表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/100

銀髪の美女

お待たせしました。

結構長文になりました。

城塞都市ブルーパレス、裏通り。


本通りとは違ってここは静かな街路。

そこを1人で歩いている者がいた。



「…西の魔術通りにあいつらの拠点は無しか。

くっ…!」


彼女は左手に持った紙を握りつぶす。


彼女の名前はリエル・シルバー。


かつてはアイロンブロッサムというチームのリーダーで冒険者をしていた女性だ。

ちなみに今はフリーである。


彼女がここを歩いていたのは、とある組織が絡んでいた。


その組織の名はデス・フォール。

この都市を裏で牛耳る犯罪集団の名だ。


組織の構成人数は不明。

現在では1000人にも2000人にもその数は膨れ上がっているという。


やっている事は麻薬の流通、奴隷売買、暗殺、貿易品の横領など、犯罪ばかりだ。


これほどの悪事をやっているが、未だかつてこの組織を捕らえようと街は動かない。


理由は簡単だ。

この街の管理人や町長、その他上級役人に賄賂を贈っているからである。


あろうことか、組織に盾突いた者は無実の罪を着せられ、この街に罰せられる。

また街ぐるみで奴隷売買を行っているという話だ。

 


本当にこの街は腐敗している。


リエルはそう思う。


そして1匹狼でもリエルは対抗し続ける。

そしてそれには理由があった。


かつてこの組織に仲間を殺されたのだ。


たとえ1人だとしてもリエルは諦めない。

相手の数は2000人、そしてこの街の管理者や、それの傀儡になっている兵士達を含めば下手したら万にいくかもしれない。


絶対にリエル1人では勝てない。


しかし彼女はそれでも諦めない。

例えこの都市と敵対しようとも、捕まって奴隷にされたり殺されたりしようとも、死ぬまで戦い続けるだろう。


彼女たちの無念を晴らさずに自分だけ逃げるなど、できるわけが無いからだ。


彼女は腰に携えたレイピアを握りしめる。


今日はあいつらに復讐できなかった。

それでも明日必ず、あいつらに一矢報いると、心にそう誓って。


「今日はこれでおしまいだな。

作戦を練って出直すしかないか…」


彼女は落胆した面持ちで歩いていた。




……その時。


「………」


彼女の背後に3人の怪しげなフードを被った者が近づく。


しかし自分も馬鹿じゃない。

すぐに気づいた彼女はレイピアを抜くと同時に、後ろへ牽制する。


後ろの連中は慌てて後ろへ下がった。


「何者だ!?」



「……」


謎の男たちはマントに隠したナイフや杖を取り出す。

当然、敵の正体には勘づいていた。


おそらく連中はデス・フォールの刺客だろう。

それかこの街の役人の暗殺傭兵。


生き残った自分を殺すために尾行していたと言う事だろう。


彼女と連中は一定の距離で向かい合う。

いつまでもそれが続くと思われたが、先に彼女が動いた。


「ハァッ!!」


神速の一撃を持って正面のナイフの男に刺突を繰り出す。


あまりにも速い一撃。


彼女が冒険者時代に鍛えてきたレイピアの腕は、至高の領域までに達する。

おそらくレイピアの腕だけなら、彼女と並ぶ事ができる者はこの街にいない。



「……ふん」


男はその刺突を掻い潜って彼女の下へ接近する。


そしてナイフで切り付ける。


慌てて後ろに回避する。

しかし相手は3人。

いつの間に杖を持った男の接近を許してしまう。


そしてその男は風魔法を発動させた。


アイロンシールド(鉄盾)!」


レイピアで虚空に円を描くように振り回す。

すると、円形の鉄が出現し、風魔法からリエルを守ってくれる。


しかし、男たちの攻撃はそれで終わりではない。

いつの間にかもう1人が小剣をリエルに投げていた。


「うっ!?」


それが太ももに刺さってしまう。

彼女はそのまま街路に倒れてしまった。


う…動けない。こ、これは毒…!?


男の小剣には毒がべっとりと塗られてあった。

それは神経毒。彼女の自由を奪う恐ろしい毒だ。


「わ、私はこんなところで…!」


右足を動かそうとするが全く言う事を聞いてくれない。


「ふっふ、残念だったな女。

貴様はもうすでにこの街で指名手配になっている。

我が組織に歯向かうという事は、この街に喧嘩を売るということだ」


男たちはゆっくりとリエルに近づいてくる。


や、やはりそうだったか!!

街ぐるみで私を狙っていたのか!!


リエルは男たちを睨みつける。


悔しさのあまり泣き出したくなるが、それ以上に仲間達を殺した復讐心の方が高かった。


男は倒れているリエルにナイフを突き出す。


もはや誰も助けに来てくれない。

それどころか、初めからリエルに味方はほとんどいなかった。


孤立無援なのだ。

このまま誰の恨みも晴らせられずに、自分は死んでいくだろう。



……その時。



「すいませーん。

ちょっと迷子になったみたいで、道を尋ねたいんですけど〜」


細い街路から男が出てきた。


男の歳は20歳(はたち)にいくかいかないか頃の青年。青い髪で黄色い瞳。


完全な部外者だ。


暗殺者たちは一瞬ギョッとして、リエルから離れる。


「あれれ…?

お取込み中でしたか?すみませんね」


現場を見た男はそのまま後ろを歩きをして、距離を取ろうとする。


誰であろうと発見者は殺さなくてはならない。


「殺せ」


ナイフを持った男が即座に命令する。

すると杖を持った者が風魔法を作り出し、そして発射した。


高速の風の球は青年を襲っていく。

風属性魔法は防御しにくい。

魔法でなんらかの手段を用いなければ、防ぐことも難しいだろう。




……しかし。



超速で向かってきた風の球を青年は握り潰した。



……!?


「ど、どういう事なんだ…?」


リエルは思わず動揺した。 


あんな事はありえない。


風魔法は実体がない魔法。

それを握りつぶすなど聞いたことも無いし、見たこともない。


横を見ると、男たちも動揺しているのか動きが固まった。



「…いきなり怖いな〜。

俺は大人しく引き返そうとしたんだから、許してよ」


青年は不気味に微笑む。

そして話を続けた。


「そんなの見た事がないって顔をしてるね。

教えてあげよう。俺が掴めると思ったのは掴めるし、俺が気に入らないって思った魔法は無かったことにできるんだよ?」


「…な、なんだと…?」


沈黙を守っていた男は思わず口を開ける。


「ふふっ、もちろん嘘だよ?

あんたらが何をやってても気にしないけど、ちょうどいい宣伝の機会だ。相手にしてあげる」


青年はかかって来いというように手招きをする。


「こ、殺せ!」


デタラメを言われて激昂したのか、男は命令を出した。その命令で即座に2人は動き出す。


先程はどうやって防がれたのか分からないが、こちらは歴戦の暗殺者。あんな偶然はもう2度と起こらない。


杖を持った者が風魔法を詠唱する。

発動するのは先程の魔法。

しかし今度は1つだけでは無かった。

男は10個もの風の球を作り出したのだ。


そして青年に向かっていく。


もう1人の暗殺者も動き出していた。

先程投げていた小剣を手に持って青年に襲いかかる。


先に青年の元に届いたのは風魔法。

一つ当たれば全身骨折するほどの威力。


それほどの威力の球が10個。


もはや青年は助からない。

そう全員が思った。




……しかし。



風の球を片手だけで全て掴んで、青年は握り潰した。



「ど、どういうことだ!!??」


暗殺者が声を荒げて叫ぶ。


あり得ない。

なぜ風魔法を握りつぶせるのか。

どういうトリックがあって青年には効かないのか。


小剣を持った暗殺者が青年に迫る。

迅速な動きで瞬く間にナイフを突き立てる。




……しかし。




暗殺者の持っていた小剣が止まった。


「なっ!?」


それを止めたのはやはり青年。

しかしあり得ない方法で小剣を止めていた。


青年は小指で小剣を止めていた。


「どっ…どういうことだ!?」


「あんまり遅すぎて眠たくなったわ」


そのまま男を前蹴りした。


男はあり得ない速度で吹っ飛んでいくと、そのまま後ろの店のガラスを突き破り、ダイナミック入店していった。


「な、何をした!?」


もはや命令などどうでもいい。

どうやって小剣を止めたのか男を吹っ飛ばしたのか、男は血眼になって青年に問い詰める。


「何をしたって…吹っ飛ばしただけだけど。

そんなに気になるんだったら、あんたにもっと良いもの見せてあげるよ」


杖を持った男を見る。


「ほらおいで…?」


青年が手招きをした。

すると引力が発生したかのように、男は青年の方に引き付けられる。


「や、やめてくれ!!」


男は必死に逃れようとするが、万力とも思わせるような力によってどんどんと青年の下に近づいていく。


そして近づいた暗殺者の首を締め上げ片手で持ち上げた。


「な、な…何が起こっているんだ!!」


あ、焦るな!!

れ、冷静になれ!!


今までに自分達が逃した獲物などいない。

自分達の連携を崩した者はいない。

どこかに必ず弱点かトリックがあるはずだ!


しかしそれが何かは分からない。

それどころか、目の前の相手に弱点など無さそうに見えた。


こ、こんな事はあり得ない!


「ゃ、ゃ…"やめでぐれ"…!

だ、だずげて!!」


男は必死に悲鳴とも絶叫とも聞こえる声で叫ぶ。


だがこんなものを見せられて助けにいける者など誰一人いない。


暗殺者は足がすくんでいた。


「ゔ、ゔぇ…!ゲホ!」


男を放り投げた。

床に倒れた男は必死に空気を吸おうともがき苦しむ。


「魔法を見せてあげるよ」


青年は気持ち悪い微笑みを見せた。

そして苦しんでる男に指を向ける。


そして。


「"い、ぃいやぁああ!!"」


突如闇の炎が男を包む。

そのあとあり得ない事が起こる。


男の姿がゾンビに変わった。


「な…なんなんだそれは!?」


「かわいそうに…ゾンビになっちゃったね」


これはまずい。

自分の本能が警告している。


この男には絶対勝てないと。


どうすればいいんだ?

ここで俺が助かる方法は…?


男は脳みそをフル回転させて考える。

するととある一つのアイデアが浮かんできた。


「なぁ…許してくれないか…?

お願いだ、すまなかった!!

俺がこの女を狙わなきゃよかった!」


男は綺麗に土下座をする。

これこそが男が思い浮かんだアイデア。

土下座だ。


「…どうしよっかな〜?」


「だ、だのむ!!」


もはやはんべそをかいていた。

何がなんでも目標を始末する冷酷な暗殺者の姿はもはやどこにも無い。


「よし…わかった!俺も鬼じゃ無い。

お前のことは許してあげるよ」


「そ、そうか!?」


「ただしこれを伝えてくれない?

蒼翠のフェンリルがお前らを食い殺す。

お前らには悪いけど、俺の事を有名にするための踏み台になってもらう。…てね」


「わ、わかった!!」


「じゃあさっさと逃げな。

殺されないうちにね」


男は恐ろしいほどの速さで逃げていった。


生命の危機を感じると人間はここまで速くなれるのかと、ジークは感動した。




下の星マークをつけてくれたら、作者は非常に嬉しいです。是非ともお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ