第八十八集 きも。
9月13日 9:04 1年5組教室
適当に話しとくって言ったけど、なんて話せばいいんだ?
この話は聞かなかったし知らなかった、いいな?とか?
まあ無理があるな。羽澤なら第三班全員連れて来ちゃうだろうし、鬼寅なら任務投げ捨てても来そうだもんなぁ…
「丑崎さん?」
「ん?あー大丈夫だ、何とかするよ。」
「任せっきりですみません、これ私の連絡先なので渡しておきますね。では私は任務に行きますので、あとはよろしくお願いします。」
五十鈴は俺に紙切れを渡し、一礼をして走り去って行った。
何とか、ねぇ…
あの2人をなんとかできたら苦労しないよ…
「呼んだかな?」
「呼んでないよ。」
羽澤が横からひょこっと頭を出した。
「なんで驚かないのよー。」
「知らねぇよ。それよりどうした?」
「魁紀に呼ばれた気がしただけだよ?」
「そっか、なら特になんもないよ。」
いや、ここで先に話しておくべきか。
「ああ待って、明日五十鈴が家に来るからよろしくー。」
「魁紀…もしかして真由ちゃんがいるのに琴里ちゃんにも手を出すの…?」
「いやちげーよ、そもそも鬼寅に手ぇだしてねぇよなんでそうなったんだよ。」
俺が鬼寅に手ぇ出したことなんてなかったろ、あんなの手ぇ出したら逆に殺されるっての。
「いろいろ話があるんだよ、まあ…ちょっといろいろな…」
「それは私が聞かない方がいい話?」
「いや、聞いてもいいけど、巻き込みたくないからな…」
「ふーん、じゃあ話だけ聞かせてもらうよ。」
「悪ぃ、助かる。」
ちゃんと話わかってくれて助かるわ…
「そろそろ行かないとだね、特別指名とかテンション上がるぅ!」
「そうだな。」
俺はあんまし興味ねぇけどな。
だいたいまた1組か、因縁があるわけじゃないけど千代川のやつが面倒くさすぎる。
雪代も雪代だ、いつケツが狙われるか知ったこっちゃない。
「いやいや、久しぶりの出番が来て嬉しいなぁ魁紀!」
そういえばいたな龍太郎。いや、忘れてたわけじゃないぞ。
「お前任務で忙しかったんだろ?仕方ないっしょ。」
「まあな、任務で富士山まで行ってきたからなぁ…」
富士山か、それはそれでいいな。
「いいなぁ富士山、私なんて小田原の田舎の方だったんだよ?」
「おいバカ、小田原民に怒られんぞ。」
羽澤は羽澤で小田原か、俺小田原城1回行ってみたいんだよな。あれ?今小田原城って現存してたっけ?
「私らは鎌倉だったねー、鎌倉ってか大船だけど。」
「残った2班も一緒だしね。」
偶然もいいとこだ、3つの班がほぼ同じところなんて。
「ほら、早く行こ!1組のところへ。」
「よっしゃあ!」
「行っくぜ!」
羽澤に合わせて龍太郎と南江が合わせた。なんでどいつもこいつもテンションが高いのかねぇ。
9:10 1年1組教室
「丑崎魁紀!此処で会ったが百年目!今ころぶはぁっ!!」
「いつまで同じことをやっておるのだ千代川、いい加減にせぬか。」
「おっと!これはまたいいケツが1、2、3、4も!」
相変わらずいつも通りで逆に安心だ。
「で、お前ら3人だけか?他は?」
「お久しぶりだな、丑崎殿。他の皆は特訓に行ってるぞ、任務に行くのは拙者たち3人だけだ。」
「他の奴らはまだまだ実力が足りないからなー、俺ら3人は特別ってわけだはぁぁっ!!何すんだ張璇!」
「同じクラスの皆を侮辱するな、斬るぞ。」
「ひぃっ!!」
なんも変わらねぇな…
「で、任務の場所はどこだ?」
「鎌倉だ。」
また鎌倉かよ。
「鎌倉の藤原邸近くに妖魔が発生したらしい、それの掃討だ。そしてこれは、藤原長政様からの依頼だ。」
ご本人直々とはな、てか護衛いねぇのかよ、そいつにやらせればよかったじゃん。
「つまり、俺らのような精鋭が必要ってわけだ。」
「自惚れるな千代川、拙者たちにこの任務が与えられるだけ光栄なことだぞ。」
「私はまあ5組のみなさんのケツが触れればぐへへへへへ。」
帰ろうかな…
「では参ろう、5組の方々。」
「「おう!」」
10:30 鎌倉 藤原邸前
初めて来たけど、すげーなここ。
壁どこまで続いてんだってくらい広くて、壁には5本の白い線が入ってるってことは天皇家とも繋がりがあるってことか、さすがは藤原家だな。
そしてど真ん中には城って程じゃないけど、そんくらい大きい家が建っている。
「壮観だな、これは。」
張璇も驚きを隠せないでいる。
「では、辺りを探すとしよう。丑崎殿、5組の皆と西側の森を探してくれないか?拙者たちは東側を探して参るので。」
「了解だ。」
全体の指揮は張璇に任せてよさそうだな。こっちは五十鈴がいないことだし。
10:35 鎌倉 藤原邸西の森
「魁紀、足元見てみろよ。」
森に入ると、早速龍太郎が何かに気づいた。
「凍ってるな。」
足元だけではない、ここ辺りの地面全部凍ってる。
もしかして葉月先生が氷漬けにされたのと繋がりがあるのかな…
「魁紀君!上!」
南江の声が聞こえて、後ろに飛んだ。
すると、上からスライムのようなものが降ってきた。
氷のような、液体のような体で、蠢きながら少しずつこちらに寄ってくる。
「きも。」
「「ひぃっ!」」
昨日も同じ声で同じ言葉を言われたからついびびってしまった。ちなみに龍太郎も一緒だった。
「幽奈ちゃん、結構言い方怖いね…」
「だってきもいんだもん、とっとと燃やしたいくらいにはきもい。」
「「こっわ…」」
今度は南江も含めて同じことを言ってしまった。
「ほら、そんなこと言ってないで、燃やすよ!炎呪符・爆!」
俺らを待つことなく、羽澤が先に陰陽を放った。
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