第百七十九集 転校生
4月7日 7:30 自宅
期末試験、そして春休みを終え、新学期を迎えた。新学期になるからと言って特に何も変わることは無い、なんでってクラス替えがないから。そう考えるとクラス替えって重要だよなぁ…でも変なやつらと同じクラスになるのもごめんだしな…特に豪とか。
だけどこんな日常も悪くない、何も変化がないってのも良いことだ。だがな…
「なんでお前いるんだよ、鷹取。」
「え、そりゃ魁紀と同じ学校に来たから同じ家にも来なきゃおかしいじゃん!」
「いやおかしくねぇよ、自分の家あるだろ、帰れ。」
「い!や!だ!」
そう、新学期ってことは進級、そんで新入生が入ってくるわけだ。鷹取は任田への入学が決まった瞬間、うちへの引越しを始めてた。今更だが早く帰って欲しい。
「もう諦めなよ魁紀。」
「天音1人増えたところで問題なんてないでしょ。」
羽澤と鬼寅はなんでそれで納得してんだよ…
「ほら、ご飯食べたら行くよ。」
「はいはい。」
2年生か、1年間色々ありすぎたせいで、長いようで短かったな。
8:20 通学路
入学式が先週に行われ、今日が新学期初日だ。それにしてもこれからは4人で登校か、鷹取は1年生の中でも目立つだろうからあんま一緒にいたくないんだよな。
「あのフードの人、任田だよね?」
「先輩かな…?」
なんだか去年も同じことあったな、そんな時に鬼寅を見かけたんだっけな。
すると、丑崎の歩みが遅くなる。
「どうしたの魁紀?」
「いや、なんか校門前にやたら高級そうな車が止まってるんだけど。」
「本当だわ、貴族でも来てるのかしら。」
「入学式の時にあんなの見なかったなー。」
「結構野次馬がいるし、私たちも見に行ってみようよ!」
「なんでそんなにノリノリなんだよ、こういうのは関わったらめんどくさくなるって決まってんだよ。」
そう、触れぬが仏ってやつだ。って、3人とも行っちゃったよ、なんでだよ!
野次馬するほど見たいもんか?たまにある黒塗りの高級車じゃん。それにしてもさっきよりざわついてるな、なんだなんだ。
結局気になって野次馬になる丑崎であった。
ちょうど丑崎が近づいた時に、車のドアが開き、中から外国人らしき女性が出てきた。
綺麗な人だ…あんなに白い肌、そんであんなに綺麗な金髪初めて見た。てかうちの制服じゃん、新入生かなんかかな。
「ちょっと魁紀ぃ?今見とれてたでしょ。」
「は、羽澤!?そ、そんなことないぞ!あんな綺麗な外国の女の子初めて見たってだけだから!」
「それを見とれてるって言うのよ、もう。」
野次馬してたんじゃねぇのかよ…
「悔しいけど、魁紀の意見には同意だよ。あんなに綺麗な子今までに見たことない。」
「新一年生かな、先輩と同級生であんな人いなかったし。」
「そうかもね。でも日本人以外で妖気を持ってるなんて珍しいね。」
「そうだな、体質なのか妖刀かなんか拾ったのか。」
日本人が妖気を持って生まれたり、後天的に妖気を得ることは不思議なことではない。だが外国において妖気を持って生まれることはかなり稀である。
そもそも妖魔が日本と中国以外で発生することはなく、発生したとしても現地の妖気を持ってない人間でも簡単に対処できるほどである。したがって外国人で妖気を持って生まれたところで、あまり意味がないのだ。
「わざわざ任田を選んで入ってくるなんて趣味悪いな。」
「それだと私たちが趣味悪いみたいじゃん。」
「俺はここ以外選択肢がなかったの、だから俺は違う。」
「何それ、私だってここしか無かったんだもん。」
張り合うことじゃないだろそこ。
「「おおおぉぉぉ…」」
そらみんなおおってなるよな、あんな綺麗な人が歩いてったら。まあ俺には関係ねぇけど。
「行こうぜ、もうお嬢様っぽいやつに関わるのはごめんだ。」
「ちょっと魁紀、待ってよー!」
お嬢様は鬼寅と相馬だけでもうおなかいっぱいだ。
8:50 任田高校 2年5組教室
2年生でも同じメンツ、同じ席、唯一変わったのは教室が5階から4階になっただけ…うーん…
「何も変わらないね。」
「そうだな…」
今がどういう状態かと言うと、後ろに振り向いて梁の机にうつ伏せになっているところだ。
「せめて席替えがあればな…」
「班で1列にならないといけないからね、仕方ないね。」
「茨木童子in根本先生の時の話だからもういいじゃん…」
「チーズinハンバーグじゃないんだから…」
「チーズinハンバーグのないハンバーグプレートはもういいじゃんって話だよ。」
「もう何も分からないや…」
野菜しかないハンバーグプレートなんてただの野菜プレート、そんなの俺は嫌だね。何の話だよ。
「ようおまんら、全員無事に2年生になってわしゃ嬉しい、2年生になってもよろしゅう頼むわ。勉強、訓練、任務、どれも怠ることないようにっと、言わなきゃならんことはこんくらいかの。」
葉月は持ってる書類を放り投げた。
「早速じゃが、この度なんと、わしらのクラスに転校生が来ることになった。それに合わせて、ずっと同じ席順じゃとつまらんじゃろ、席替えを行う!」
「「おおおおおおお!!!!」」
おおおおおおお!!!きたあああああああ!!!
それと転校生きたあああああああ!!学校生活においてかなりのレアイベント!いやウルトラレアイベント!
「転校生はまだ職員室でいろいろ準備してるところじゃ、今のうちに席替えをやるぞ。」
よっし!壁側から離れるのは名残惜しいけど、環境が変わるならよし!
「ほんじゃ席の番号がこれ、くじがこれじゃ。どうしようかのう、出席番号順で引くか班順で引くか…じゃあ出席番号順で引きに来い。」
出席番号順よし!俺は5番、引きたい席を引ける確率が高い!
「一応交換は無しじゃ、もしやったら、分かるな?」
「「はい!」」
やめて、こういうとこで殺気出さないで…
そうして、5組全員順番にくじを引き、その後荷物を動かし、新たな席順となった。
完璧!窓側!1番後ろ!勝った!だが強いて言うなら…
「やったね魁紀!前後だよ!」
前に羽澤がいるのか…
「魁紀、涼子、おまんらの間の席に転校生が座る、仲良くしてやってくれ。」
「「はい!」」
隣に転校生か、まあまあよしとしよう、仲良くなれるなら願ったり叶ったりだ。
「ほんじゃそろそろ来る頃合いじゃ、適当に待っちょれ。」
その瞬間、ドアをノックする音がした。
「言ったそばからなんとやらじゃ、入っていいぞ。」
ドアが開き、入ってきたのは、まさに丑崎たちが朝見かけた外国人の少女だった。
おいおいおいおい、あの子うちのクラスの転校生だったのかよ…でも近くで見ると改めて思う、めちゃくちゃ綺麗だ。
「自己紹介を頼む。」
「ダコール、葉月先生。」
ダコール?何語だ?
「ボンジュールみなさん、初めまして、私はレオナ・ボナパルトと申します。気軽にレオナと呼んでくれると嬉しいですわ。父の仕事の関係でフランスから日本に来ました、よろしくお願いしますわ。」
お嬢様だ…口調的にも見た目的にも…なんでこうもお嬢様が身の回りに多いんだ…!
「レオナ、席は1番後ろの空いてるところじゃ。右にいるのが魁紀、左にいるのが涼子。わからんことがあったらその2人に聞け。」
「ダコール。」
ボナパルトはゆっくりと歩き出し、席に着いた。
「よろしくお願いしますわ、魁紀さん、涼子さん。」
「うん!よろしくね!」
「あぁ…よろしく…」
全くよろしくない新学期の始まりであった。
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