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裏の支配者

後半です。

これで村編は大体区切りがつきました。

ジークは無人の平原を歩く。


「…………」



目指す場所は決まっている。

あの連中に代償を払わせるのだ。


昨日は記念すべき闇の組織の結成だった。

そして今の自分は、蒼翠(そうすい)のフェンリル。

これからは闇の組織になるために組織を拡大する。


しかし今は、そんなの関係ない。

あの連中を皆殺しにし、誰に喧嘩を売ったか教えてやりたい。



△△△△



ヒレル山、山頂。


「ロイ様!連れて参りました!!」


金髪で短髪の男が、ロイの方へ向かって歩く。


その男に追随する者達がいた。


数はざっと30ほどだろうか、その大多数は老人。


これはフラン村から連れてきた農民達。

手塩をかけて騙した、儀式の生贄なのだ。


その列にリザの祖父母もいた。

リザも連れられてきているが、意識を失っている。


「よし!ではこれから儀式を開始する。

説明していたように、君たちには供物になってもらう。イルム様をもう一度この世に呼び戻すための儀式だ」


ロイは話を続ける。


「偉大なる神の復活にひれ伏せ」


すると、連れて来られた村人達が一斉に土下座をし始める。これが神を迎えるための礼拝の仕草だ。


もはや全てが準備完了だ…。

少し邪魔が入ったが、予備の儀式の装置もある、供物もある。


宣教師の数も足りている。


ロイは横を見た。

そこにはライアン、金髪で短髪の男ゼイン、紫髪の長髪の男、クルト。

そして後ろに控えている10人余りの宣教師達。


やるべき課題は全て終了した。

あとは召喚儀式を行うだけだ。


30人余りの敬拝の仕草をする信者達の前にロイは躍り出ると、儀式装置の前に一礼。


そして聖なる言葉を読み上げて行く。



すると、徐々に変化が起きる。


儀式の装置に、光の階段が現れていき、その先に光の扉が誕生していった。


思わず敬拝の仕草をとっていた村人達は顔をあげ、発狂するように、狂ったように叫び声を上げていた。


もはや神を讃える姿勢ではない。


そこに、もはや人間味はなかった。

仮に、この光景を第三者が見ていたら、獣の発情かと見間違われるだろう。


それほどに信者達は、いや、狂信者達は騒いでいた。


「黙れゴミクズども!」


ロイが一喝する。


「これから天の訪問を開始する。

これが最後の現世との別れだ。

足を踏みしめながら、この一瞬に感謝しながら、光の階段を登れ!」


そして信者達は動き出した。

まるで操られているように、軍隊のように規律正しく、一人一人階段を登って行く。


そして天の門は開き始めた。


ここに入れば、二度とこの世には戻ってこれない。

この装置の召喚の儀は、そういう風に出来ている。


そうなのだ、絶対に死ぬのだ。

絶対に。


しかしそんなことは狂信者に関係ない。

やがて先頭の者が天の門をくぐった。


そして次々と人々は天界へと行く。



――――



リザはぼんやりとしながら目を覚ます。


最初に入って来た光景は、空中の扉にできた光の門に、村の人たちが続々と入って行くところだった。


な、なに…?


全身が痛い。

しかしそれでも、あの扉を注目しなければならなかった。


なぜだかは分からない。


そして光の扉に入る最後の2人が、リザの目に映った。


――あれは、おじいちゃんとおばあちゃんだ。


「だ、だめ!!!」


彼女は叫んでいた。

なぜだか分からない。


それでも、ここで2人を止めなければ、一生会えない気がしたからだ。


その声は祖父母2人の耳に入っていた。


しかし彼らは止まらなかった。

2人はそのまま天界の扉をくぐり、それは光の粒子となって消えていった。


この現場から30人が姿を消す。




……………。


リザの目に感情はなくなってしまった。


彼女の目に映るのはどこまで暗い闇の色。

彼女は人形のように固まって動かない。


そして儀式の装置に変化が起こる。

装置は天の門と同様に、光の粒子となったのだ。

しかし、粒子は消えることなく何かの形を作っていく。


それは人型。

光の粒子は形を変えて、人型へと変化していってるのだ。


そしてどれほどの時間が掛かったであろうか。

光は完全な人へと変化を遂げた。

そう、神の降臨だ。


「おぉ…神よ!」


ロイをはじめ、宣教師の者が一斉に土下座をし、(こうべ)を地面に(こす)り付ける。


「現世は何百年ぶりだ…?

私を封印した者達はもうとっくに死んだだろう」


よく訳の分からないことを喋っている。


「私の名はドレイス・カーディルだ。

ところで……、お前達が私を解放させた者たちか?」


「は、はい!そうでございます!

私たちは、いや私は10年以上もの時をかけて、貴方様を復活させました!!」


ロイがそう主張する。


「ほう、よくやってくれた。

では貴様に永遠の命を与えよう。エターナルライフ」


「す、凄い!!」


ロイの身体が神の光に包まれる。


「これで貴様は不老不死だ」


「あ、ありがとうございます!!」


1人立ち上がったロイは深く頭を下げる。


しかし、今褒美をもらったのはロイ1人だけだ。

ライアンや、他の宣教師たちは土下座したままである。


「わ、私も貴方様に尽くしました!」


意を決したようにライアンがそう主張する。


そしてそれは雪崩のようになって、他の宣教師たちも神の御加護をもらおうと、躍起になって主張する。


しかしそれらの主張を、ドレイスは聞く耳を持たない。


「ところで、私は腹が減ったのだが、今ここにいる食糧を食べてもいいのか?」


食糧?

ロイは首を傾げる。


こんなところに食糧なんてものはない。

あるのは、神の慈悲を請う愚かな人間と、虚な目をした少女だけだ。


「もちろんでございます。

この世のものは全てドレイス様のものでございます!!」  


「そうか、では頂くぞ?」


ドレイスはライアンの腹を手で貫通させる。


「くはぁ!?」


そしてライアンは光の粒子となって消えていった。

思わず他の宣教師は驚愕するが、ドレイスは構わずに食事を続ける。


それはロイを除いた、全ての宣教師を喰いつくすまで続いた。宣教師たちは悲鳴や絶叫をあげたり、逃走する者までいたが、それらはロイが魔法で殺した。


そして山頂に残るは3人。

それはドレイスとロイ、そしてリザだ。


「この者も食っていいのか?」


「当然でございます。

どうぞお召し上がりください」


リザの足は(すく)み上がっていて、逃げられない。


ドレイスはこちらに近づいている。


「や、や、やめ、て…」


もはや声すら出なかった。


助けなど来ないのだ。

こんな神に等しい存在を前に、動ける者や逃げられる者など存在しない。


それでも必死に足をジタバタさせる。


リザは諦めていない。

助けが来る、必ず助けが来る。


絶対に、ジークお兄ちゃん(・・・・・・・・)が助けに来てくれるっ!


「お前も俺の一部になれ!!」


ドレイスの右腕が振りかかる。


「じ、ジークお兄ちゃん"だすけてぇぇっっ!!"」


彼女の叫び声、いや絶叫が森の中をやまびこした。


そして、そのとき。





「もう大丈夫だ。助けに来たよ」





ドレイスが、物凄い勢いで吹っ飛ぶ。


腕がリザに接触する直前に、ジークはものすごいスピードで接近し、圧倒的な力で吹っ飛ばしたのだ。


その勢いは凄まじい。

この山を超えて、はるか先の草原まで吹き飛ばした。


「な、なんだ貴様!?」


「俺か?俺は闇の支配者、フェンリルだ」


ジークは両手を広げ、あちらに見せつける。


その姿はまるで死神。

凄まじいオーラが吹き荒れていた。


ふ、フェンリル…?

なんだそれは?


「な、何を言っている?」


「俺はお前らに警告したはずだ。

大人しくこの山と村から手を引けと…。

私の言うことを無視しなければ、あれほど悪逆をした貴様らでも、寛容な心で許してやったというのに。

…愚かな奴だ」


ジークは睨みつける。


「……っ!?」


ロイは動けなかった。


一瞬でも動いたらすぐにでも首を跳ね飛ばされそうな映像が浮かんできたからだ。


「貴様らはタダでは死なさないよ。

神なんか名乗ってる冒涜者とエセ宗教のあんたらにはこの俺、世界の支配者が裁きを与えん」


またもやジークはポーズを決める。


……決まった、決まったのだ。

裏の支配者に相応しい完璧なポーズだ!


「し、死ね!」


ロイは魔法を唱える。

それは雷属性の魔法。自身の力を持ってしての最強の攻撃である。


触れれば一瞬で即死。

この魔法に耐えられる者など誰もいない。


しかし…。


「ば、ばかな!?」


ジークはなんと、その稲妻を左手で吸収しながら、こちらへ平然と歩いてくる。


「全く無意味な攻撃をどうも」


「……ではこれはどうだ?」


いつのまにか、ドレイスがジークの頭上に浮かんでいた。


そしてドレイスも、凄まじい電気を発生させる。

ロイの電気など軽く超越した稲妻。


そしてそのままジークの脳天目がけて直撃する。


「きゃっ!?ジークお兄ちゃん!!」


「お見事ですドレイス様!!」


「我の全力受けたのだ、流石に奴も死んだだろう。

ふっふっ、ハッハッハ!」


自分の魔法を食らって息がある者など存在しない。

私の力は、裁きだ。神の怒りに触れればこうなるのだ。


――その笑い方は俺がするものだよ?


「な、なんだと!?」


(いかづち)が降り終わった中から、ジークが平気そうに歩いてくる。

両手をポケットに入れ、身体中から闇の炎が噴き出していた。


「ど、どういうことだ!?」


思わず、これにはロイもドレイスも、リザですら驚愕している。


「あんな小さな静電気程度で、俺を倒そうとしてたのはお笑いだ」


「な、なんだとぉ!?」


「さて…次はこっちの番だ」


一瞬、ジークの姿が掻き消える。

そして次に姿を表していた時には、ドレイスの目の前にいた。


「は、はやs」


ドゴォン!!


爆音が鳴る。

ジークはドレイスの頭を大地に叩きつけた。


その衝撃は凄まじく、山にヒビが入る。


「あ、ありえない…」


ロイが目にした光景は俄かにも信じられなかった。


ドレイスの頭が爆散し、辺りを血みどろに変えている。


即死だ。

あっけなく、神は死んだ。


ジークは血みどろの手とは反対の手で、カッコつけるように頭を押さえる。


「これが本当の爆死ってね…。

あんたはガチャで爆死したことある?」


「ガチャで爆死……?」


目の前の男は何を言っているのだ。

手紙の時もそうだったが、この男は時々意味不明な発言をする。


発言の真意はなんなんだ!?

そ、それこそ、ガチャで爆死やマルチ商法…という言葉は神すら超えるというのか!!??


「さぁその身をもって知るといいよ」


そのあとロイの身体が爆散したのは、言うまでもなかった。




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