観賞用
「これでよしっと」
先ほど作った剣をジークは壁に掛けて飾っておく。
結晶と偽物の黒曜石の剣がクロスするように交わってなんだか芸術的だ。ここに盾も加えたらどこかの紋章になりそうである。
とはいえ自分は杖使いか体術戦を基本とするので、盾など持つ予定はない。戦利品として獲得したらその時は一緒に飾ってあげよう。
ジークは周囲の壁を見渡した。
言ってはいなかったがこの部屋の四方の壁にはあらゆる武器が飾ってある。例えば杖、弓、斧、槍など。
剣だけは別の物置に放置している。ただこれを機に剣を集めてもいいかもしれない。むしろ剣を使うのもありか。
基本的に武器を飾っている理由は杖の代替品探しだ。自分は飽き性なので杖ばかり使っていてはどうしても飽きてしまう。だからそのために杖に次ぐ面白い武器を探しているのである。
今のところこれといったものはないが斧や弓などは使っていて楽しそうだ。斧で傍若無人に暴れまわるのもよし、弓で敵をスナイプするのもよし。
ただ今はキャラの売り始めなので影の支配者でありながら、禁術師というイメージも忘れられたくはない。そのために今しばらくは杖や杖に似た模擬品で我慢している。
またコレクションという観点からも武器を飾っているのは言うまでもない。
そんな完全に趣味と化している武器管理部屋の中で、杖の展示コーナーを見る。
そこには当たり前だが様々な杖が飾ってある。
「いいねぇ〜。なんか芸術品みたいでたまらんわ。これとかほんとに懐かしいな……」
ジークはとある杖を指差す。
それはてっぺんが竜のような鉤爪の手の形をしていてその中に宝石が嵌められた杖だった。
覚えているだろうかあれは自分が初めて手に入れた
杖だ。その名も忘却の杖。
「たしか2年前に廃墟でゲットしたんだっけ?まさかあんなボロボロの家にこんな珍品が置いてあるとはな。あの家は結局誰の家だったんだろ。魔法使いとかドルイドが山籠りでもしてたのか?まぁ今となっちゃあ倉庫番よろしくだけどまた使いたいわ」
なんか無意識に感傷的な気分になってしまった。気を取り直して他の杖も見てみよう。
「あぁこれこれ。これも荒っぽくていいね」
次に指差したのは鉄パイプ。少し前の時代のチンピラが持っていたであろうな頭頂部が90度に曲がった杖である。
え、杖じゃないじゃん。だって?
これも立派な杖である。別に魔法を強化することだけが杖の役目ではない。歩くときの補助になればどんな物でも多分……杖になれるのだ。
またこれは人を殴った時も威力を発揮する親切設計。歩く時の補助としても、ぶん殴った時としても使える非常に優秀な鈍器なのだ。
それを手に取って素振りをする。
「いいね!頭でも打ったらホームランできそう!!」
言っていることはサイコパスキチガイだが、人間の身体能力を超越した素振りはそれだけで爆風が生まれる。
「おおやっべ、やめとこ」
壁に掛かった武器がカタカタと音を立て始めたので素振りを止めた。そしてもとあった場所に戻す。
再び飾ってある杖たちを見ていく。すると視線はとある杖の場所で止まった。
「でもやっぱり今のお気に入りはこれだな。なんといってもカッコいいし」
そう言ってとある杖を取る。それは漆塗りされたように漆黒で、楕円の形をしていた。
それはいわゆる仕込み刀と言われるもの。直近のウィルレオ戦の時に使っている。
それを少しだけ抜刀し鋼の光沢を確認する。
「良い色合いだ。切れ味も抜群だし、なんといっても軽い。簡単に持ち運びができて今のスタイルにも似合っている、どう考えても完璧だ」
納刀をするとチャキン……というような低い音が響き渡った。
自分が気に入っている点はこの音もそうだ。見た目だけではなく音までカッコいいとは一度で二度楽しめる。もはやこれを枕がわりに寝たい。しかしそんなことをすれば頭が血まみれになるのが目に見えているのでしないでおこう。
ジークは仕込み刀を元あった場所に戻す。そして部屋のあたりを見回していった。
天井で煌めくシャンデリアに赤いカーペット。まるでこの部屋は御伽のお城のよう。そして今自分の目に映るのは武器、武器、武器。
「この部屋は最高だ。初めは試しに武器の管理場所にしてみただけだけど、目で見ても楽しいし集めても楽しい。……よし、この世界の武器をコレクションして世界で唯一の趣味部屋を作るぞ!」
もはや、最初の武器を収めるだけという役割を超えて別の目標が一人でに歩き出すのであった。
日常もやっぱり良いですかね?
まぁしばらくは嵐の前の静けさっていう感じで。