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15(阮英路の選択)


 翌日、嘉定の情勢に関する書簡がクレティアンテに届いた。

 二代目嘉定総鎮、黎文懷はどうやら本気で反乱を起こすつもりだ。宮廷から送られた手紙を破り捨てたらしい。馬鹿なことを、と冷笑していられる余裕はとてもなかった。読み進めていくごとに、更に事態が悪化していくからである。

 宮廷が派遣した軍が、文懷の許可を得ることもなく彼の領地の一部を占領し、税を取り立て始めた。逆らった領民は見せしめのために酷く殺された。

 憤った民の多くが、反乱軍に兵士として加わった。黎大公の善政はかねてより評判であったし、義理の息子である文懷は父親と非常に仲が良く、その政治的手腕を受け継ごうとしていた。皇帝の新しい支配を歓迎する理由は民の間にはなかったのだ。

 極めつけは、一風変わった一覧表だった。

 大南人名がずらずらと綴られている。コーチシナ代牧区内のキリスト教徒のようだ。知っている名前がちらほらあった。

 その中の一人に目が吸い寄せられた。懐かしさに息が詰まりそうだった。もう何年も会っていない。 

 阮英路。訓の元生徒だ。ピエトロたちより五つ上で、学校を出てからは嘉定で働き始めたはずだ。

 書簡によると、これから決起する反乱軍の中にはキリスト教徒がかなりの割合で含まれている。支援の可否を検討するため、彼らの名前を洗い出しているという訳だ。

 訓は目を閉じ、手紙を膝の上に置いた。瞼の裏に焼きついた厳しい陽光は瞼程度では遮れやしない。

英路__声に出さずに呼びかける。今正に,戦いに備えて刀を研いでいるかもしれない弟子に。

 お前の選択は、正しいのかい? 




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