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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
184/193

第百七十三集 隠殺童子 伍

  1月22日 8:55 稲荷山 三ツ辻


  「猿、適当に突っ込んで来てください。」


  「ほなお言葉に甘えて。」


  申喰は小戌丸の言う通りに、何も無いところに突っ込み始めた。


  「なんだなんだ?猿みたいな見た目になって頭おかしくなったか?」


  「さっきみてぇに邪魔も入らねぇ、とっとと殺されろ!魔妖術・絶殺刃(ぜっさつじん)!」


  「猿!右後ろです!」


  「そこか!ほんでその妖術、タネはこれやろ!」


  そう言って申喰は右後ろに振り向き、自分を守るように双刀を左上に構えた。


  すると双刀に何かが弾かれた音を発し、絶殺刃は消えた。


  「危ないところやったで、申気の状態でやっと反応できるってとこやな。」


  「何故だ!何故防げるのだ!」


  申喰家の申気(えんき)は、身体能力強化はもちろん、使用者の反射速度を上昇させる。それによりどんな行動に対しても、見て、感じてから直ぐに反応することができる。


  「自分のその妖術、飛ぶ斬撃って言うより、遠くで斬って近くで斬撃が発生するパターンやろ。せやったら気づいたタイミングで構えれりゃ防げる、簡単な話や。」


  「それを言うならオイラの指示に感謝して欲しいんですけどね。」


  小戌丸家の戌気(けんき)は、五感の強化。生まれつきの鼻の良さだけでなく、視覚や聴覚なども強化され、それだけで妖気の流れを感知することができる。


  「うっさいわ犬、わしの反応のおかげや。」


  「ま、まぐれだ、まぐれに決まってる!」


  「ほなもういっぺんやってみ、結果は同じや。」


  「殺してやる、殺してやるぞ!」


  「「魔妖術・絶殺刃(ぜっさつじん)!!」」


  今度は2体同時に絶殺刃を繰り出す。


  「猿!今度は!」


  「犬、なんも言わんでええ、こういうやつらのやりたいことは大抵こうや。」


  申喰は両手を横に広げ、斬撃を弾いた。


  「単細胞すぎるんや、優位に立っとるやつらは大抵歯茎出して攻撃が大雑把になる。そないな攻撃がわしに通じるわけないやろが。」


  「バカな!俺たちの血界内だぞ!」


  「クソがァ!何故大人しく殺されねぇんだ!」


  分身体は怒りのあまり、姿を現した。


  「なんや、自ら出てくるとは有難いのう。申喰二刀流・猿捕茨(さるとりいばら)!」


  申喰は片方の分身体に向かっていった。


  「そんな攻撃!」


  だが申喰の攻撃は片腕で防がれた。


  「それでええ、次はお前や!申喰二刀流・猿捕茨(さるとりいばら)!」


  「お前ぇぇ!!!」


  「なめてんのかてめぇ!!」


  「おっと、オイラを忘れられては困りますね。」


  先に攻撃を受けた分身体がすぐさま反撃に出るが、小戌丸が片手で受け止めた。


  「邪魔だぁぁ!!」


  「さすがに左手だけじゃ力不足ですか…ですが!哮天絶吠(こうてんぜっこ)!!」


  小戌丸は剣を地面に突き刺し、分身体を吹き飛ばす程の衝撃波を放った。


  「片手でようやるやんけ犬、ちょうど効き目が出るところや。」


  「何故だ…!体が動かねぇ…!」


  「何故そうなったんかは、死んで考えとくんやな!申喰二刀流・双猿轟牙覇(そうえんごうがは)!」


  申喰は空中に飛び上がり、一回転しながら双刀で薙ぎ払った。


  「くそがっ…」


  「覚えておけよ…お前ら…」


  分身体たちはそう言い残して、塵となって消えた。


  「雑魚みたいなセリフやなぁ、歯茎出した自分らを呪え。」


  「よかったです…猿…」


  小戌丸はなんとか立っていたが、出血多量のため、その場で倒れた。


  「せやけどようやったで犬、っておい犬!!この出血量…無茶しやがって、また貸し1つやな。」


  申喰はそのまま小戌丸を背負って、稲荷神社前へと向かった。


  8:45 稲荷山 四ツ辻上空


  四ツ辻上空では、血界内で巳扇と分身体が空中戦を繰り広げていた。


  「ちっ、相性が悪ぃな女!」


  「それはこちらの(だい)()です、近くに来て頂けないので決め手に困っております。」


  分身体の姿と攻撃は見えないが、巳扇の神楽による石化が当たれば勝機は見えてくる。だが結局姿が見えないから、無闇に動くことも出来ない。


  それを分身体はわかっている上で斬撃を飛ばすが、斬撃すらも石化してしまうため、巳扇に攻撃を当てることが出来ない。


  「はぁ…あまり自ら攻めるのは好みではありませんが、行きますよ、数珠丸。」


  防戦一方の巳扇、攻めの構えに出る。

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