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魔法館

 ブルー・パレスの西に国立魔法館ロンドという、アンデルン王国最先端魔法研究所の一つがある。閑静な小高い丘に建てられたその施設はかなりの敷地面積を誇っていて、四つの白いドームから成り立っている。


 一つ目は中心にそびえる最も大きいセンターと言われる建物。魔法研究所の入り口であり数々の魔道具やその他魔法に関係するものが展示されている。


 二つ目はセンターの右に建てられたライトワンと言われる建物。渡り廊下でセンターとつなげられたここは空想空間という巨大な装置を使って特殊な体験をする事ができる。


 三つ目はセンターの左に建てられたレフトワンと言われる建物。ここもライトワンと同様に渡り廊下でセンターとつながっており、さまざまな魔道具や魔法に関する装備品を買うことができる。


 そして最後の四つ目はセンターの奥に建てられたロンリーフォーという建物。ここだけはセンターやその他の建造物と接続されていない孤立した造りになっている。しかしそれもそのはず、ここは関係者以外立ち入り禁止の建物で国の極秘魔法を研究しているのである。


 そんな巨大施設へ続いている坂道をジークとラフィーの二人は歩いていた。なだらかな並木道には大勢の人が行き交っている。それはこの施設の人気さが伺えるものであった。


「ふふっ…じぃーく。ジークの手はあったかい///」


「ここは公共の場所だから程々にね…」


「うん!」


 ラフィーはこちらの手を握ってくる。それに全身をこちらに寄せてきて中々歩きずらい。周りには観光客が大勢いるがこの年齢だったら自分達のことを見ても兄弟としか思わないだろう。それがせめてもの救いである。


 2人はそのまま歩き、魔法館の入場料を支払って入り口に入った。


 そしてまずは一番大きなセンターを見物していく。


 センターには非常に多くの展示品や魔道具が置かれていて、何もかもが目新しかった。そしてここが本当に最先端の研究所だということを再認識した。


 そして現在は魔法実験コーナーへ来ている。


 ここでは自分や周囲の魔力を感じる特別な装置が置かれていたり、魔力を用いて道具を浮かせる装置だったり、魔法パフォーマンスなど様々なことをやっている。


 その中で二人はステータス鑑定という冒険者組合や神殿でも行える至ってシンプルなことを試していた。


 自分の目の前に水に浸かった水晶の台がある。ここに魔力を使用して念じればステータスが出てくるという仕組みだ。


 使ったことは無いが、自分にはステータスオープンという魔法があるのでこんな装置が無くともいつでも好きな時に自分の状態を確認できる。しかし物は試しでとりあえずやってみようということになった。


「右手を開いてこんな感じか?それで左手は右腕を掴むようにっと」


 先ほども言った通り自分には代替魔法があるので全くお世話になったことがない。それゆえ使い方が全く分からないので、手探り状態でそれらしき真似事をやっている。


 ただ魔力を使用しているのに水晶は光るどころか反応すらしない。自分の使い方がおかしいのだろうか。


 そしてそのまま30秒程が過ぎた。それにしても一向に変化がない。ついに我慢ならなくなって自分は手をかざすことをやめる。


「ダメだこりゃ。なんで反応しねぇーんだ?俺のやり方が間違ってるのかな……」


 台に手をつきながら隣のラフィーを見る。彼女はどうやら鑑定に成功したようで水面にステータスが表示されている。少し離れているので詳しくは分からないが彼女は喜んでいるようだ。


 それに比べて俺は。


 こんな装置すらろくに扱えないとは。こういう時は他の人も使い方に苦戦するとかそういう場面ではないのか。周りでやっている人は出来ているのに、なぜ自分だけがまともに扱えないのだ。助けを呼ぼうにも係員みたいな人がいないし、今鑑定をしている人に聞いたら邪魔になってしまう。これでは誰かに助けを求めることすら難しい。


 まぁもういいや。とりあえず後でラフィーに聞けば良い訳だし。


 そして素直に諦めた。諦めの速さだけは世界一である。これだけは譲れないものだ。


 そんな時。


「困っているようだがどうかしたか?」


 ん?


 声がした方向を振り返ると一人の女性が立っていた。彼女を見てジークは少し驚いた顔をする。というか素直に驚いた。それは突然声をかけられたからという訳ではなく、彼女の容姿からきたものである。


 紫髪に紫の瞳。肌は褐色でツヤツヤとしている。


 そしてここからが驚いた部分。彼女の耳は尖っていた、エルフでありそうな長くて鋭い耳。


 こんな耳を見たのはこの世界で初めて。それともう一つ気になることがある。


 自分はそれを確かめるために彼女の顔と容姿をマジマジと観察していく。


 確かこの人とはどこかですれ違ったような?う〜〜ん。


 彼女の顔はどこかで見たことがある。顎に手を置いて考えるが、よくは思い出せない。それも仕方がないことである。なぜなら最近は拠点に篭りっぱなしで人とろくに顔も合わせないからだ。


 神妙な顔をしていると彼女も不思議そうな顔をした。


「ん、私の顔に何か付いているか?」


「あ、すみません。初対面?の人の顔を無遠慮に見るなんてとんだ失礼でしたね、ごめんなさい。僕の名はジーク・スティンと申します」


「私の名前は……ゼラ・ウォーカスだ。よろしく頼む」


 彼女は綺麗な髪をパサっと手で払って軽く頭を下げた。その姿は妙に華麗なものであった。


「よろしくお願いします」


「ふふっ。おっとすまない。君のことを笑ったつもりではない。たしかに君が私のことをまじまじと見るのも仕方がないな、だって私は人間ではないのだから」


「やっぱりそうなんですね。その見た目からしてダークエルフですか?」


「そうだ正解だ。この街でエルフなんて珍しいだろう?よりよってダークエルフだ」


「たしかに珍しいかもしれませんね。ですがダークエルフの方はこんなに美しいのですね。初めて知りました」


 彼女は唇を噛んで驚いたような顔をする。


「……それは私を口説いているのかな?君のような人間は初めてだな……」


「あ、またごめんなさい。ついうっかり心の声が漏れてました」


 しかし彼女は綺麗だ。褐色の肌に特徴的な耳。それが紫色の髪と合っていて大人の女性という感じだ。


「ふふっ……。君は面白いのだな」


 綺麗で色っぽい彼女は笑う。その表情はどこか満更でもないような感じだった。


 まさか心の中で言ったつもりだったのだが、どうやら口に出てしまったらしい。とはいえ彼女がこんなに笑ってくれるならそれもまた良しだろう。


 ラフィーを方を何気なく見るとこちらを睨んでいた。おそらく先ほどの自分の発言、または閉鎖的な彼女にとって自分が見知らぬ人と話しているというのは気に食わないことなのだろう。


 後で弁明しなきゃな。そう思うジークであった。


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