表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
175/193

第百六十四集 自己犠牲

  1月21日 11:00 食堂 松ノ間


  巳扇との散歩から帰ってきたはいいが、思ったよりだいぶ長い2度寝をしてしまった…幸い食堂は常に空いてるから、ちょっと遅めの朝食を食べるとしよう。


  「あんたも遅めの朝食か、丑崎。」


  「げ…あっ…そうだ、朝は早起きして訓練をしたから、食べるのが遅くなってな。」


  「今げっつったろ、聞こえてんだよ。」


  「ごめんて…」


  そら急に金髪ギャルに後ろから声掛けられたらビビるでしょ。


  「あたしをなんだと思ってんのよ…まあいいや、せっかくだし一緒にご飯食べよ。」


  「お、おう。」


  「なんでそんな身構えてんだよ。」


  「いやほら、あんま話したことないから。」


  「同じ十二家なんでしょ、気ぃ使い過ぎだよ。」


  午上って意外と話しやすいタイプ?人は見た目で判断してはいけないって改めて納得した。


  午上に続いて、丑崎も同じテーブル席に座った。


  「そういえば、あの子はあの後どうなったの?」


  「あの子って?」


  「猫又使いの子よ。」


  「ああ松永か、午上のおかげで大事(おおごと)にはならなかったよ。」


  まだ任田祭のこと気にしてたのか、案外優しいとこあるじゃん、見た目に反して。


  「蘭。」


  「はい?」


  「あたし午上って呼ばれんの嫌いなのよ。」


  「あっそうなのね…」


  好みの問題かよ…女の子の下の名前呼ぶの苦手だって…


  「大丈夫なら安心した、あのまま猫又に呑まれたらたまったもんじゃないよ。」


  「松永の状態が見えてたのか、すげえな。」


  「感覚で、だけどね。ほんっと、自己犠牲は勘弁して欲しいんだけど、マジサゲって感じ。」


  なんだサゲって…俺今日連チャンで日本語話せない女子と会話しなければならない罰ゲームでも受けてんのかな。


  「あのクソ坊主もそう、何が下がっていなさい!童たちよ!だ!冗談は頭だけにして欲しいんだけど。」


  「なんでそんなに自己犠牲嫌ってんだ?」


  「自分だけが犠牲になればあとは丸く済むって思い上がってるのが嫌なわけ、わかる?自己犠牲されて残されたこっちのことも考えろっつーの。」


  なんで俺が怒られてるみたいな感じになってんだろう…


  「昔ね、大好きだった叔父が任務で亡くなったんだけど。任務に行ったのが5人で、叔父1人だけ亡くなって他全員無事に帰ってきたの。そんでなんで叔父が帰って来ないか他の人に聞いたら、叔父は身を呈して他のみんなを守ったって。ふざけんなよって思ったわけ!なんで叔父だけが自分から犠牲にならねぇといけねぇんだよって…こっちは帰ってくんの待ってんのに、また遊ぼうって約束したのに!」


  これ聞いていい話なのかな…テンション上がって喋ってくれるのはいいんだけど…


  「だから勝手に自己犠牲するなんてあたしが許さないから、そんなサゲぽよなことするならあたしが殺す。」


  「あ…はい…」


  サゲぽよってなんだろう…


  「ま、いろいろ話したけど、もっとみんなのこと考えてって思うわけ。あの時の猫又の子もそう、今回のクソ坊主もそう、こっちからしたらそんなこと望んでないっつーの。」


  とりあえず、こいつは優しいやつだってのはよく分かった。優しいけど怖い、そういうタイプだ。


  「そんで、朝何訓練してたん?」


  急に話戻ったな。


  「浮遊。」


  「マ?」


  「なんて?」


  「そマ?」


  「だからなんて?」


  「それマジで?ってこと、なんでわかんねぇんだよ。」


  なんでこんなんでキレられるの…


  「この後あたしにも教えて欲しいんだけど!時間あるよね、今日休みだし。よーっしマジアゲぽよなんだけど!」


  あぁ…会話が成り立たないよぉ…同じ日本人なのになんでこんなにも言語が違うんだよ…


  それとみんな向上心があるのはいいけど、浮遊って割と疲れるからもう今日やりたくないんだよなぁ…


  「ご飯食べたら直ぐにやるよ!人多いとあれだから…じゃああたしの部屋で!」


  「おい落ち着けって。」


  「早く食べて!時間がもったいない、わかんない?」


  だからなんで俺がキレられるてるの…


  「わかった!わかったから!」


  俺にまともな休日って存在しないんかなぁ…


  この後、朝の巳扇同様、午上の部屋にて2人で浮遊の訓練をするのであった。


  12:00 大浴場 浴ノ間


  あぁ…疲れた…もう妖気持たねぇって…こんな真昼間から風呂に入る予定なかったよ…てかそもそもこんなに疲れる予定もなかったよ…


  それにしても、まさか午上…蘭の昔の話を聞くことになるとはな。


  自己犠牲…か…ダメだとは言わないけど、それで助かってる人もいるわけだから、状況によって考えが変わる。蘭の場合は自分が知ってる範囲において全部許さないって感じだろうね、じゃないとあの時松永のこと助けてないだろうし。


  こう考えると十二家って色んなやつがいるな、まだそんな関わったことないやつのが多いけど、どっかで全員世話になるだろうね。


  「さてと、部屋戻って寝るか。」


  15:00 湯の宿・京 505号室


  ブルブルブルブル…ブルブルブルブル…


  うるせぇな…人が昼寝キメてる最中になんだ…吉留さんか…どしたんだ…


  「はい、もしもし。」


  「丑崎さん!今すぐ会議室に来てください!」


  ガチャ…


  めっちゃ急用じゃねぇか!


  15:03 2F 会議室


  吉留に丑崎、そして他4人も会議室に集まった。


  「唐突な訪問、お許しなされ。拙僧、慈心と申す者でございます。」


  なんでここにいんだよ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ