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第5章 13(宮廷軍)

「これって、私たちの失態ということになるのかしら」

 碧翅は紅翅に呟いた。

「どうして? 失敗したのはむしろ大龍の方でしょう。敵の司祭に欺かれて心臓の在処を教えるなんて、大間抜けもいいところね」

 天幕に入ってきた太利が静かに応じた。

「__私も、そう思います」

 紅翅はぎょっとして立ち上がった。碧翅は平静を装っているが、手がわずかに震えている。

「……それは、明命帝陛下のお考えと捉えてよいのかしら」

 太利はうなずきも否定もしなかった。

「私は陛下の名代として将軍閣下の側に参りました」

「あの森での戦いの最中、一体どこにいたのかしら?」

「さあ、それは秘密です」

 碧翅は溜息をついた。

「……何の御用でしょうか。世間話をしにきたのではありませんね」

 太利は恭しく頭を下げた。

「王紅翅将軍をお呼びしに参りました。将軍、私と共に旅するご支度はよろしいでしょうか」

 思わず紅翅は、げっと喉の奥で声をたてた。碧翅はそんな妹を目でたしなめながら、太利に問いかける。

「どこに旅をするというの」

「カンボジアです」

「カンボジア?」

 紅翅と碧翅は声を揃えた。

「他でもない紅翅将軍を見込んで、この戦において果たして頂きたい役割がございます。決して悪い話ではないと個人的に保証させて下さい」

 碧翅はごくりと息を呑んだ。

「__まさか」

「時が来れば、碧翅将軍閣下にも全てが分かるでしょう。出発は今夕です。しばしのお別れまで、良い一時をお過ごし下さい」

 太利が去ると、紅翅は姉を見た。

「この間彼が言っていたのは、このこと?」

「そうでしょうね」

 軍議の後で、太利は二人にこう告げたのだ。

 __王姉妹将軍には、しばらく別れて戦っていただくことになろうかと思います。

「姉様、彼はカンボジアで何をするつもりなの?」

 碧翅は答えなかった。軽々しく口にするなという彼の言葉にならない警告をちゃんと受け取っていたからだ。


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