴を掘って仲間や敵を埋めていた。司祭やカテキスタも、息を引き取る者に祈りを捧げるのでてんてこ舞いだった。その様子を横目で見ながら、素通りすることに強烈な後ろめたさを感じた。文懐も周囲の部下も、今や訓のことを聖職者としては見ていないようだった。


 マリアはずかずかと穴をよけて歩きながら、一度も訓を振り返らなかった。何度か鼻を啜る音がした。


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