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色欲の館

「都市開発の方はいかがですか?」


「いや〜それはもう順調で。

国の方も莫大な支援金を出すとかで懐の方が温まりますよ」


「それは素晴らしいですな、ハッハッハ」


「ホッホッホ」


黒を基調とした怪しげな部屋で二人は笑う。 


社長室にあるような重厚なエグゼクティブデスクに座るのはこの薔薇の楽園の長、ハイルル・イワン。


そしてデスクを挟んで喋っているのはブルー・パレスの都市開発部の部長であった。


「そしてこれが都市開発部の皆様への謝礼でございます」


イワンはアタッシュケースをデスクの上に乗せる。

そしてケースを開けて都市開発部長に中身を見せた。


「おぉ…これは…!」


アタッシュケースの中身はお金だった。

大量の大金貨と白銀金が整理されて中に敷き詰められている。


「昨年よりも気持ちを多めに入れさせて頂きました」


「いやはや…素晴らしいですな!」


都市開発部部長はアタッシュケースの中に手を入れる。


確かに去年より確実に額が増えているように見える。

白銀金の数が増えており硬貨自体の数も多くなっている。


謝礼金と言っているものの端的に言えば賄賂。

デス・フォールとこの街の裏のつながりのお金なのだ。


この街は犯罪組織デス・フォールに人攫いや麻薬流通、その他犯罪行為を黙認し、国から匿う代わりに金銭を貰う。


デス・フォールはそれらの犯罪行為を黙認してもらっている代わりに謝礼金という名の(まいない)を贈賄している。


そして今日はこの館、薔薇の楽園で受け渡しをする予定だったのだ。


「それで…都市開発の方は順調で?」


「そうですなぁ。

まだ取り掛かりの状況でして、どうなるかは分かりませんが、この街はもっと人の増加が期待できますな」


「それは素晴らしい」


「……それこそ、あなたたちが遊べるおもちゃ(・・・・)の数も増えるでしょう…」


都市開発部の男はニヤリと笑う。


「最近、売り物のメス奴隷達が壊れて困っていたので、それは是非とも期待したいものですな。

ハッハッハ」


イワンもご機嫌に笑った。


この館の名前は薔薇の楽園。

しかし、この館に薔薇など一つもない。


それは当たり前だ。

薔薇とは隠語として使っているのだから。


薔薇は赤い。

赤いものは情熱的、または色事に関する。

色事は男女の関係。

つまり直接的に言ってしまえば、ここは情欲の楽園ということだ。


この館の地下には数百人の性奴隷がいる。

そしてそれを金持ち達に楽しんでもらい、多大な利益をあげている。


性奴隷達はお客様を楽しませるためだけのものではなく、奴隷市場に流したり買ったり、金持ちや上流階級の者達に売っぱらったりもしている。


現に、この都市開発部の部長(薄毛で太って油ぎった中年の男)は、多くのペットをここから買った。

今は妻が2人おり性奴隷の数は10人。

中には10歳になったばかりのペットも飼っており、少し前に子供を産ませた。


そのペットとの歳の差は40歳強。

もはや親子以上の差がある。


「ところで…最近10人ほど拐ってきた新商品があるのですが、試しにいかがですか?」


イワンは下衆(げす)な笑みを浮かべた。

そして話を続ける。


「処女に幼女、20歳(はたち)になったばっかりの新鮮な女。

子供持ちの人妻までいますよ」


「それは味わってみたい!

ですが、今日は残念ながら遠慮させていただきます。

その代わり来月来るので、その幼女を新品のまま取っといてくださいませんか?」


「あなたも好事家(こうずか)ですな〜。

確かペットは4人も幼女をお持ちでしたっけ?」


「ホッホッホそうでございます。

やはり幼子はたまりませんな〜。

自分の子供より年下の幼女を見ると、興奮してきますので」


都市開発部の男は…いや、油ぎったおっさんは、腹に溜めた立派な脂肪を手で叩く。


「それは素晴らしい趣味ですな。

私も貴方のような高尚(こうしょう)な趣味を持ちたいものです」


二人はお互いに笑い合う。

そしていかほどの時間が経っただろうか、話の話題は最近の問題になっていた。


「ここ半年前から困ったことに、度々我らの組織が謎の襲撃にあっております。

そちらでも既にお耳に挟んでいるようですが、相手は一人の銀髪の女。見つけたら是非処分でも捕獲でもお願いいただけませんか?」


イワンはそう言った。


「なるほど…銀髪の女ですか。

確か我ら街の方でも指名手配にしていたはずです。

デス・フォール皆様のお願いとあらば、その女を捕まえられるようにこちらの方でも尽力してまいります」


「それは嬉しい。

この街で騒擾(そうじょう)起こし、我々に楯突く輩は何人たりとも排除しろ。との、ウィルレオ様のご命令でございますので」


ウィルレオ。

彼はこのデス・フォールを束ねる代表であり、この組織の創立者である。


圧倒的な力を持って、瞬く間にこの街全体に組織を拡大させた。イワンからとっても頭が上がらない存在である。


「……それともう一つ。

先日、我ら最高の掃除人が二人排除されました」


「えっ…!?

この街最高の暗殺者達がですか!?」


都市開発の男は驚愕する。


今、イワンの口から出された掃除人とは、デス・フォール暗殺部門最強暗殺者達だ。

任された依頼は必ずこなし誰一人として逃さない、組織の最高傑作と言われた暗殺者。

それが二人も消されたのだ。


この街で長く組織と関わっている都市開発の男からしたら衝撃の話である。


「相手ですが…蒼翠のフェンリルと名乗っておりました」


「蒼翠のフェンリル…?」


その名は聞いたこともない。


「はい。銀髪の女を始末しようとしたら、突然その者が現れたようで、我ら最高の暗殺者のうち、2人が死亡しました」


「それは…なんということだ…」


男は愕然とする。


あの暗殺者を二人も殺した蒼翠のフェンリルとは一体何者なのだろうか。

それほどの実力を持っているのならば、銀髪の女より厄介なのは間違いない。


「分かりました。

この街と、あなた方の組織に歯向かうネズミどもは、必ず退治せねばなりません。

我らはこの街の戦士長を動かしましょう」


「それはそれは…。

戦士長殿が付いてくだされば、我らに恐れる者は無しでございましょう」


「ハッハッハ」


「ホッホッホ」


「――フッフッフ」


2人は再び笑い合う。


しかし、今度は別の笑い声も増えていた。


「何者だ!?」


2人は焦ったように入り口を見る。

そこには、壁に背を預けた男が立っていた。


「…貴様らが随分と楽しそうな話をしていたのでな、つい聞き耳を立ててしまった」


男は妙な格好をしていた。

貴族なような衣装に気味が悪い杖。

顔は長い帽子をかぶっていて窺い知ることができない。


「な、なんだ貴様は!?」


イワンは思わず直立する。


「先程、噂をしてくれて感謝しよう」


謎の男は貴族のような優雅なお辞儀をする。


「我こそが蒼翠のフェンリルだ」


「なんだと…!?」


「ひっ…!!」


フェンリルは徐々にこちらへと歩み寄る。


「前世ではおねショタ派は多少許していた。

しかし生憎(あいにく)おじロリ派は好きではない」


そう言ってフェンリルはカッコつけるように右手を広げる。


なんなんだこいつは…?

……何を言ってる?


イワンの頭は混乱していた。


話の話題だった者がなぜ目の前にいるのか。

警備兵達は一体何をしているのか。


状況が全く掴めない。


「とりあえず気色悪い油ぎったおっさんには死んでもらおう」


フェンリルは急接近する。

そして都市開発の男の頭をデスクに思い切り叩きつける。


「うおっ!?」


思わずイワンは腰を抜かす。


ば、化物っ!?


頭が爆散した。

デスクには血溜まりが広がっていく。

あんな事は普通の人間では到底不可能。


この男は一体何者なのだ。


「この大金はお前らには勿体ない。

これは貰っておこう」


フェンリルは机の上に置いてあったアタッシュケースを奪い取る。


「貴様はい、いつからそこにいた!?」


「いつからだと…?

最初からここにいたよ。

最初から貴様らの会話を聞いていた」


「なんだと…」


全く気が付かなかった。

ドアの開いた音なんて微塵もしなかったし他に誰かがいる気配もしなかった。


「だ、誰か助けてくれ。

そ、そうだ…警備兵を呼ぶぞ!!」


イワンは壁についてあるスイッチを押そうとする。


「……無駄だぞ?

ここに来る時に張っていた者達を全て始末した。

そして残りの奴らも、今頃我のアンデッドによって消されているだろう」


まぁ…。


「奥にいる連中はまだ殺していないがな」


「ク、クソッ!!」


お、俺はこんなとこで死ねない…!

まだ新しいオモチャも使っていないのにぃ!!


男は思い切りスイッチを叩き押す。


「――では貴様も死ぬといい」


腰が抜けたイワンの頭をフェンリルは思い切り踏みつける。


「そういえば…この館には奴隷がいるのか。

よし、後で解放してやろう。

この連中の悪評が広がるようにな」


フッフッフ。


ジークは悪い笑みを浮かべる。

その悪人ヅラはここで死んだ2人を超越していた。


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