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白と黒の物語  作者: コーヒー先生
3/5

ごきげんよう我がNへ

目の前が暗い。

動くことも出来ない。

縛られているような……


「ハッッ!?」


目が覚める、暗かった視界に一気に色が行き渡る。

手足の自由が利かない、縛られ、座らされている……さっきの出来事は夢ではなかったと言うことだ。

全身がまだ少し痺れていて硬く冷たい床の上にいるため痛い。

ここはどこだ?これから俺はどうなるのか……。


顔を少し上にあげると見えるのは組まれた白く細長い足。

膝が出ている短いズボンは黒く、縁は金色だ。

もう少し顔を上げると件の中学生が居た。

いや、中学生なのか今では分からない。


顎に手をやり冷え冷えとした瞳で俺を見下ろしている。

さっきは可愛らしかった表情や動きは一ミリもなく、ただ見下ろしているだけ。

整った顔立ちはピクリとも動かない。

圧倒的な"強者"のオーラを感じる。

それが恐ろしく声が出ない。


「起きたか、 ごきげんよう佐藤文。」


中性的な声は感情が乗っておらず、空気すらも凍っているような無機質部屋に強く響いた。


「ここは……っ」

自分が出せる精一杯の言葉がこれだ、なんとも恥ずかしいがそれほど怖いのだ、ちびりそう。

服装は変わらず看守のようなもの、制帽の下から見えるは少し細めた赤黒い瞳。


怖気付いて顔をまた少し下にずらすと、人が居た。

正確には人が椅子になっていた。


ん?っと思い、今の状況も彼の怖さも忘れ目を強くつぶりまた開く。

いる、彼の椅子になっている男が一人。


顔はぼさっとした黒髪に隠れて分からないが体格は完璧に男。四つん這いになり彼に座られている。

意味がわからん

しかも嫌がってると思いきや時折、

「はぁ、はぁ……!」

とちょっと嬉しそうな声を出してる。

怖い……

それを見てからもう一度顔をあげ彼を見るとSMの女王様のように見える。


いやでも、

「ふむ、ここはだな」

と話を進めようとする彼の姿は女王様とは言い難い。

まるで普通の椅子に座っているように、当たり前のことのように、そこに座っている。

怖さと意味のわからなさとが混ざりあい、現実逃避のために動かせる範囲に横を見る。


そこには女性がいた。

薄桃色の長い髪を腰までおろし

頭にはヴェール……と言っても結婚式とかに被るやつではなく協会のシスターが被っているような黒色のものを乗せている。

緑色の瞳が輝く可愛らしい顔立ちをしていて、

白くほっそりとした手は前で組んでいて大人しさと美しさも感じる。

胸元には十字架のネックレス、それを支えるは大きな胸。

大きな……大きい。うん

スカートは膝までで、白いエプロンのようなものが上にのっている。

年齢は俺と同じか少し上くらい、160cm程の身長。

服装は全体的に白黒で、メイド、シスター、そして看守。

この3つが交わったような洋服だ。


にっこりと軽く微笑みながら動かずに立っている。

可愛いなぁ……ってちょっと思うけどここにいるってことは色々ありそうだ。


「……?佐藤文、聞いているのか?」

っと、彼の声が響く。

現実逃避をしすぎた。

とりあえず彼の話を聞かなきゃここから出ることも出来ない。

「あ、あぁ全然。」

「聞いてないのか……面倒くさいが仕方がない、お前の為にもう一度説明してやる。」

はぁ、っとため息をつくと、椅子……になっている人間からふわっと降りた。

椅子になっていた黒髪の男は名残惜しそうに、少し悔しそうにこっちを睨みどこかに歩いていった。

後ろは見えないがドアの閉まる音がしたから、後ろにはドアがあるようだ。


カツカツ、と小さく靴の音がなり俺の前に彼が来る。

そういえばずっと『彼』と言っていたが確かN……?何とかとか名乗っていた気がする…。

それも今から話す内容で分かるのか……?

不安げな俺の顔の前で少ししゃがみ、ずいっっと顔を近寄らせる

可愛らしい顔が目の前に来て、少しいい匂いがする。

かわ……女の子みたい………じゃない!俺が今割とピンチだ。しっかりしろ!


「佐藤文、お前はさっき『ここはどこ?』と聞いたよな?

まずその説明をしようでないか。」

話を始めようとするので質問を

「……この縄は解いてくれないのか?」

「すまないがまだそのままでいてくれ、お前が騒がなければすぐにとれる。」

近寄らせた顔を離し、さっき見たシスターのような大きい胸の女性をちょいちょい、っと手を振り呼ぶ。


「はい、N様!」

ふわっと花が咲くような可愛らしい笑みを浮かべ女性が近寄ってくる。

にこにこと上機嫌に彼に近寄る女性は

「ふむふむ、分かりました!」

と、彼に耳打ちされながら頷く。

次はこちらによってきて


「こんにちは、佐藤文様。

守檻『N』へようこそ!私の名前はフライザ・マリア……お気軽に『フライザ』とお呼びください。以後お見知りおきを。」

とスカートの端を掴み優雅にお辞儀をし、微笑む。

胸元の十字架と長い髪の毛がふわりと揺れる。

その慣れた仕草が思春期高校生の俺を少しドキドキさせる。

か、可愛い……!

彼のとは少し違う女性らしさのある匂いが余計胸の高鳴りを強くさせる。

楽園か……?違う!落ち着け俺。


「それでは文様に私から少し簡単な御説明を……」

そう言い手元にあるタブレットを俺に見せてくる。

……

さっきはタブレットなんて持ってたか?

俺が可愛さにドキドキしてたせいで見てなかっただけ……だな、多分。


タブレットには立体的な黒く大きなビルのような建物が写っている。

見たことがあるぞ…?


「N様や私たちがいるここは守檻N、白の国のちょうど真ん中にありますとても大きな建物なんですよ!」

既視感の正体が判明した、数年程前……俺がまだ小学生位の時完成した大型のビルだ。

テレビでひっきりなしに放送していたのをよく覚えている。

俺が住んでいる所はそこまで真ん中ではないからそれ以降見ることがほとんどなかった。


「数年前に完成した大きな黒いビル……だよな?」

「えぇ!そうです、テレビでやっていたのをご存知でしょう?ここに今私たちがいるのですよ。」

タブレットを握り締めながら答えるフライザ。

まさか、やっぱり彼が言ってた

『国のど真ん中にある黒いビル』

はホントだったのか……。

というか守檻ってなんだ?初めて聞くワードだ。


「守檻…という言葉に少し戸惑われている御様子で……?」

こっちの心を見透かすように彼女が聞く

「あ、あぁそんな言葉は無い……よな?」

俺の教養がないせいじゃないはずだ!

「えぇ、そんな言葉は存在しません。ですが漢字そのまま……守り、捕らえる檻です。」

良かった……教養はあった。

守り捕らえる…少し矛盾してるようにも感じる。

「今は分からないと思いますが、いつかわかりますわ……。えぇ」

とフライザが呟く。

いつか……?


「それでは、お話に戻りますね!こちらのビルは私達が……いわば……国の為に働く場所です。」

働く!?もしかして俺ここで労働強いられるってこと…?!

「おいおい、俺は働かないからな……?」

「…!働くと言っても……世間一般的な働くとは少し違うのです。」

そ、それでも働くのは嫌……働かないぞ!


フライザが手元のタブレットを少し動かす。

「こちらをご覧ください。私達は国の安全と未来を守る為に暗躍するのです。」

タブレットには


〈守檻Nでは、白の国を守るため対抗となる黒の国を完璧に潰すことを目的としています。〉


と、書かれている。

まてまてま、黒の国を潰す……!?

意味がわからん

とフライザの白い指がタブレットを少し動かす。

続きには


〈潰す為には手段は問いません、強行殺人強奪拷問、それらを美徳とし、実行することを許可します。〉


……殺人!?!?

というかやばくないか?拷問とか……

ちょっと待て落ち着け俺、世界。

整理するんだ、

つよつよ中学生に連れてこられた場所が国の真ん中のでかいビルで、そこは黒の国を潰すために殺人すらも犯す者たちが集まった場所……守檻であるということ。

は??

おい死ぬか俺。


殺人とか絶対したくないんだが……


「分かりましたか?」

フライザが首をかしげ聞いてくる。

可愛いとか思っちゃったけどこの人も人殺しって事!?

怖い笑顔がとても怖い助けて。


「黒の国を潰せる者をこの組織の一員として迎えているんですよ!中にはとても有名な芸能人や権力者もいます。」

と……聞きたくないよ……芸能人が人殺しとか……。

「基本的には黒の国に個人的な恨みがある方をこっそり勧誘してるんですけどね!文様は特別です。」

特別ですよ?と小さく言ってくるフライザ

今じゃ可愛く見えない!!


「特殊な能力を持っている方のみこのように無理やり連れてきて縛って仲間にしているんです!」

にっこり笑うフライザ……言ってることが可愛くない!

助けを求めるため視線をさ迷わせると彼と目が合った。


「ふむ……フライザの言う通りだ。」

顎に手をやり頷く彼……怖い!

と、フライザがその声に気づき後ろを振り向き彼に言う。

「偉いですかN様?私、説明してとても偉いですか?とても?」

説明してた時の柔らかく可愛らしい声は消えひたすら彼に聞き続けるロボットのようになっている。

怖い、怖いよ!

彼の方は慣れたように

「あぁ、偉いぞフライザ。」

と短くつぶやく。


その返答に満足したのかフライザはまたにっこり笑いながらこっちを振り向き

「それとN様はこの守檻のトップなんですよ!」

と嬉しそうに言う。

てかそれもホントなのか……え、めっちゃすごい人だ……怖い。


「N様はとても凄いのですよまだ幼い頃から躾られ強く聡明で冷酷でそれでいてとても素晴らしくこんな私を救って下さりこの守檻を動かしあの邪悪なる黒の国を潰してくださるのです!」

「そして見た目も素晴らしい!美しく人という垣根を超越する姿。細く幼いのにとつも強くて、麗しい、美しい髪の毛はその髪を1本貰い食べたいくらいで、今は落ちている毛をありがたく頂戴し保存して〜〜」……

そう彼……Nのことを語り続けるフライザ。

怖い怖い怖い怖い、

最後ら辺やばくなかった?捕まるよ……いや殺人の時点で捕まるのか。


「正直今のお前は何も理解出来ていないだろう?」

「あ、あぁ殺人とか……守るとか……潰すとか、よく分からない……とても。」

理解できない、したくもない。


「だが、いつかは慣れる……その為にはまずNに正式に入ってもらわなければならない」

静かに語る彼。

なんだか変な匂いがしてきた。

「い、嫌だ……なんで人を殺すような組織に入らなきゃ!」

「まぁ、落ち着け。君は入らないといけないのだ……無理やりにでも。」

無理やり?そんなの嫌に決まっている!ここから逃げなければ……

そう思うとなんだか頭も痛くなってきた。

「逃げれないぞ、お前は」

見透かすように囁くN。

手の縄を解こうとするが出来ない。

ほんとに逃げれないのか?


「それにお前は潰したいだろう?黒の国を。」

「そんなことは無い!確かに黒の国は法律のない意味のわからない国だ!だが直接なにか被害や恨みなど俺には無い。」

そうだ、家族を殺されたり、生きる道を潰されたり。

そんなことは1度もなかった……なかった。

「本当の事を知りたいだろう?」

本当の事?

「あぁ、お前の、佐藤文の……」

いいかけて辞めるN。

「それにもう手続きは済んでいるのでな。残念だが強制だな。」

くそ……入るしかないのか?

カツカツとまた靴の音が鳴る。

クラりと視界が少し揺らぐ。

「安心しろ、悪くはしない……」

だんだん頭の痛みと目眩が強くなる。

暗く……

意識が揺らいでいく。

「N様!私運びますね!!」

フライザの跳ねるような可愛らしい声が聞こえる……

意識が……

消え……。


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