12 知らんかった
最高のチョコレートケーキを堪能した後はお風呂に入ってしっかり休む。
明日は絶対筋肉痛だろうしな。
次の日、多少あちこち痛いが、貧乏貴族は平気だったようだ。
当然だが、5人の挑戦者たちは欠席らしい。
多分1週間くらい動けないだろうな。
学院の入り口でそう思いながら馬車から降りる。
うっ、さすがに足がピキピキいうな。
ちょっとだけ肘とか膝とか曲がらないからカクカクした動きになっている。
昨日の今日だしね、まぁ仕方ない。
教室に入るとなんかにこやかに話しかけてきたのは同じクラスの人だ。
「君、昨日の王子殿下の側近選抜大会に出てたよね?」
へー、そんな風に名付けられてたのか。
側近選抜大会?あれそんなに大げさなことになってたのか。
なんつったっけ、え~とと、とトマス、そうトマス=ライド子爵子息だ。
「はい、大会かどうかは知りませんでしたけどね」
「知らなかったの?」
「・・・」
「よく優勝できたね」
優勝ってなんだ?
よほどビックリした顔をしていたのだろう、トマス様もビックリしてる。
「本当に何も知らないの?」
「はい」
「すごいな、それも・・・」
「何々、どうしたの?」「どうしたの?」
クラスのみんなが集まってきた。
「いや、セリーヌ嬢がさ、昨日優勝したのに知らなかったみたいなんだよ」
「は???どゆこと?」
だって、いきなりフリッツに挑戦されて、勝手に課題が決まって、当日は挑戦者が増えててさ、
最後はゴウゼル様にしごき倒されただけなんだよ。
そう説明すると、全員が残念なものを見るような憐みの目で見てくる。
「セリーヌ嬢って・・なんか不憫だな」
どうしてだよ。
チョコケーキもらえたんだよ?それだけでいいじゃん!
「賞品ってチョコケーキだったの?」
「うん、王宮のパティシエ作、さいっこ~~に美味でした。あれは天国の味だね」
「死んだのか!」
全員から突っ込まれた。
「とにかくさ、セリーヌ嬢は学院の中で殿下の側近として認められたんだよ」
ん?
「すごいわね~」
「殿下って普段どんな感じなの?」
「クロード様って知的よね」
「他の方々とも仲良しなの?」
「普段からあんな風にお手伝いしてるの?」
「ゴウゼル様の筋肉ってどうやって鍛えてるの?」
なんかいろいろ聞かれてる。
ゴウゼル様の事は知らんがな。
適当に返事をしていくが、何だろう、じわじわと何か間違えた感じがする。
気が付いたのは生徒会室に行った時だ。
認められてしまったらだめじゃん。
あの悪魔から逃げることができないじゃん!
適当に手を抜くんだった・・・。
でも、そうするとあのチョコケーキは味わえなかった・・・
でも、これで学園通う間は逃げられなくなってしまった。
でも、チョコケーキは美味しかった・・・。
あのチョコケーキが食べられたし、でもこのままあの悪魔の側にいないといけないし・・。
「がぁっ!」
つい声に出てしまった。
「セリ、どうした?昨日の疲れが出たのか?」
クロード様が驚いて声をかけてきた。
「いえ・・」
「昨日ゴウゼルにあれだけしごかれたんだから、まだ疲れてるに決まってる」
「そうだな、今日はもう帰っていいよ、殿下もいないしね」
あれ?本当だ、悪魔がいないから生徒会室の中がなんか清涼な空気だ。
「殿下はどうしたんだ?」
「さぁ」
「なんか使いが来て、今日は戻らないって言われましたよ」
へー、何だろうね、
ま、今日は帰っていいっていうからか~えろ。




