可愛いに騙されるNへの勧誘
化学の進歩により車が走りテレビが流れ、ビルが立ち並び便利に姿を変え、元あった国と在り方は変わったがとても平和な国
罪を犯す人は左に流れ、親が子供に言い聞かせる言葉は
「悪いことをしたら黒の国に連れてかれちゃうよ。」
そんなとても平和な国が我が国、白の国なのである。
さてさて誰にも、どんな場所にも、もちろん白にも裏はあるようにこの国にも裏は存在する。
黒の国を滅ぼすため暗躍する者、黒の国からの脅威を守るため戦うもの
そんな裏のトップが僕という訳だ。
いきなりでよく分からない?
そうか、ふむ……説明をするのは慣れなくてな、
ん?まずお前が誰かと?
だから言ったじゃないか、裏のトップだ!なんばーわんだ!すごい人だぞ! …
……わかったわかった
僕の名前は『N711』
君が言いたいことはわかるがこれが僕の名だ、
裏の組織N……詳しい名前は今は秘密だ。
組総員3500人、有名人に政治家等も所属する中でもトップである数人の中での1番上、それが僕だ。
裏と言っても我が組織の住まう場所は国のど真ん中にでかでかとあるんだがな、一般人には何なのかは分からないはずだが。
……
まぁ、一言で言えばすごい組織の1番上のすごい人だ!
なぜそんなすごい人がお前に……?それは今から説明しようと……
こんにちは皆さん俺の名前は佐藤文。
ただのごくごく普通、平々凡々で平凡の高校生だ。
いきなり道で中学生くらいの人に話しかけられたかと思うと国の歴史を語られ『自分はすごい人だ!』とか言い始めた。
よくわからん
まぁ、中学生ってこういう時期あるよね……なんかすごいって思いたがる時期?
俺にもあった。
きっと彼、?彼女?もそういう人なんだな。
「おい?聞いてるか?」
っと、また話しかけてきた。
「聞いてる聞いてる、そういうの考えちゃうよね〜!うんうんわかったからおうちに帰りな?ね?」
「むっっっ!!!君……僕が下手に出て話したら子供扱いか!!」
と怒り出す中学生。
ちょっとしゃべり方はあれだが多分中学生?だと思う。
155cmちょいくらいの身長で、男子とみたら少し長めで女子とみたら短めな銀色の髪の毛。
その頭の上には黒い制帽のようなものが乗っかっている。
というか洋服自体看守?みたいだ。
顔を上げると、炎と例えるより血と例えた方がしっくりくるような赤黒い目がジリジリとこちらを睨んでくる。
ふむ、童顔であどけない可愛い顔だ…………何考えてんだ俺。
と言うか見た目も体格も中性的で男女どっちかわからん、僕って言ってるし男?いや、僕っ子の可能性も捨てきれない…
「君!!またぼーっとしやがって……」
むむむっと睨みつけてくる瞳…の下に目を向けると軽く空いた胸元がよく見える、男か……うん。
「おい!…こうなったら無理やりか……手荒な真似はしたくないんだがな。」
なんか物騒なこと言ってるけどこれも多分設定なんだろうなぁ。
「さっきからよくわかんないこと言ってるけど君どこ中?家は?あんまりそういうこと言ってると後々黒歴史になるよ?」
ここで大人の余裕を見せる俺、流石。
「中学生じゃない!家は国のど真ん中の黒い建物だ!ホントのことだから黒歴史じゃない!!!」
顔を赤くし怒る彼。
そう言われても……
「しょうがない、そこまで信じないようなら……」
と彼が言いかけながら後ろを振り返る。
俺もならって後ろを向くと
「おいクズ!!!」
彼のでも俺のでもない声が響く
「聞いてんのか?あ??」
嫌な声だ、低くてうるさい。
その声に合うような背が高くガタイのいい男。手には鉄パイプを持っている。
後ろには舎弟のような男が3人並んでこちらを睨む。
「……?誰だ?おい君、君の知り合いか?にしては騒がしいようだが……好かれてて良かったなぁ!」
見当違いな場に合わぬ声を出す中学生。
「はぁ……好かれてるように見えるか中学生?」
「冗談、ジョークだ。あと中学生じゃない。」
どうやら彼はジョークの才能はないようだ。
「おい、テメェだよ!ゴミクズ佐藤!!」
バンッ、と道路を蹴る男。
「なんだ、」
「あァ??てめ、何舐めた口聞いてるんだよ!!」
ドカンッと煙が出るほど大きく道路を蹴る男。
「めんどくさいな……白の者であるのに……はぁ…」
と小さくつぶやく彼。
今は割とピンチだ。
これまでの流れでわかる人は分かるかもしれないが俺は男……隆二に高校でいじめられている。
軽い理由で目をつけられ慣れたもんだが今はヤバい。
鉄パイプを持ってる、結構前もあったんだがボッコボコにされた、ボッコボコに。
学校に行くことも出来ず2日ほど休んだらまた殴られた。鉄パイプじゃなかったから良かったが。
はぁ……またあの痛みは嫌だ……。
「君?」
小さく彼がつぶやく、声も中性的なんだなぁとかどうでもいいことを思う。
「君?もしかしてだがこいつは君の害となる者か?」
害となる、よく分からないが多分そうだ。
「あ、あぁ……害…?害だ。」
ふむ……と小さく彼か呟く。
「あァ?なんだ?テメェ、害ってか??俺が?舐めてんじゃねぇぞ!!」
その大声を汽笛に隆二と舎弟が走り出してきた。
目の前が真っ暗になる。
俺、死ぬのか……。
と思っていると
ピンッッッ!!
と鈍く高い音が鳴る。
「アニキィィ!!!」
と騒ぐ舎弟たちの声。
「ん?」
「ふむ」
目を開けると横にいる彼が顎に手をあて考えるようのポーズをとっていた。
そして目を真っ直ぐにすると先の壁には隆二が埋まってる。
ん?
埋まってる?
何度見ても埋まってる。
彼の方をもう一度見るともう片っぽの手は人差し指が軽く突き出ているような……そう、デコピンの手をしていた。
……
いやいやまさか
「くだらない、」
デコピンの手をグーパーグーパーしながら彼がつぶやく
隆二の舎弟たちは腰が抜けてるような体勢で隆二の肩を揺らしている。
「あ、あの君、もしかして、もしかしてだけど君が?」
そーっと彼に聞く。
「あぁ、あいつか?うむ、これでぱーんだ、ぱーん!」
そう言いながらこれまで話してきた中での一番の笑顔でエアーデコピンをする彼。
笑顔、女の子みたいで可愛いなぁ……ってそうじゃない。
あの屈強な隆二をこんな中性的な可愛い中学生がデコピンで倒せるわけが無い!!
「そんな冗談!君、さっきから俺をからかったり意味わかんないこと言ったり。強さに憧れるのもわかるけど変なこと言うのは……」
とお説教しようとする俺にちょこっと近づき俺の手を両手で持ち、広げる彼。
なんだ?ちょっと可愛いぞ……
「少し手が痛くなるかもだけど、君がそんなに疑うから仕方なくだからな?」
小首を傾げ俺の手をモミモミする彼。あざと……
バァァァン
「ぐおぅふぇぇぅ……?!?!!」
痛い!超絶痛い!
「すまない……これでも優しくしたんだが。」
心配しながらのぞいてくる彼。
いきなりすぎてビビる
俺の手は真っ赤になっている……デコピンだけでこの威力だ。
えぐい、まじで、え?
こんな小さく可愛い中学生のデコピンの威力じゃないぞ……
しかも優しくしたって…
信じたくないが隆二をやったのも彼…?
「これで分かったか?僕の力だ!」
ふふんっと胸を張る彼……。この可愛い動作も正直怖く見える
「いや、正直信じられない、というかほんとにどういうこと?」
可愛い中学生に変な組織の勧誘をされいじめっ子にやられるかと思いきやその中学生に守られ……その中学生の威力はえぐい。
語彙がないせいでえぐいとしか言いようがない。
そうなるともしかしてもしかするとその変な組織も実際にある?
いやいやそんなことは無い、きっと人より力が強いせいで自分がそういうものの頂点だって信じ込んじゃった子なんだ。きっと。
「僕の力がわかったならNに入りたまへ、君。」
「だからそのNってのはなんなんだよ!流石にそれは嘘だろ?」
「本当だ、君の力を買って君を勧誘してるのだ、僕が。」
やっぱりよく分からない。俺の力?そんなものは無い。
そう悩む俺にまた一歩近づく彼。可愛い顔をにっこりと歪ませ上目遣いをする彼。やっぱりかわい……
パァッッッッン
目の前が真っ暗になる。
威力は全く可愛く…………ない。