作戦会議
ジークは先ほどエイラたちと話していた場所へリエルと一緒に戻って来た。3人は椅子に座ってリラックスしていた。
「3人とも急に出て行って悪かったな」
「あらおかえりなさい。
……えっーとその人は?」
「私の名はリエル・シルバーだ、よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」
「彼の言っていた幼馴染は君たちで合っているのだろうか?」
「えぇ合っていますよ。
私も貴方の事はジークより聞いています。
噂通りの美しい方なんですね!!」
エイラはずいっと彼女に寄って目をキラキラさせた。
リエルはそれに驚いたのか一歩下がる。
「あぁ…ありがとう。
君とジークだけだよ私を美しいと言ってくれるのは」
「そんな事ないですよ、本当に美しいです。
私たちの仲間になるんですよね?
これからどうぞよろしくお願いします」
「こにらこそよろしく頼む」
2人は軽いお辞儀をした。
リザもリエルの方に来て「よろしくお願いします」と一礼してくる。
ラフィーの方は相変わらずどこを向いているのか分からないが、椅子に座りながら「よろしく…」と言った。
「じゃあ緊急で話し合おうか。
今この街で暴動が起きている。原因は昨日の館のことだ。衛兵や組織の方は火消しというか、それを正当化しようと無理やりにでも暴動者を連行、もしくは皆殺しにしている」
「それは大変ね。
分かったわ早く本題に移りましょう」
ジークは早速椅子に座る。
それに続いて他の3人も椅子に座り出した。
座る位置は先ほど同様のエイラとリザの中間。
今度は椅子の間隔が空いていて気兼ねなく座れる。
「よいしょ」
椅子に腰を下ろす。
するとやはり、なぜか隣の2人はまたこちらへ椅子を寄せてくる。
そしてジークにくっついてきた。
はぁ……。
またかよ。
一体なぜこうなってしまうのだ。
この2人は明らかにこちらへ寄せてきている。
別に嫌ではないが、これは新手の嫌がらせなのだろうか。それともいじめだろうか。
それとも…。
俺には磁力が流れてる?
俺がS極でこいつらはN極とかそういう的な?
至近距離とかそういう問題ではない。
肩がぶつかってまともに身動きができない。
そもそも2人は嫌ではないのだろうか?
そこが謎だ。
「…………」
「………?」
試しに訴えるような目線を2人に送ったが「どうしたの?」というような顔をしていた。
そしてその光景をリエルは見る。
彼女は神妙な顔をした。
「……3人はとっても仲良しなんだな。
私からしてみれば羨ましいよ」
「――そうなんだよ。
とっても仲が良くて腐れ縁ってやつかな?」
こちらも受けだけでは終わらない。
負けたままでは終わらないのだ。
今度はこちらが攻撃する番だ。
試しに2人の腰回りに手を置いてみる。
そしてやさしくいやらしく撫で回す。
これは効くだろう。
どうだ!?
流石にこれで怒ったり離れたりするか?
全くお前らが近づいたりする……。
2人の顔を見てみる。
しかし、怒った表情や咎めている瞳ではなかった。
どちらかというと顔を赤くしている。
これはまんざらでもないという事なのだろうか。
これにはジークもびっくりだ。
全くこいつらどういう事だよ…。
そんなにスキンシップが大好きなのか?
自分にはよく分からない。
この2人は家を離れてからこういう奇怪な行動が目立つようになった気がする。
……それにしてもスッゲェやわらけーな…。
お前らが悪いんだからな?
お前らが根を上げるまでずっと触り続けてやる!
ジークは白々しい態度を取る。
まるで自分は何もしてませんよという風に。
対面や少し離れたところに座る、ラフィーやリエルにはこの光景が見えていないだろう。
そして口を開いた。
「ではこれからの任務について話そう。
まずエイラとリザ、そしてラフィーはあの組織の拠点は向かってくれ。拠点の位置は把握済みだ後でレイスに聞くといい」
「分かったわ」
「分かった」
「……分かった」
3人は頭を下げて了解の意を示す。
するとそこで背後からブラッドレイスが近寄ってきた。
「なんだ?
……なるほど、分かった」
そしてブラッドレイスから新情報を聞いた。
「俺とリエルはこの街の敵を一掃しよう。
途中で発見した衛兵や組織の連中を始末していくのだが、今眷属の報告によると何やら大きな集団が広場にいるとのことだ。それを叩く」
「了解だ。
それと今は誰と話をしていたんだ?」
「誰って…眷属、ブラッドレイスだよ」
リエルは面白いことを聞いてくる。
自分がこうやって話しているときはブラッドレイスしかないだろう。
あーそういえば。
確かリエルには言ってなかったけ?
「ブラッドレイスだと!?
あの伝説的な恐ろしいアンデッドを使役しているのか!?」
「もちろん。
その伝説的なブラッドレイスも俺にかかれば、手となり足となる道具に過ぎないけどね」
ジークは指パッチンをする。
するとジークの背後には透明化していたブラッドレイスがリエルにも見えるように視覚化する。
「す、すごい…」
そこには恐ろしいアンデッドがいた。
赤く染められたボロボロのマントを着ていて、ナイフや鎌を持っている。
フードから見える顔は干からびていて、とてもこの世の者とは思えない。
そして何より目を引くのが、ジークがくれた紫の液体から出てきたアンデッドより更に大きいのではないだろうか。身長は2メートルを優に越している。
もしジークが召喚したと言われなければ、流石の自分も回れ右して逃げるかもしれない。
それほど恐ろしいのだ。
今まで自分が見てきたアンデッドはもっと非力で知能がなさそうだった。
だが今目の前にいるこれは自分の知っているアンデッドとはかけ離れている。
こ、こんなものをジークは道具として使っているというのか…。一体どういうことなんだ…。
自分にはもう訳が分からない。
「これが禁術師の力だ」
ジークは両手を広げる。
まさしくそれは強者のポーズ。
誰も寄せ付けないような力を持った者がそこにはいる(左右にエイラとリザがくっついている)。
ジークは再び指パッチンをする。
すると背後のブラッドレイスは再び透明化した。
どうだ…?決まったか?
あの扉の時とは違って、だいぶかっこよく決まったんじゃない?
自分としては10点中8.5点だな。
だがまだまだ高みへいげるはずだ。
真の実力者に限界点は無い!!
そんな事を脳内で考えるのであった。
ゴホン。
咳払いを一つする。
「作戦内容はこれで終わりだ。
短いかもしれないが奴らは今民衆を殺戮しているだろう。だから行動を迅速に開始すべき必要がある。
では解散、各自の命令を全うせよ」
「はっ!!」
「あぁ分かった」
「……分かった」
順応したエイラとリエルの返事に少し遅れて残りの2人も返事を返す。
ジークは椅子から立ち上がる。
そしてリエルを手招きした。
「では俺たちは広場の方へ向かおう。
ちょっと待っててくれ」
ジークは虚空からタキシード、帽子、杖を取り出して身につけていく。
「それは?」
「俺の戦闘衣装だよそれと身バレ防止。
あの連中に俺の姿は見せちゃったから意味はないかもしれないけど、この秘密を知っちゃったヤツはこれから全員消していくから大丈夫」
「そ、そうか」
「うん。
それと…死霊系召喚、陰魔」
目の前に大量の化け物が現れる。
それは影を纏った四足歩行の化け物だ。
全身が影を集めたような黒さでできており、目は赤く光っている。手は鉤爪になっていてこれから繰り出される攻撃は非常に強力。
これは暗殺や偵察、隠密系に長けたアンデッド。
今からこれらには街で暴れてもらおう。
「陰魔よ、この街にいる敵を排除しろ」
その命令で化け物たちは動き出す。
とんでもない身体能力で四方八方に飛んでいった。
「い、今の化け物も強そうだな…」
「ん?そうでもないよ?
一体一体がさっきの戦士長程度だね」
「そ、そうか…。
そ、それはあまり大した事が無いな…」
リエルはもはや何もいう事ができなかった。
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