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説法はいりますか?

なんかストーリーとしてはまったく進んでない。

ぴえん。

 ステータス鑑定を終えたところにちょうどラフィーがやって来た。彼女は俺の後ろに隠れるようにしてゼラを見つめる。


「…………」


「こんにちは、私の名前はゼラ・ウォーカスだ。

よろしく」


「…………」


ゼラが挨拶をしてもラフィーは彼女のことをじっと見つめるだけで、何も返事を返さない。


「…………。

こ、この子は君の兄妹かな?

それと獣耳が生えてるが獣人族なのか?」


遂に沈黙に耐えられなくなったゼラはこちらに助けを求めてきた。


「はは…すみません、かなりの人見知りみたいで。

この子はウォーカスさんの言う通り獣人なんですよ。

僕の兄弟ではないけど。きょ……」


兄妹の関係ではなく、ベッドでの関係だったらあります。


思わずそう言いそうになったが、口という名のダムをせき止めて必死に抑える。

そしてゴホン、というふうに咳払いをした。


「ほらちゃんと挨拶をして」


彼女の背中に手を当てる。

それは急かしているのではなく落ち着かせているのだ。もしかしたら落ち着かせている相手はラフィーではなく自分なのかもしれない。


「……私の名前はラフィー・フィアネ」


「おぉ!ラフィーちゃんって言うのか!

私のことはゼラと呼んでくれ」


「…………」


彼女はまたすぐに無口になってしまった。

二人は困ったように苦笑いして目を合わせる。

そしてジークが口を開いた。


「この建物にテラス席のカフェがあると伺ったんですけど、ウォーカスさんがもしよろしければ一緒にお茶でもしませんか?」


「それなら大歓迎だ。

それとそこの場所は知っているので私が案内しよう」


「ありがとうござます!」


そう言って彼女に頭を下げると、後ろのラフィーが服を引っ張る。


「……ううん、案内しなくて大丈夫。

私たちでそっちに行くからあなたの案内は必要ない」


ラフィーは若干鋭い目つきでゼラを威嚇する。


「そうか….」


「はは….すみません。

ラフィー?ここはお姉さんの言うことに甘えてもいいんじゃないのかな?」


「ううん。私はジークと一緒に行きたいの」


「………」


彼女の瞳からは強い意志を感じた。

それはまるで山のように重く、どのように説得しても動かせる気がしない。


「いや〜困ったな」


「大丈夫だ気にしないでくれ。

では私は先に行ってるとするよ」


そう言って彼女は歩き出す。



…………。



それからしばらくして二人も歩き出した。


「まずラフィーに謝っておくよ。

ごめん。俺が彼女をお茶に誘わなきゃよかったね」


「ううん、ジークは何も悪くない。

でも知らない女にデレデレしすぎ。

まったく私というものがありながら…」


ラフィーはムスッというような表情を作る。

怒ってるつもりなのかもしれないが、ハムスターが口に餌を詰め込んでいるみたいでかわいい。

むしろこれはご褒美だ。


ニヤけそうになるのを必死に隠して自分は話を続ける。


「ごめんごめん。

じゃあお詫びの印に一緒に手を繋ごっか」


「うん…///」


これは必殺技。

うちのメンバーが不機嫌な時に大体これを言えば上機嫌になってくれる。リエルに言えばラフィー以上に喜んで抱きついてくれるほとだ。


するとやはり彼女の表情は少しだけ笑顔が綻んだ。

自分は怒っているんだぞ!とこちらに伝えながらも、内心は嬉しさを隠せないらしい。

やっぱりかわいい。


そしてジークは口を開く。


「でもなんでウォーカスさんにはあんなに強く出たの?いつものラフィーだったら知らない人にはもっと無関心だったよね?」


「実は私も二人の話を聞いてたの」


ギク…!


ジークの身体がブルリと震える。


これはやべぇな。

ていうことは俺が彼女に言ったあのことも聞こえてたってこと?


ジークが内心ビクビクと怯えていると、ラフィーはこちらの心の内を見透かしたように、


「もちろんジークがあの女に綺麗って言ってたのも聞いてたよ」


微かな願いは一瞬で地に落とされてしまった。

希望とは真に儚いものである。


はい終わった〜。

なんであの時の俺、そんなこと言っちゃったんだろ。

でもまぁ…あれは社交辞令みたいなものだから…ね?

綺麗だから別に気になったとかそういうわけではないし、ラフィーも許してくれないかな〜。


ジークは許しを乞うようにラフィーをチラチラと見る。すると、


「まぁでもそのことは許してあげる。

ジークならあの程度にはなびかないのを知ってるから」


ラフィーは天使すぎるな。

やっぱりラフィーしか勝たん!!


「それでなんだけど、私が強く出たのはあの女が嘘をついたから」


「……嘘?」


驚きのあまり俺は目を点にする。

 

果たして何が嘘なのだ。

振り返ってみても彼女は全く嘘をついてないように感じる。


「あの女はまずダークエルフじゃない」


彼女は静かに強く、そう断言した。


「えっ…流石にそれは冗談でしょ?

装置でもダークエルフって…いや、装置は魔法でいくらでも書き換えられるか…」


「そういうこと。

あの女はどういうわけかジークを騙している」


片手で頭を押さえて必死に考えた。


思えば、彼女がステータスを見られても気にしないと言ったのはそうことなのだろうか。

ということはつまり、彼女が自分に対して優しくしてくれたのは、これらは全て嘘だから気にするな、ということなのかもしれない。


それは種族もそうだし、年齢もそうだし、歳もそうだし、全部そう。そこに真実などさらさらない。


………。


ジークにほんの少しだけ真っ黒な感情が生まれた。


それは何故だという怒り。

そしてガッカリという失望。


この世で最も醜い感情の一つだ。


あぁやべー。

もしそうだとしたら人間不信になりそう。

なんなんだ、このなんとも言えない気持ちは…。


しかしジークは頭を振り払って己の邪な感情を跳ね除ける。


それでも彼女が見せてくれた笑顔は紛れもない本物。少なくとも自分はそう信じている。

それに、彼女はリエルのようなタイプなので嘘が苦手なはずに違いない…。


なんだ。

流石にラフィーの考えすぎじゃないか?


「……もうラフィーったら冗談はよしてくれ。

家に帰ったらそういう事はたっぷり聞くからさ」


「ジークは私とあの女、どっちを信じるの?」


「いきなりどうし…」


彼女は強い瞳でこちらを見つめてくる。


どうやら、冗談半分で言っているわけでは無さそうだ。だから自分も真剣な顔になった。


「それはもちろんラフィーだよ。

今知り合ったばっかりの女と、ラフィーのどっちが信頼できて大切なのかなんて言うまでもないよ。

俺はいつまでラフィーの味方だ」


そっと彼女を抱き寄せる。

すると彼女は安心したのか、柔らかい表情になった。


「でも今は彼女を信じてみようよ。

これはどっちを信じるとか、大切だとかじゃなくて、単純に人を信じられなければ、自分も他人から信じられなくなるんだ。

人間の関係というものは信頼の上で成り立っている。

学校での関係だってそうだし仕事での関係もそうだ。

相手を信じられるから自分は快く任せられるんだよ」


ジークは話を続ける。


「関係を築くのは一生ものだけど壊すのは一瞬。

それは建物を建てるみたいに時間はものすごく掛かるけど、壊すなら1日で十分だってことだ。

そして今は相手を信頼する一歩目。

ここで相手を拒絶したら、信じられるものも信じられなくなっちゃう。そう思わない?」


「……うん」


「だからさ、少しでも彼女を信じてあげよう。

少なくとも俺の目には悪い人には見えなかった。

……でも、もしかしたらラフィーの言う通り、本当にこちらを騙しているという可能性もある。

ただそこにやむ終えない理由だってあるのかもしれない。それがなんなのかは分からないけど、彼女と親身に話す機会ができれば、いつかは氷が溶けるように打ち明けてくれるかもしれない。それだって信頼だ。

……まぁつまり何が言いたいかっていうと、ラフィーのことは大好きってことだよ」


俺は彼女を抱きしめる。

すると彼女も抱きしめ返してくれた。


「んぅもう…ジークったら❤️

最初からそう言ってくれれば良いのに❤️❤️」


彼女の表情は一気にデレデレとした顔つきに変わる。そう、今のこの二人の関係こそが信頼の上で出来た絆なのである。

だから信頼とはとても大切なのだ。


とはいえ、抱きしめながら歩くその姿は周りから見ればただの変人でしかない。

そして周りの人は「こいつらはやばい奴だ」と思って、こちらのことを信じなくなるだろう。


そう、信頼とは表裏一体の関係も成しているのである。





次の次くらいは戦闘が入ると思います。

多分……。

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