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仮面夫婦  作者: 彩女莉瑠
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おしどり夫婦

 結婚して4年、僕たちには子供が出来なかった。

 僕は仕事を理由に妻をないがしろにし過ぎていることに気付かないふりをしていた。

 そんなある日、妻が倒れた。




 難病の類だった。




 必死に完治の方法を模索した。

 大学の先生に教えを請うたりもした。

 でも、打開策は見つからない。




 妻は日に日に衰弱していっている。




 ある日妻は言うのだった。


「ねぇ、覚えてる?」


 それは初デートの記憶だったり、結婚式の記憶だったり。

 あぁ、覚えてる。忘れない。

 僕はそう答える。

 そう、忘れてなどいない。ただ、記憶に蓋をしめていただけだった。




 彼女の元気な頃の姿を思い起こす。

 それは付き合い始めの頃の少し恥ずかしそうな顔だったり、怒った顔だったり。

 でもいつ頃からだろうか、結婚して以降の妻の顔は思い出せない。

 それだけ僕は、妻をほったらかしにしていたのだろうか。

 



 今になってそれは後悔となって押し寄せてくるのだった。




 妻にはどんな嘘も通じなかった。

 どこかに嘘発見器でも取り付けられているのではなかろうかと思えるほど、その嘘の発見率は高かった。




 ある日妻は寝ているのか?と尋ねてきた。

 寝ている、と答えると、そんなにも忙しいのか、と問うて来る。

 これはきっと嘘がバレているな、そんなことを思いながらも僕は妻に心配をかけさせたくなかったから嘘を重ねていた。




 そうこうしている内に、妻は殆ど起きなくなってしまった。

 ずっと眠っている彼女の姿を見ているだけで胸が苦しくなった。




 僕は彼女のこんな姿を見るために医者になった訳じゃなかったのに。

 無力さに押しつぶされそうになる。




 そして、先日。

 妻は眠ったまま、逝ってしまった。

 



 苦しまず、安らかな寝顔だった。

 



 僕は苦しくてたまらなかった。

 妻は僕に1冊のノートを遺してくれていた。そこに書かれていたのは、少女のような僕への思いだった。

 



 僕は君のその思いに、応えていただろうか?

 不安にはしてなかっただろうか?

 



 僕も君を愛しいと思っているよ。

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