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打ち明け

「お安い御用だよ。

リエルのことがどうしてもほっとけなくて」


「な、なぁ…ジーク…」


「どうした?」


彼は笑顔でなーに?という顔をする。

私はそれを見てとても悲しくなった。


「ジ…ジークに…どうしても言いたかった事があるんだ…」


「ん?なに?」


「す、すまなかった!!

ゆ、ゆ、許してくれ!!」


リエルは頭を下げる。





…………。

ど、どういうこと?


ジークは呆然とする。


それは物凄い深い角度の謝罪だった。

90度に達するのではないかと思わせるほど、彼女はなぜか全力で頭を下げてくる。


「えっ?どうしたの?」


「言わないで逃げる事は簡単だが、それでは自分が許せない……!」


リエルは涙声(なみだごえ)になりながら何かを告白してくる。

自分には何のことかさっぱり分からない。


はて……。

自分は、リエルは、果たして何かしてしまったのだろうか。


「実は……」


そこでリエルは口を止まらせた。


リエルが謝りたいのは先日の件。


彼は自分の事を心配してくれた。

それなのに自分は彼を、他の薄情な人間と同じように見てしまった。

これをどうしてもリエルは謝りたかった。


この事を言ってもし彼に嫌われてしまったら、自分は一体どうしたらいいのか。

彼がもし悲しい表情したら…。


そう思うとどうしてもこの先が言えない。


リエルは自分の心を鼓舞する。


だ、大丈夫だ…。

彼はきっと…きっと…!

私を許してくれる…。


しかしそう思えばそう思うほど、恐ろしく巨大化した不安が自分に襲ってくる。


彼がもし許してくれなかったら…。

この事を聞いて彼が失望したら…。

何もかも失ってしまった自分に希望与えてくれた彼でも私の事を見捨てるかもしれない。


そう思うと恐ろしくてたまらない。

いつも寛容な彼が激怒して失望の視線で見てくる。


もしそうなったら自分は絶望する。


今、自分の脳内では二つの存在がせめぎ合っている。

一つは天使、そしてもう一つは悪魔だ。


「やっぱり何もなかったと言え」

そう悪魔が言っている。

ここで誤魔化せればどれほど楽だろうか。


もしかしたらここで逃げれば、彼とずっと一緒にいられるかもしれない。

この世界で唯一自分の見方をしてくれて、自分の事を守ってくれる人。


彼はどんな誰よりも強くてこの先一緒に歩いていければ、どれほど素晴らしい未来が待っているだろうか。


非常に勝手ながらも彼の事が王子様に見えてくる。


しかし天使も主張している。

「ここで全てを言うのよ。

ここで逃げたらアナタは一生苦しむわ…」


秘密にするのは簡単。

彼にこの事を言わなければいいだけなのだから。


だがそれでは一生苦悩するだろう。

彼と一緒に歩んでいけるとしても、後ろめたい事を告白せずにいる自分は、果たして本当に幸せになれるのだろうか。


そしてここで逃げる事は彼を裏切るの事ではないか。これでは罪に罪を重ねてしまう。


自分の事を助けてくれてなおかつ看護までしてくれた。そして何よりも、こんな私と一緒に話をしてくれた彼に対して自分は黙って逃げる。


こんな事はあってはいけない。

今ここで告白しなければならない。


でもそんな事は分かっている。

だからこそここで言うのが躊躇(ため)われる。


今までの誰よりも大切な彼と離れたくない。

この夢のような時間がいつまでも続いて欲しい。

そう思うからこそだ。


二つのジレンマが自分を苦しめる。


ここで言って嫌われるか、それとも苦しみながら裏切りながら一生秘密にするのか。


わ、私は一体どうすれば……。


うっ……。


ついに耐えきれなくなって涙をこぼして泣き出す。


ど…どうか!

どうか行かないで欲しい…!


私とずっと一緒にいて欲しいんだ!!

お願いだから私を見捨てないで…。


うっ……。


離れていく彼の背中の幻影が見えてより一層想いが強くなる。


ジークはそれを見て怖くなっていた。


え…俺なんかした!?

やっぱり嫌われてた!?

ま、まずいぞ!!??


頭が混乱してくる。

自分は彼女に何かしたのかもしれない。

宿にいた時からずっと思っていた。

もしかしたら彼女に嫌われているのでは無いだろうかと…。


そうじゃなきゃ今こんな事はありえない。


自分は裏の支配者だ。

しかし乱れる時もある。

赤ちゃんの世話はともかく女性の慰め方など知らない。前世で異性との交流が無かった気がする…自分が(あってて欲しい)それも大人の女性を慰めるなど、ハードルが高すぎる。


一体どうすればいいんだ!!??


ジークは混乱してあたふたする。

それに対して、リエルは子供のように泣き喚く。

それはもうカオスな光景であった。


「お…お願いだから…わ…私を見捨てないで……!

もう君しかいないんだ!!」


リエルはジークに抱きつく。


……へ?

どうなってんのこれ?

もう…訳がわからん…。


もはや頭がパンクしそうだった。


「君が宿からいなくなった時、私は君の事を薄情な人間だと思ってしまったんだ。

許してください、お願い…おねがいだから!!」


そんな事…?

そんな事で悩んでたの……?


それを聞いて思わず拍子抜けするジークであった。


なんか長くなり過ぎました。

本当はもっと進む予定だったのに…。

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