帰り道にて
「いやー満足満足。
二人とも似合っててとっても可愛かったよ」
俺は満面の笑みを浮かべてそんな事を言った。
時間は掛かったものの特注で頼んで正解だった。
初めはクオリティが気掛かりだったのだが、こちらの世界にも似たような服装があったのでお店の人が上手くやってくれた。
大した期待はしてなかったのでリエルとラフィーの二人分しか作っていない。
どうせならエイラとリザにも着て欲しいので、帰ってくるまでにあの二人用のやつも頼んでおこう。
あの二人には果たして何が似合うだろうか。
何を着させてもあの二人なら似合う気はする。
今脳内では色々と妄想や思案に耽っていた。
やばい、これは楽しみだ。
エイラは正直どんな反応をするか分からない。
ただ、リザだったら何をあげても喜んでくれそうだ。
そしてジークは脳内で決断する。
エイラにはあれを、リザにはあれをプレゼントしよう。
そうと決まれば注文は早い方がいい。
思い立ったが吉日、それに善は急げだ。
ああだこうだしている内に忘れてしまってはどうしょうも無いのである。
……それにしても楽しみだな。
今からそんな妄想をしていると期待に胸が膨らんできた。
参考のために一応二人にも反応を聞いておくか。
「二人はどう?満足してくれた?」
ジークは二人に問う。
「うん、良かった!!
ジークが着て欲しいならいつでも着てあげる!」
ラフィーは元気にそう言ってくれた。
かわいい。
そんな喜んでくれるならもっといっぱい作ろうかな?
ジークとしても大いに喜ぶ。
ちなみに彼女に贈ったのは白いワンピースと、とある服装である。
白いワンピースを着たラフィーはまるで、ひまわり畑にいる日焼けした少女のようだった。
もちろんそんな面識はないが、遠い夢で会ったような儚さとなにより可愛らしさがあった。
もちろんリエルの教師姿もそれと同等に似合っていた。どっちが上だとかそんな野暮な優劣はつけない、というかつけられない。
この世にはどちらの作品も素晴らしいのに、どちらか一方を選べと言われる事がある。
自分としては常に思う。
どちらも選んではダメなのかと。
二つとも優れているのならば二つ選んでもいいんじゃないかと少なくとも自分は思うのだ。
……まぁそれは置いておこう。
ではリエルの反応はどうだろうか。
彼女の顔はラフィーと違って赤面していた。
そして口を開く。
「私としてはあの様な服装はあまり好きではない。
というか、どうしても破廉恥に見えて仕方がない」
でも、とリエル。
「も、もし…ジークがどうしても言うのならば、着てやらない事もないな…」
彼女は満更でもない表情をする。
へぇ……。
それに対してジークは悪戯な笑みを浮かべた。
この結果から一つの答えが導き出せたのだ。
それはやはりリエルはチョロいという事だ。
こちらが褒め倒したり勧めたりすれば、リエルは本心じゃなくても成すがままにされたり許してしまったりする。
これが露呈したのだ。
試しに今から実験してみよう。
「……っ!?」
ジークはリエルのお尻を揉みしだく。
……お、やわらか。
大きくてプルプルしている。
触った部分が沈んでいって、それはまるで柔らかいマットのよう。こんなお尻なら強い衝撃も吸収しそうである。
彼女はムッとしたようにこちらを見てくる。
顔はみるみると赤くなっていった。
「ゴホン!」と大きな咳払いを彼女は一つ。
つまりやめろということだろう。
こちらも触るのをやめた。
どうだ?どうなんだ?
彼女の顔をチラチラと窺う。
不貞腐れた顔をしていた。
つまり怒っているということだ。
しかしなぜか叱ってはこない。
では今度はどうだろうか。
ジークはリエルとラフィーの手を繋いだ。
するとリエルより先にラフィーが口を開く。
「ジークの手、おっきい」
「そう?」
俺の手は大きいのか、初耳だ。
思えば毎日農作業で手も逞しくなったのかもしれない。
そんな事を呑気に考えた後、肝心のリエルの方を見る。
「………」
彼女はいつものように凛々しい顔をしている。
しかしとても嬉しそうに見えた。
……うん。
やはりチョロかった。
あれだけの事をされておきながら手を握っただけで機嫌を取り戻してくれる。
なんて彼女は寛大というかチョロいのだろうか。
もしかしたら女騎士は即堕ちしやすいのかもしれない。
さらに興味が湧く。
これに追撃をしてみたら果たしてどうなるのか。
「リエルはかわいいね」
「……!!そ、そうか。
ジークもとってもカッコいいよ……」
リエルは顔をさらに真っ赤にさせる。
二人の顔は接近した。
そして他の人にバレないように甘いキスをした。
……………。
通りの中でねっとりとした唾液の交換を行う。
時間としてはわずか5秒未満。
しかし二人にとっては永遠のように長く感じられた。
プハッ…。
そしてお互いの唇が離れる。
するとそこには唾液の橋が出来上がってすぐさま消えていった。
「……っ」
彼女は名残惜しそうな顔をした。
そこに先ほどまで怒っていた感じは見られない。
最後に彼女の耳元で囁く。
「リエル愛してるよ」
「……あぁ私もだ」
二人は再びキスをする。
しかし今度は唇が触れる程度の軽いキス。
彼女の甘さを調べるはずが、なんでこんな事になったのか。気付いたら彼女にキスをしていたのだ。
よくよく考えれば俺がチョロいのかもしれない。
あれほど言っておきながら、リエルの魅力にハマっているのはこの俺だ。
あの塔の出来事から1ヶ月経った。
なおかつ同じ場所に住んでいる。
関係が進展するのも無理もない話だ。
果たしてこのままでいいのだろうか。
いつの時代の独裁者も支配者も淫欲というものは凄かった。だがそれではやはり限界が来る。
支配者がこんな色欲では、いつか組織が崩壊してしまうのではないのだろうか。
これは大きな問題だ。
ただ…それでも、一つ言える事がある。
リエルとの関係を拒絶するなど自分には到底出来ないという事だ。
自分の利益のために大切な人を無くす。
これでは支配者とはいえないただの悪人。
先ほど自分は、二つを選んでも良いのではないかと言った。それこそ今の問題にそれは近い。
俺は俺の道を歩む者。
だったらこの大切な二つの関係を両立させていくべきだなのだ。ここで下手に怯えてどちらの関係も矛盾してしまうのが一番の誤ちなのだから。
そう思うと強い光が溜まってくる。
それは未来への自信。
これから何があっても大丈夫だと思える勇気が湧き出でてくるのだ。
ラフィーとリエルの手を強く握る。
この二人の手を繋いでいけたなら、自分はどこまでも歩んでいけるような、そんな気がする。
いや、きっとそうだ。
彼女たちがいれば自分に怖いものなどないのだから。
そう強くジークは確信した。
すると。
ん?
一人の女性が自分達を通り過ぎた。
ジークは手を繋いだまま後ろを振り返る。
女性は長い紫の艶やかな髪と褐色の肌をしていた。
そして自分達が来た方向へと向かっていく。
何故だか分からないが、どうしてもその女性が気になった。彼女はこちらの事など見向きもせずに黙々と進んでいく。
数メートル、数十メートルと離れていく。
「どうしたのだ?」
リエルが首を傾げてくる。
「いや…なんでもない。
人違いというか、なんか気になっただけというか…」
ジークは再び前を向いて歩き出す。
今思えば彼女との出逢いはそれが初めてだった。
かなりエロいかも。
これ大丈夫かな…。