5 悪魔の輪っか
その後、ノックと共に側近候補達が入ってきた。
挨拶を済ませ、そそくさと部屋から出ようとした時、悪魔の一言が!
「セリーヌは勉強の進行具合を毎日報告に来るように」
え~~~なんでだよ。
「殿下、何故セリーヌ嬢だけですか?」
なんか眼鏡がこちらをチラ見しながら質問している。
「セリーヌは男爵令嬢だからな、皆よりも遅れている。
少しでも追いつけるように進捗を確認しながら教育の調整をしないといけないからな」
なるほど、とか、さすが殿下だお優しい、だのうるさいわ。
だったら初めから高位貴族様を選べっちゅうねん。
けっ
それからの日々は正に地獄。
侍女ならお茶の淹れかた、身の回りの世話の仕方なんかを知るべきじゃないのか?
私に課せられたのは、
・国内にあるお茶の種類、香りを正確に覚える事
・隣国3か国の言語(あいさつ程度は却下)
・高位貴族のマナー
・王国の歴史
・貴族年鑑と各領地の特産物、家族構成、派閥
そして、普通の勉強←学園で10位以内に入れる学力だと。
何だよ、これ。
スケジュールを見てムキーっとなっていたが、待てよ?
これって無能でやめられるってこと?
やった~~~~~~。
なんて思っていた自分。
甘かった。
甘すぎた。
あの悪魔が自分の性根を見破った人間を手放すはずがなかったのだ。
毎日学習の進捗状況を聞かれる。
しかも、3か国語のどれかで・・・・。
まーーーーったくわからん
張り付けた笑顔で適当に流そうとした、初めは。
呆れて解放してくんないかな?
あまりに進まない学習状況が続いたある日。
「いい度胸だな」
そう言って悪魔は頭に何かを乗せた。
「?」
「いたい?あ、?いだだあだだだっだだぁ」
頭に乗せられた輪っかがギリギリと閉まる。
何だこれ・・・。
「これは特別に開発させたギリギリ締める君だ」
ださっ、ネーミングセンス無しか。
そう思った瞬間、また締まる
「ぎぃやぁ~~~~」
「よくできてるな」
どういう作りなのか全くわからないが、勉強がはかどるようになったのは間違いない。
きちんとやらないと頭が締まるのだ。
しかもスイッチは悪魔の手の中。
人間って切羽詰まるとなんでもできるのかもしれない。たとえ強制的でも・・・。
おかげで3か国語の日常会話ができるようになった。
お茶の種類も香りだけでわかるようになってしまった。
勉強もどんどん進んでいる。
マナーも講師からは合格点をもらえた。
「やればできるのか。フム、つまらんな」
そう言って『ギリギリ締める君』のスイッチをもてあそぶ悪魔。
つまらんてなんだ、締められるのは私だ。
心なしか頭がとがってきた気がする・・・
頭の形をそっと確認してみる。
「形は変わっとらんぞ」
うるさい、黙れ悪魔!




