特訓の始まり
そうとなればすぐ特訓だ。
翌日。
クラウンは畑仕事を終わらせると、エイラとリザを連れて、さっそくいつもの草原へと赴く。
「ここに来るのは2回目ね」
エイラは深く深呼吸をした。
そういえばそうだった。
なんだかんだ、エイラとは来たことがある。
リザとはここに来るのは初めてだ。
「相変わらず何にもないだろ?」
「そうね。
でもこんな場所だからこそ、トレーニングに集中できるのかも」
彼女は頭の後ろで手を組んで身体をほぐす。
「私も強くなりたい!」
リザも可愛くそう意気込む。
あの事件後、なんだかんだ2人は俺のトレーニングに同行したくなったようだ。
エイラはいわく、弱いだけじゃ何も守れない。
あの一件後それを強く自覚した。
…と。
自分としても、この意見には大いに賛成できる。
全くその通りだ。
もし俺がおじさんの倉庫から内緒に本を持ち出していなかったら、ひょっとしたら村が無くなっていたかもしれない。
しかし実際はそうならなかった。
なぜなら俺が強かったからだ。
そしてこの弱肉強食の世界では、それが全てなのだ。
相手だってこちらが弱ければ、村全体を蝕んでいたかもしれないし、こちらが強くなったから、逆にこっちがあちらを蝕んだのだ。
強さがなければ正義もクソも無い。
そして最強の禁術師には、最強の裏の支配者には、強さが必須なのだ。
その事は実感している。
「では特訓を受けるために、まず2人のステータスを確認させてもらう。
エイラのは見たことがあるが、リザも見せてもらう」
「うん!」
ちなみにリザとは家族になって以来、ちゃん呼びは無くした。
なんとなく不自然だし、ぎこちなかったからである。
特に理由は無い。
「ステータスオープン」
2人の情報が3D化して立体的に見れるようになった。
まずはエイラからだ。
本名 エイラ
種族 人間 女性
年齢 15歳
職業 村人Lv1
体力 9
MP 17
力 10
身の守り 7
素早さ 13
賢さ 13
ギフト
業炎の絶閃
これがあいつのステータス。
身体能力部分は大体俺が1Lvの頃と一緒か、少し低めくらいだ。
それと彼女の注目すべき点はなんと言ってもこのギフト。業炎の絶閃。
なんちゅうおどろおどろしいギフトなのだろうか。
業炎と付くからものすごい熱なのだろうが、絶閃とは何だろう?
たぶん、ものすごい熱が一瞬で襲ってくるという事なのかもしれない。
自分のギフトには、攻撃として使えるギフトがないので、少し羨ましい。
ただ、こんな草原では絶対に試してはいけないだろう。自分が予測しているほどの火力なら、少なくともこの草原が大火災につながる。
やめてほしい絶対に。
次にリザだ。
本名 リザ
種族 人間 女性
年齢 12歳
職業 村人Lv1 祈祷師Lv1
体力 5
MP 20
力 5
身の守り 6
素早さ 10
賢さ 30
ギフト
世界樹の再誕
光玉の至宝
――なんだこれ…?
はっきり言って意味がわからん。
よく分からないギフトが2つ付いてる。
世界樹の再誕と光玉の至宝。
初めて聞いた、一体なんの能力なんだ?
この世界ではギフトというものは、選ばれた者しか備えられない至高の御技ではないのか?
こうも簡単にポンポンと付いているが、この世界は一体大丈夫なのか…?
もし野蛮な者に、恐ろしいギフトがついていたら、世界を転変させる事も可能かもしれない。
そんな恐ろしい力を持っているギフトというものが、3人中3人ついていたら、それはもう奇跡でもなんでもないのでは無いだろうか。
流石にいくらなんでもヤバすぎだろ…。
よく、この世界今まで続いてきたな…。
呆れたいところだが、自分が最も多い数のギフトを持っているので、なんとも言えないのだが。
だけど…今まで戦ってきた奴の中で、ギフトを持ってた奴はいたのか?
唯一持ってそうな奴があの神?なのかよく分からない存在だったが、それらしきものも確認できなかった。
もしかしてこれは俺たちが運が良いだけで、他はほとんど持っていないという可能性も存在する。
それだったら非常に嬉しい誤算だが。
…後はリザのステータスはそこまで大差もないな。
最初から職業がもう一つあるのが気になるところだが、ギフトに比べたらそこまででもない。
一応身体能力がかなり低めなのが心配ではある。
これは成長前だからとかそういうものは関係するのだろうか?そこら辺はよく分からないから、これから実験してみればいい。
とりあえず、エイラはギフトからして攻撃魔法タイプ
、リザはなんとなく祈祷師という職業があるから、回復タイプなのではないだろうか。
とにかく試してみよう。
「私のステータスはどうだった?」
エイラが聞いてくる。
ステータスオープンには設定が2つあって、詠唱者のみ閲覧と、公開閲覧がある。
今は詠唱者のみ閲覧にしていたので、自分にしか見えなかったわけだ。
「エイラはそうだね…炎魔法を練習してみるか。
ギフトのこともあるけど、なんとなくアニメで言ったら、赤髪のやつは大体炎系使うからな」
「え…?
今なんて言った?あにめ?」
「あ〜ごめんごめん。
俺の独り言。この本を見てくれ、とにかく練習あるのみだよ」
「分かったわ」
「リザは回復魔法や、光魔法を練習してみる?」
「うん!
お兄ちゃんが私を助けてくれたみたいに、誰かを助けたい!!」
あぁ〜良い子だ。
前回疑ったけど、やっぱりこの子に反抗期などないのだ。
もしよければ、一生このままの天使でいてほしい。
「じゃあリザはこの本を読んでね。
その後に2人とも指導するから。まぁ、俺の出来る範囲内だけど」
ギフトのこともあるし、とにかく2人のこれからが楽しみである。
あぁそれと、俺も最近ステータス確認してなかったな、久しぶりに見てみるか…。
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