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闇の貴族の入館の仕方

 貴族姿のジークは街路を歩いていく。


右手をポケットに入れ左手で杖を持つ。

顔はトップハットで隠れているが、口元を見るに非常にご機嫌であった。


今から行く場所は連中の拠点の一つ。

今日ブラッドレイスに発見してもらったばっかりの

場所。

かなり大きな館だというのだから非常に楽しみだ。


ジークは一人歩いていく。

月の光で輝くその姿はエレガント。


しかし満月の夜にこんな格好をした男が一人で歩いていたら非常に気味が悪るくもある。


現にそれを見たデス・フォールの一人の男はこちらへやって来た。


なんなんだこいつは?

俺たちの仲間か?


男は一瞬疑問に思う。

この男の服装はなんだろうと。


かなり怪しいがこんな姿でこんな場所に来るあたり、自分達のメンバーで間違いないのだろう。

そう思って不用意に近づいてしまった。


それが、男の命運を分けるとも知らずに。


「なぁあんたは組織の一員だろ?

あの二人が女攫い…」


男は全てを言う前に死んだ。


ジークは杖で男の首を切り離したのだ。

その一振りは恐ろしい速さ、もはや一瞬などの時間では到底測れない神の御技のような動き。



は……?


男は自分の身体を失った事にも気付かず死んでいく。

首が無くなった事により、動脈の大量の血が噴水のように舞い上がった。


「…つまらん」


ジークはそれすらも一瞥もせず建物へと向かっていく。


道端で死んだ羽虫など構っていられない。


ただ、これもなかなかに一興。

夜の貴族と噴水のように舞い上がる血。

ジークはハットを深く被り直した。


な、なんだ…?


そんな風景を見ていた男がいた。


男は呆然とする。

よく分からない服装をした男が自分の仲間を一瞬で葬り去った。


一体何が起こったのか。

気づいたら仲間の首が地面に落ちている。


男はジークへと近づく。

まるで、飛んで火に入る夏の虫のように。


「お…おい!お前!な、何者だ!?」


男は咄嗟に剣を抜く。


しかしジークは全く気にする素振りは無い。

男を無視するように建物へと向かっていく。


気味が悪かった。


こちらは剣を持っている。

それなのに男はこちらへ見向きもしない。

それとも、気づいていないのか。


そのまま剣を持った自分に背を向ける形になった。


「し、死ねぇ!!」


剣を突き立て、貴族姿の男に突進する。



しかし……。


「な、なに!?」


その者は剣が刺さる直前に(もや)となって消えた。


「ど、どこだ!?」


男は必死にあたりを見回す。


すると。



ブシャア!!


まるで果物を潰したような音がした。

その音の発生源は自分の腹。


男はゆっくりと自分の腹部を見る。


「う、うわぁぁあ!!」


自分の腹に腕が貫通していた。

男は必死に抵抗するが全く身動きが取れない。

後ろを見ようにも、全く確認することが出来ない。


腹を貫通したのはジーク。

そのまま男を持ち上げていく。

右腕だけの力で、80kgはある男の身体が容易に上がっていった。


ジークは男をそのまま真上に放り投げる。

男はボールのように吹っ飛んだ。


「"あぁぁぁああ"」


男は20メートル程打ち上げられただろうか。


大人数人で胴上げしたところで、せいぜい1メートルぐらい浮かせられるだろう。

いくらなんでも人間の腕だけの力で、大の男を吹っ飛ばしていい高さでは到底ない。


男は空中で必死にもがく。

もはやこの高さだけで男は死ぬだろう。


そして男は地面へと直撃。

……とはならなかった。


男と同じ高さまでアンデッドが浮上する。

それは霊廟の(モーソリアーム)守護者(ガーディアン)


リエルが召喚液で呼び出したのと同種の者だ。

それが迅速に男を切り刻んだ。


男は地面へと到達する。


落ちて来たのは細切れの肉、そして血のシャワー。

もはや人間とは言えない肉塊に男は変化した。


「………」


ジークはそれすらも気にせずに歩いていく。

そして連中の館の扉までたどり着いた。


「失礼するぞ」


ジークは館の扉を蹴破る。

とても"失礼"とは言えない入場の仕方。


蹴られた扉は鉄製だというのに、簡単に折れ曲がって、館の中に吹っ飛んでいった。


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