第六十五集 タイプ相性
7月21日 13:20 江ノ島
海坊主、それは海に住む妖魔で、海の怪異。
海に出没し、多くは夜間に現れ、それまでは穏やかだった海面が突然盛り上がり黒い坊主頭の巨人が現れて、船を破壊するとされる。
なのに今、あいつは何に釣られて出てきたんだ?
「みなさん!素手と陰陽で戦える方は今すぐ海坊主の討伐に向かってください!それ以外の方は逃げ遅れてる人の手助けを!」
そう、今日はプライベートで出てきたということもあって、みんな武器は持ってきてない。肌身離さず持ってろとか最初に言われたけど、流石に私服で武器持ってたら警察に捕まりかねない。
だから俺も今は手ぶらだ、酒呑様には留守番を頼んである。と言ってもなにかできる訳では無いけど。
「素手かぁ、俺素手で戦えるわけじゃないんだけどなぁ…」
「何弱気になってんだ魁紀、筋肉が泣くぜ!」
黙れこのゴリラ、お前の筋肉は四六時中大爆笑してんのかよ。
「行っくぜぇ!!俺の筋肉が轟叫ぶ!」
なんかそれどっかで聞いたことあるな、でっかい手のひらが燃えながら飛んでいきそうな感じ。
「ふん!あの筋肉ゴリラに負けてられねぇ、花怨がなくたって!!」
龍太郎もやる気満々なのはいいけどさ、君たち素手で戦えるんですか…?
「グハァッ!!」
「アガァァ!!」
2人は海坊主の手で簡単に払われた、そりゃそうなるわ。
「アホか!そんな簡単に近づけるわけないだろ!」
だから、こういう時は陰陽のみなさんにお任せだ。
「遠距離なら私が!雀呪符・一気通貫!」
羽澤による全属性陰陽の貫通攻撃、相変わらず見た目は派手である。
「ウォォォォォ…!!」
だが、あまり効いてないというより、なんだか怒らせてしまったようだ。
「な、なんで!?!?」
それは俺に聞かれても困る。でも確かに、羽澤のあの貫通力のある陰陽ならば少しでもダメージは入ると思うんだけど。
「ふっふっふっ、みんな分かってないね。」
南江が何故か自信に満ち溢れた言い方をしてる。そういう発言をするということは対処法が分かるってことだな?
「相手が水タイプなら、草タイプの技を使わないと!!」
・・・
「え、なんでみんな黙るの??違うの!?」
「いや、そうじゃなくてだな…」
ここはボールにモンスターを入れたりする世界じゃないんだぞ、はっぱカッターとか出ないんだぞ、まあ似たようなことは出来るかもしれないけど。
「なるほど、そういう事ですか。つまりでんきタイプも効くはず、ということですね、南江さん。」
五十鈴、お前もそっち側だったのか、確かにそうかもしれないけどさ…
「ならもう一度私に任せて!雷呪符・光雷!!」
待てよ、俺らが立ってるここって海だよな?そして海ってことは当たり前だが水があるよな?そして雷って水の中で伝導するよな?つまり…
「羽澤馬鹿野郎!今それやったら全員巻き込むぞ!」
「えっ?あっ!ああああああああぁぁぁ!!」
気付くのが遅い!ダメだ、これはもっかい寝るのを覚悟しなきゃ…いや、気絶の間違えか…
ピカッと光って、術が海坊主に当たる。海坊主は海に消え失せたが、俺たちもみんな海の藻屑となった。
14:20 江ノ島
冷たいな、寒いな、こんなんじゃ風邪引いちまうじゃねぇか、誰か布団くらいかけてくれたっていいじゃん。てか違うな、これは水だな、体に水が当たってる、そりゃ布団もかけられないや、仕方ない。それとさっきあったはずの羽澤の胸はどこにいった、もっと触らせろ。
てかちげぇよ、今そんな状況じゃねぇ。さっき羽澤のやつが馬鹿やって全員気絶したんだった。
「みんな!大丈夫か!」
「はいぃ!魁紀ビリー!」
「は?」
「目覚めるの1番遅いぃ!」
なんだろ、今めっちゃこの筋肉ゴリラをぶん殴りたい気分だ。
「むしろ誰が1番だよ。」
「松永。」
「なんで?」
「にゃーちゃんとずっと一緒にいたからそもそも海に入ってないからな。」
それもそうだ、猫水浸かるの嫌いだもんな。てかそれなら助けろよ。
「みんなを運ぶの、疲れるから、ずっと見てた。」
「にゃーっ!」
ずっと見てたじゃねぇしにゃーっ!じゃねぇ!見てないで助けろよ!クラスメイトだろ!
「というわけで、丑崎さんも無事戻ってきたことですし、これで解散としましょう。次は材木座海岸で開催される夏祭りで会いましょう。」
君にはガッカリだよ総班長さん…
そんなこんなで、海坊主は無事討伐完了。犠牲は…まあ出なかったけど、全員に被害が出た、電気ショックというね。
「魁紀、家に帰ろ!」
電気ショックでやられたからか、少し焦げたな、羽澤。
「おう、帰るか。」
「いいなぁお前らは、同じ家で。俺と琴里なんて隣の家だぞ…」
「同じ家で住むわけないじゃないですか、夢見るのは寝てる時だけにしてください。」
「くっ…魁紀よ…もう俺はここまでのようだ…」
おうそうか、とっととくたばれ〜。
そんな悲しそうにしてる筋肉ゴリラを置いて、俺と羽澤は帰路に着いた。
15:00 帰りの電車
今日は流石に疲れた、特に何かやった訳じゃないけど、殴られたり、殴られたり、電気ショック受けたり、なにかと大変な1日だった。
「今日は大変だったね。」
「そうだな、お前が馬鹿なことするから大変なことになったな。」
「あれは私は悪くないもん、海坊主のせいなんだから。」
物は言いようだな…
でもあれがなければ海坊主はやれてなかったし、結果オーライでいいだろう。
「帰ったらどうする?ご飯作ってあげようか?」
「そうだな、頼むわ。俺タコライス食べたい。」
「家にチーズあったかなぁ…」
「スーパー行って買いに行くか。」
「うん!そうしよう!」
なんだか新婚夫婦みたいな会話に聞こえるけど、これただの同居だからな、勘違いしないように。
17:00 自宅
「「ただいまー。」」
「お前…こんなに買うことなかったろ…」
「だって、目に入ったらつい、ね。」
ついじゃねぇよ…
家の近くのショッピングモールに入ると、食品コーナーに行く前に服屋に行きやがった。そしてそのまま大量の服を購入、その後は食材を買おうにもお金が少ないから最低限の物しか買えなかった。
「あのな、生活かかってるんだから無駄遣いはやめてくれ…」
「無駄じゃないよ!服だって女の子にとっては重要なの!いずれ魁紀もわかるよ!」
俺女の子じゃねぇしわかんねぇよ。
「まあいいよ、ご飯作ってくれ、服は片付けとくから…」
「うん!ありがとう!」
「なあ羽澤。」
「どうしたの?」
「大阪で茨木童子に会った時、あの時はどう思った?」
唐突だったけど、少し疑問に思ったから聞いてみた。
「それはぶっ殺したいほど怒り狂ったよ、だけど怖くて体が動かなかった。あいつのせいで、お母さんと幽基が亡くなったし、魁紀を後ろから刺すようなことになった。どんな事があってもあいつだけは許せないよ。」
それは、俺と同じだな。
「だけど、その茨木童子を操っていた玉藻前は、もっと許さない。この命にかけて、玉藻前だけは私が倒す。」
「おう、それなら俺も同じだ、頑張ろうな。」
「ふん!魁紀なんていなくても私だけで十分だもーん!」
「言ってくれるねぇ、その前にタコライス作って俺を満足させてくれ。」
「あぁ!何様のつもり!?待っててね、この世で1番美味しいタコライス作ってあげるからね!」
前とは違って、かなり落ち着いてる。今の自分と向き合ってる感じがする、俺もそろそろ、じいちゃんと根元先生の事を背負って、自分に向き合わなければな。
次にみんなに会うのは確か材木座海岸の夏祭りか、ええと23日ってことは明後日か。グフフ、みんなの浴衣が楽しみだな。




