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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
181/193

第百七十集 隠殺童子 弐

  1月22日 8:35 稲荷山 一ノ峰


  丑崎は童子切を抜き、酒吞童子の力を解き放った。


  「じじいの力を出しても無駄、無駄だ!魔妖術・隠鎖殺(いんささつ)!」


  隠殺童子は姿を消した。


  「見えてんだよ!丑火激損(ぎゅうかげきそん)!」


  「まあそうだろうな!その変な眼鏡(めがね)で俺の妖気を見てんだろ?昨日はそんなもん付けてなかったもんなぁ!」


  さすがにバレてるか...だがそんなことは想定済みだ、今はとにかく早くこいつを!


  「なんで俺が隠れるのが上手いのか教えてやろう!」


  「妖気が...消えた...!」


  「そうだ!俺は俺の妖気の気配を消せるのさ!だから誰にも悟られない!誰にも捕らえられない!」


  どこだ...あいつはどこにいる...!


  「さあて、ネタバラシも済んだし、そろそろ瞬殺と行こうか!!魔妖術・瞬殺刃(しゅんさつじん)!」


  丑崎は見えない無数の斬撃によって切り刻まれていた。


  「おいおいおいおい!こんなもんじゃないだろうな!本当に瞬殺できちまうぜぇ?ははー!!!」


  何も見えねぇしわからねぇ...斬撃自体の威力はそうでもないけど、これを受け続けたら...!


  「終わりだ!魔妖術・滅殺刃(めっさつじん)!」


  丑崎には見えないが、黒く、そして紫の禍々しい斬撃が放たれていた。


  「どこだ、どこからだ!」


  「派手に、派手に殺されな!!」


  「ぐあああああああ!!!」


  斬撃は丑崎の背中に直撃し、丑崎は森の奥へと吹き飛ばされた。


  8:30 稲荷大社 本殿


  本殿ではその後、隠殺童子が血界を展開し、午上は血界に捕らわれていた。


  「魔妖術・隠鎖殺(いんささつ)!」


  「さっきは見えたのに、今は見えねぇ!どこだ!」


  「まずはその変な眼鏡から殺そうか!魔妖術・連殺刃(れんさつじん)!」


  「どっから来る!妖気見えねぇのマジガン萎えなんですけど!うああああ!!」


  連なる斬撃が午上に当たり、吉留にもらったモノクルが破壊された。


  「亜香梨ちゃんがせっかく作ってくれたってのに…!ぜってぇ泣かす!午神(うまがみ)裟瑪倶(さばく)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の熱誠(ねっせい)。泣かせ、午気(ばき)!」


  午上家の午気は、他の十二家の神獣気とは違い、その時の使用者の感情に左右される。任田祭では松永を、先日の長壁姫との戦いではみんなを守りたいという感情が午上にあったため、午気は守る力として使われた。


  そして今、午上は泣かせと叫んだ。つまりここからの午気の力は、攻める力として発揮される。


 馬の特徴として耳と尻尾がオーラとして現れ、赤い午気のオーラが午上を包む。


  「さっきみてぇに痛えだけで済むと思うんじゃねぇぞ!」


  「それはまた俺に攻撃が当たればの話だ!」


  「絶影奔流(ぜつえいほんりゅう)。」


  午上は一瞬にして姿を消し、血界の中央上空まで移動した。


  「赤怒嵐閃光(せきとらんせんこう)!!」


  午上は上空から無数のムチによる打撃を繰り出した。


  「そんな適当な攻撃が当たるわけねぇだろ!」


  「数打ちゃ当たるんだよ!」


  午上が言ったように、赤怒嵐閃光(せきとらんせんこう)の1発が偶然分身体を捉えた。


  「がぁっ!!」


  打撃が当たったことにより、分身体が姿を現した。


  「そこだな!!赤怒瞬閃光(せきとしゅんせんこう)!」


  今までのどの打撃よりも、数段速く、かつ重い一撃が分身体の右腕に当たる。当たった右腕は皮膚が裂けるどころか、完全に吹き飛んだ。


  「人の体じゃ再生もそんな早くねぇだろ!」


  「ナメるなよ、ナメるなよ女ぁ!」


  分身体の吹き飛んだ腕が、すぐさま再生した。


  「玉藻前様から力を頂いてんだ!こんなのが通用すると思うな!魔妖術・隠鎖殺(いんささつ)!」


  「ちぃ!また消えやがって!」


  「お前には絶望的殺戮を下してやろう!魔妖術・絶殺刃(ぜっさつじん)!」


  分身体の繰り出した絶殺刃は、今までの飛ぶ斬撃とは違い、斬撃を飛ばさず対象を斬る。対象はただ斬られたことに気付くことしかできず、斬られた方向等を視認することはできない。


  「ぐはっ…!」


  「良くも俺の腕を飛ばしてくれたな!今度はお前の腕を切り落とすぞ!魔妖術・絶殺刃!」


  間一髪で、午上はムチを右腕に巻き付けると、弾かれた音がする。


  「運のいい女だ…」


  「なるほどね、避けてても無駄、自分の身を隙間なく固めないとその攻撃は防げないってところか。ダルすぎでガン萎えなんですけど。」


  午上は頭を掻きながらボヤいていた。


  「午気使ってる今他の技は使えねぇし、仕方ねぇか。アゲてくよ!赤怒乱閃光(せきとらんせんこう)!」


  午上は再びムチの乱れ打ちを始めた。


  「さっきみてぇな偶然はもう起きねぇぞ!」


  「いいや、今度は必然だ!」


  先程と違い、午上は同じ場所に向かってムチを打っていた。


  「さっきの打撃でお前にあたしの妖気を少し付けた、お前の妖気がわからなくても、あたしの妖気なら感じ取れる!」


  「くっ、さっきの打撃でか!だが、だがだが!当たらなきゃ意味ねぇよな!!」


  分身体が言うように、午上の打撃は分身体に当たらなくなった。


  「終わりだ女ぁ!魔妖術・絶殺刃!」


  斬撃により午上の体に無数の切り傷ができた。だが午上は止まることなく、上空から分身体に襲いかかる。


  「絶影奔流(ぜつえいほんりゅう)!」


  午上は更に加速し、一瞬で分身体の近くまで接近した。


  「ここだ、ムチが1番強く打てる場所!赤怒(せきと)卍閃光(まんせんこう)!」


  ムチによる4連打、音速を超える打撃は分身体の両腕、首、左足に当たり、分身体は塵となって消えた。


  すると血界も消え始め、明るい空が見え始めた。


  「つっかれたーー!もう無理、体のあちこちが痛いし、もう最悪!そうだ、亜香梨ちゃん近くにいるだろうし来てもらおうっと。亜香梨ちゃん?こっち終わった!今すぐ来れなーい?」


  午上は無線で吉留に声をかけるが、応答は無い。


  「ちょ、無視とかガン萎えなんですけど、亜香梨ちゃん?」


  何度声をかけても、応答は無い。


  「亜香梨ちゃん?亜香梨ちゃん!!」

 

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