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懐かしい部活の朝練の記憶的な

お待たせしました。

「ふっ、ハァっ!!」


ラフィーは虚空に向かってボクシングのようなシャドーを放つ。幼さは残るものの彼女は獣人、あまりにも速く、力のこもった拳は鉄すらへこませる凶悪な攻撃力を誇る。

その後、間髪入れずに中段回し蹴りを行った。

しっかりと全身の力が入った一撃を空中で振り抜く。そして遠心力を用いてコマのように一回転をする。


しかしそれで終わりではない。

彼女は飛び上がって空中回し蹴り行う。


「おおっ…」


ラフィーのそんな姿を見てジークは感嘆の息を漏らす。


軽く2mは跳躍しただろうか。

もし彼女を侮って不用意に近づけば首がサッカーボールのように蹴っ飛ばされることであろう。

それまでの跳躍力と脚力を兼ね備えている。


彼女はそのまま地面に足を着かせることに成功。

そして独特な構えで身体を静止させる。


気迫のこもった素晴らしい動きであった。

ジークは立ち上がってラフィーの元へ近づく。


「いやいやお見事」


軽い拍手をしてタオルを渡す。


「ありがとう」


彼女はタオルを受けとると激しい動きでかいた汗をゴシゴシと拭き取っていた。


ここは自分達の地下拠点である女神の巣の巨大空間。昨日行った空間はアンデッド置き場でこちらの方は自分達の訓練用として使っている。


元々は何のために使われていたのか分からない馬鹿デカイ鉄の空間だが元々の所有者は犯罪組織。

良からぬことに使っていたのは想像に難くない。


まぁそんなことはさておき、自分がここに来た理由はラフィーが一人稽古をしていたので見にきた次第である。


そして自分は口を開く。


「構えといい技のスピードといい、俺から言えることは何一つない。まさに完璧な動きだよ。

ラフィーの成長スピードには目を見張るものがある」 


もちろんこれは嘘ではない。

ラフィーには本当に伸び代がある。

だって覚えは良いし才能もあって、そして何より学ぼうとする姿勢がある。

それは料理でも戦い方でも何でもそうだ。


彼女のような学びに対する真摯な姿には自堕落な自分としては憧れるものがある。


「ふふっ」


褒め言葉で嬉しくなってくれたのか、彼女は眩しい笑顔でこちらを見てくる。だから自分も微笑み返した。


本当に本当に良い子だ。

そして頑張ったご褒美に頭をなでなでしていく。

まぁ、これがご褒美なのかは分からないが。


11歳の少女の頭は柔らかくて髪はサラサラで、むしろこちらが気持ちが良くなってくる。

それに獣耳はモコモコだし、たまにこちらの手に反応していて可愛い。

これは一生撫でていたいものだ。


彼女も「エヘヘ」というような満面の笑みを返してくれる。


まぁこのくらい撫でればいいだろう。


そう思って彼女の頭を撫でるのをやめた。

すると。


「ム〜〜」


なんだこの可愛い生物は。


そこにはあまりにも可愛すぎる動物がいた。

11歳の獣娘が耳をピクピクさせて、不満げにほっぺを膨らませて抗議してくる。

これには自分も脳死級のダメージを受けてしまった。


やめてくれ…。

そんな可愛いお顔でほっぺを大きくしないでくれ。

可愛すぎてぶっ倒れそうだ。

それにそんな顔をされたら一生なでなでしてあげたくなるだろ。


しかしそこはグッと堪える。

時には心を鬼にして無視する勇気も必要だ。

そうしなければ自分はどうにかなってしまう。


やばいな。

こんな顔で見続けられたらおかしくなる。

何か気を紛らわさないと……そうだ!


自分の脳内にびっくりマークが浮かび上がる。

ちょうど気分を紛らわせてなおかつここに来てできる有意義なことを思いついた。


そしてそれを口にする。


「たまには模擬戦でもやってみる?

ラフィーのこれまでに身につけた実力を俺に見せてよ」


「ふ〜〜ん」


今度は打って変わって胡散臭い顔をしてくる。

自分が急に話を変えたことで、誤魔化しているのではないかと思っているのだろう。


そしてそれは半分正解であり、半分間違いでもある。

正解としては、せっかくここに来たのだから実力を確認しようということ。

見ているだけでは実際の力は理解しにくいものなのだ。


間違いの方は当然誤魔化すためである。


自分は汗をかきながら、信じてくれという感情を目に出して訴える。

するとそれが功を奏した。


「……うん分かった!」


可愛らしい笑顔でこちらの提案を呑んでくれたのだ。


これには俺も一安心。


「ふふっ…よし。

やるからには遠慮は要らない。

俺を倒すつもりで全力だ掛かってきてね」


「うん!」


そしてすぐに模擬戦だ。


自分は後ろへ下がってラフィーと間隔を開ける。


「距離はこのくらいか…?」


自分とラフィーの位置までは約10m。

二人は素手で戦うのだからこれほど距離は必要ないのかもしれない。しかし実戦は相手が武器や魔法を使ってくる場合が多いだろう。

そうなるとこれぐらい距離を取った方が彼女としても、相手と接近するコツが掴みやすい。

だからこのように少し距離を空けた。


自分は腕を組んでどっしりと構える。

それは王者の貫禄。

それに先輩としてラフィーには少し良いところも見せてやろうではないか。


そんなことを思いつつ口を開く。


「合図はいらないから、準備ができ次第いいよ」



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