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新たな始まり。

 ――――あれから1ヶ月……。


ブルー・パレスは以前の活気を取り戻していた。


犯罪組織デス・フォールは壊滅し、その片棒を担いでいた衛兵や街の上役は逮捕、処刑された。


それと同時にこの犯罪をきっかけとして、街のシステムが見直されるようになり、街は再構築され始めている。


そして政府の方も忙しいようで、破壊された街の機能を健全かつ完全にするために奔走していた。

現在、この街を事実上統治しているのは王国直属の騎士部隊、王国魔法部隊、それと新しく派遣された政府高官。


彼らにとっては街の事で忙しくなるむしろこれからが、戦いとも言えるかもしれない。


そしてそんな事とは全く関係無いジークは、リエルとラフィーを連れてレストランへと足を運んでいた。


「ほら、あ〜〜ん」


リエルはスパゲッティをグルグルと巻いてこちらの口へ持ってくる。


すると……


「ん、ダメ。

ジークは私のサンドイッチが食べたいみたい」


俺の隣に座るラフィーがそれを手で静止させた。

彼女は不満げに口をムッとさせ、リエルに対してジト目で睨むと俺の口にサンドイッチを運んでくる。


俺はなされるがままに素直にそれを受け入れると口に入れて咀嚼する。


もぐもくもぐ…ゴクン。


おぉ、うまいな…。

たかがサンドイッチと思ってたけど、レストランで頼むサンドイッチはこれまた別格か。


ラフィーがメニューの中でこれを選んだ時は驚いたものだ。


なんでレストランでサンドイッチ頼むの?

それを食べるくらいなら家で食べた方が良くない?


最初はそう思ったのだが、こうして食べてみると案外ありというか、今度から頼んでみてもいいかもしれない。


いや待てよ。

やっぱりサンドイッチは家で食べるべきじゃないか?

レストランに来てこれはもったい無いな。


そうしてよく考えた上で一つの結論を導き出す。


それはやっぱりなし、ということだ。


「どう…?おいしい?」


ラフィーは可愛らしいロリ顔でこちらに伺ってくる。


「うん美味しいな」


先程脳内でサンドイッチは無しという結論は出たものの、こんな場面では到底言える状況じゃないのでは大人しくしておいた。


「んふ〜〜」


ラフィーは声にならない喜びをあげ満面の笑みを見せてくる。そして対面席にいるリエルの方に向き直ると、彼女に対しては意地悪な表情を浮かべた。

それはまるで、「どうだ、残念か?」というような煽る顔つき。


リエルはそれに向かって唇を尖らせることしか出来ない。


そんな光景を第三者の俺が微笑ましく見る。


ラフィーはここ最近、俺以外の人にもよく喋れるようになった。同じ仲間のリエルたちには心を許したようで、仲良く談笑している事もある。


ただ、初めて会った人はまだ苦手みたいだ。

それは彼女に人見知りの部分があるからだ。


自分としてはこの事についてはどうも思っていない。ブラック・ヴァルキリーの仲間内は仲良くなるべきだと思っているが、それ以外の赤の他人は正直どうでもいい。仲良くなれない、もしくはそれが難しいのなら、別に無理して仲良くなる必要はないのだ。


ただ、他の者と親しくなれ、という任務を彼女に下す場合もあるかもしれないので、その時には少しでもいいから話はして欲しいが。


そんな事を考えていると、


「いいもん…これは私だけで食べるんだ」


リエルがいじけてしまった。


ラフィーだけに厚遇するのはかわいそうだ。

今度はリエルにフォローを入れよう。


「リエルのそれも美味しそうだね。

俺にも食べさせてもらっていいかな?」


「……!?おおそうか!!食べたいのか!?」


「良ければちょっと分けてくれない?」


「ならば仕方がない!!良いぞ良いぞ!!

ふふっ……//はい、あ〜〜ん//」


ゴクン。


「うん、美味しい!!」


「おぉ、それは良かった…//」


「…………」


今度はラフィーが二人のイチャイチャを見る。

そしてみるみるうちに彼女の顔が不機嫌になっていく。


そしてついに耐えきれずに彼女は動いた。


「はいジーク!!

ジークはサンドイッチの方が好きなの!!」


なんと彼女はこちらの口元にサンドイッチを押し付けてきたのである。


「うぐっ!?」


思わず息が出来なくなった。


それと自分はパスタよりサンドイッチの方が好きだとは言っていない。しかしラフィーは、そんな有無を言わせないような目つきをしていた。


すると今度はリエルが黙っていない。


「おいよせラフィー。

ジークにサンドイッチを押し付けるな。

ジークはサンドイッチアレルギーなんだ」


……は?

なんだよ…サンドイッチアレルギーって。

嘘をつくにしても、もうちょっといい嘘をつこうよ…。


そんな事を脳内で思ってしまったが、言わないでおこう。なぜならリエルの顔も、有無を言わせないような表情をしていたからである。


すると今度はラフィーがそれを否定する。


「ちがう。ジークはパスタアレルギー。

だからパスタは食べられない」


「いやいや違う。

ジークはサンドイッチアレルギーだ!」


二人は食べ物をこちらへグイグイ押し付け合う。


おい、ちょっとやめてくれ…。

これじゃあ窒息するから!!


結局、二人の不満の皺寄せはジークへと殺到するのであった。




ここから新しい章が始まります。

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