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第6章 2

 これは夢だと浅はかな期待にすがったのはもう何度目だろうか。男の腕の動きに合わせてぶらぶらと揺れる文懐から目をそむけることはどうしてもできず、さりとてこれ以上無残な姿を目の当たりにし続けると頭がおかしくなってしまう。しばらく時間は止まっていた。夢でないのならば今すぐ死なせてくれ。文懐が本当にあの世にいるのか確かめてくるから。自死はできないキリスト教徒に憐れみを与えてくれ。

 やっとの思いで絞り出したのは、普段の声とは程遠い弱々しい音だった。

「ど、……どうして……」

 何故文懐の首がここにあるのか。何故自分がここにいるのか。その答えを訓はうすうす分かっているのだ。ただ、自分で結論を出す勇気がどうしてもない。現実というにはあまりに無様な結末を迎えた自分と文懐をこれ以上侮辱できない。

 男は箱の中から次々に首を取りだした。

「これは黎文懐の長男、こっちは次男、もう一つは文懐の妻。ああ、この小さいのは、二年前に生まれた娘だ」

 そして男は一体どういうつもりなのか、それら全ての生首を一気に訓の檻に放り込んだ。

 体の震えが止まらない。ボールのように弾んだ幼子の首を受け止め、その冷たさに果てしない後ろめたさが爆発した。

「後で返してもらおう。文懐一族の首も陛下はお喜びになるだろうから」

 そこで男はようやく話し始めた。

「お前たちの反乱軍は、もうとっくに陥落したんだよ……」



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