新たな冒険
これから街編が始まります。
後で2話目も出します。
「……ジーク起きてる?」
「は〜い」
ジークを起こそうとエイラが部屋に侵入する。
「今日はもう村を出る日なんだから、早く支度してよね」
「分かった分かった」
エイラは疑い深そうな表情をすると、部屋から出ていった。
「よいしょっと…」
ベッドから起きると大きなあくびと共に、蹴伸びをした。
……なんだかんだあれから2年の月日が流れていた。
俺の歳は17歳になった。
今日はこの村を出る。
そして世界に羽ばたく記念すべき1日だ。
この時をどれほど待ったことだろうか。
力も十分すぎるほど蓄えた。
この村を離れるための準備は万端なのである。
自分の部屋で最後の朝を味わって、リビングへと向かっていく。
――――
リビングへ向かうと4人が食事をしていた。
そしてエイラの隣の席に座り自分も食事を始める。
おぉ…!
今日の朝のメニューは豪華だった。
いろいろな種類の焼きたてのパンに、スープ、干し肉にサラダ。
普通かもしれないが、この村の食事としては最高クラス。きっと、おばさんが今日の日のために、精一杯頑張って作ってくれたのだろう。
それに感謝だ。
おばさんの料理ともしばらくは見納め。
しっかりと、心の中に残しておかなくてはならない。
「エイラ、リザ、ジーク。
今日はお前たちと食べる最後の朝食になるな」
おじさんがしみじみそう言う。
「お前たちならどこへ行ったとしても必ず、上手くやっていけると信じている。
もし寂しくなったり、困った時は、いつでも帰ってきなさい」
「そうよ。
私たちはいつまでも待ってるからね…」
おじさんやおばさんは少し泣きそうになっていた。
2人には4年間お世話になった。
本当にいい人たちだ。
自分の我が子じゃない俺たちにも、ちゃんと心配りをしてくれる。
「大丈夫だよお父さんお母さん。
私たちはいつでも帰ってくるから!」
エイラの言う通りだ。
ここへはいつでも帰って来られるし、帰ってきたいととも思っている。
エイラも、成長したものだ。
それは言動だけでなく見た目もそうだ。
高かった身長もさらに伸びて、今ではモデルぐらいのスタイルの良さだ。
おばさんもスタイルが良いので、それを引き継いだのかもしれない。
見た目も大人っぽくなった。
女性の成長期特有のπおつも大きくなって、正直目のやり場に困る時もあるほどだ。
そして何より変わったのが実力かもしれない。
2年前は、あんなに苦戦していたアンデッドベアーも、今では容易に倒せるようになった。
エイラの成長は本当に目を見張るものがある。
「…そうだよ!
またすぐに元気な顔見せにくるから!」
リザはそう言う。
彼女も2年前と比べてやはり成長していた。
性格はそのままだが背丈が伸びた。
見た目も幼くて可愛いからものから、綺麗な顔付きになった。
時折あどけなさが残るが、そこがリザのチャームポイントだ。
そして何より俺の言うことをよく聞く良い子だ。
特に彼女はここ2年で、最も変化したのではないだろうか。
「エイラとリザはしっかり面倒見るよ。
おじさん、おばさん」
「ジークがそう言ってくれると安心できるな。
お前も凛々しく勇ましい顔になったぞ」
「ありがとう」
自分では分からないものだが、俺の顔つきも変わったらしい。
――そして最後の食事を終えた。
その後、俺たちは少しの時間で色々な事をした。
村にやり残したことなのだ。
13歳まで住んだ実家に別れをつげたり、両親の
墓にも挨拶をした。
掃除などは以前済ませておいたので問題は無かったが。
高い位置から村全体を見渡す。
……よし、村でのことは全てやり尽くしたな。
ここを離れるのは少し寂しい気もしたが、出会いがあれば別れもある。別れがあれば出会いもある。
自分達の夢を掴むために旅立つのだ。
せめて最後くらいは笑顔で旅立ちたい。
そして迎えの馬車が来た。
見送りはおじさんたち以外にもさまざまな村の人が来てくれて、挨拶を交わした。
おじさんとおばさんにも感謝を告げて、この村にもいつか顔を出すといった。
馬車が出発する。
段々と遠くなっていく村を見るのは、少し不思議な気分だった。
しかしこれから俺たちの冒険が始まるのだ。
「初めて行く街は楽しみ?」
「楽しみだな」
前世では、神奈川に住んでいたので、都市暮らしには慣れていたが、この世界はどうなのだろうか。
都市だから、魔法についても深く学べそうだし、イベントもありそうだ。
それに都市に着いたらやりたい事が多くある。
先ほども言ったが、俺はこの2年間で非常に力をつけた。リザもエイラもかなり成長している。
新しい街では自分達の名が知れ渡るだろう。
それはもう良くも悪くも。
馬車で1日とちょっと経っただろうか、目の前に巨大な都市が見えてくる。
城塞都市ブルーパレス。
数多の異種族や人間との戦いに備えて造られた城塞。そこにさまざまな人々が住み始めた結果、巨大な城塞都市が完成された。
街の至る所にはその名残があり、敵を妨害するための壁や防衛設備が多数見受けられる。
現在では魔法に関する研究や育成を積極的に行っているようで、この都市からかなり多くの大魔法使いも排出されているそうだ。
ジークたちは入門してから巨大な繁華街を歩いていく。
「しっかし大きいわね〜。
こんな大都市は初めてだから色々見回りましょ!」
「そうだねお姉ちゃん!!」
2人は、はしゃぐように先に行っていった。
……やれやれ。
あの振る舞いは30点だな。
まだまだあいつらも俺の領域には遠い。
ジークは腕組みをする。
裏の支配者である者、いついかなる時にもクールにだ。
しかしそんな自分こそ、一番ワクワクしていたのは秘密である。
ジークにはやりたい事が数えきれないほどにあった。
この街でまず、組織のコスチュームを作りたい。
組織で活動するのに普通の服ではカッコ悪い。
なら作るのはどういうものが良いのかと、自問自答してみたところ、自分は貴族のような格好が好きなことに気づいた。
だから貴族風の紳士な服を作ることに決めた。
禁術だし死霊系使いだから、フードがついた黒い服も良いとは思ったが却下した。
理由としてはありきたりだから。
自分達はアイデンティティが欲しい。
どこにでもいるような怪しい格好をしてても、印象不足なのである。
敵や周囲に与える印象は、恐ろしくも掴み所の無い飄々とした印象。
それこそ貴族の服は持ってこいだと思ったのだ。
ジークはさまざまな妄想を捗らせながら、2人が行った道とは別の場所を行ったのだった。
下の星の評価をつけてくれたら、私としては非常に嬉しいです。
いつもご愛読ありがとうございます。