平和な国と罪人達だけの国
その国はとてもありふれた国だった。
大きな争い事は無く、平和で幸せな国だった。
もしかしたら喧嘩や揉め事など起きているかもしれないがそんなものは小さな事だ。
『国』として見ると実に素晴らしく、怖いくらいに平凡で平和なのだ。
だがそんな幸せは崩れ去る、一人の殺人鬼によって。
その殺人鬼は凶悪だった、罪のない子供から平和に過ごしていた大人までを全て殺し喰らったのだ。
当然国はその殺人鬼を捕まえようと躍起になった。
そんな恐ろしい殺人鬼だ、とても長い逃亡劇が始まるのでは無いか、国で過ごす民達はとても不安だった。
が、ある一人の男により凶悪な殺人鬼はすぐに捕まり、また国は平和を取り戻した。
はずだった
その殺人鬼が同じ監獄にいた者たちと脱獄をし、国の左へ逃げ出したのだ。
国の左はどことも変わらぬ平和な場所、だが現れた罪人達により殺され、生き延びたものは右へと逃げ出した。
自分の命を守るために。
そして左で罪人達は暮らした。
他の罪を犯したものや、身寄りのない子供などを右から連れ出しだんだんと左の罪人達は多くなった。
もちろん国はすぐに対処をしようとした、だがこれまで大きな争い事などなく過ごしてきたこの国では罪人達を捕まえる力も術もなかった。
凶悪な殺人鬼を捕まえた男の行方も分からず、左は膨大な力を手にするようになり遂には国の半分程の大きさになった。
凶悪で、醜悪な罪人だけの国が出来たのだ。
そしてその国は『白の国』と『黒の国』と言う二つに別れた。
これまでと変わらず平和で幸せに暮らす白の国
罪人だけの法律が存在しない黒の国
とても安直な名前だが
この世界を、この物語を語るにはそれだけで充分なのだ。