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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
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第百六十二集 妖気とは

  1月20日 13:00 湯の宿・京 会議室


  その後、丑崎を除いた5人は先に旅館に戻っており、丑崎も吉留から連絡をもらってすぐに旅館に戻った。


  「丑崎さん、あの人は一体なんだったのですか?」


  「酒呑様の昔の知り合いらしい。たまたま通りかかったらドンパチやりあってたから、止めに入ってくれたって。」


  「昔の知り合いやったら妖魔確定やんけ、でもおかけで助かったわけやしなぁ…」


  「そうですね、害が無ければ無理して倒す必要もないですしね。」


  「あの光をくらってたら死んでただろうね、午気使ってても耐えれたかどうか…」


  「生きてるからいいじゃないですか、みなさん無い事で済みましたし。」


  まあ当初の目的の慈心は逃がしちゃったけどな。


  「はぁ…ともかく皆さん無事でよかったです…もうハラハラしましたよぉ…」


  吉留は疲れからか、床に座り込んだ。


  「血の(さかい)では助かりましたよ吉留さん、良い()(しめ)しでした。」


  「今日明日は休みとします!ゆっくり休んでください!!」


  やったぁ…俺はもう疲れたよ…


  「慈心についてはこちらで調べます、長壁姫も追えたら追ってみます。では今日は解散です、お疲れ様でした。」


  「「お疲れ様でした。」」


  とりあえず部屋戻って寝よ…なんでよりにもよって長壁とやりあわなきゃいけないんだ…それよりも、長壁にあんな血界が使えたとはな。酒呑様との入れ替わりも封印されて何もできなかった、ああいう場面で浮遊できたり、空中で動ける手段があればな…


  14:00 湯の宿・京 505号室


  もっと鍛錬しないとな、長壁や大嶽丸と戦うにはまだ力が足りなさすぎる。かと言ってどう鍛錬すればいいのか、今師匠の所には行けないし、近くにめちゃくちゃ強い人もいないし、誰に教えを乞えばいいのかなぁ…


  ふと、椅子に置いた童子切を見る丑崎。


  あっ、めちゃくちゃ強い妖魔ならいたわ。


  (酒呑様、俺を強くしてくれ、いや強くしてください、お願いします。)


  (唐突になんの真似だ気持ちが悪い。)


  (いやぁあんな強いやつらを目の当たりにしてさ、自分がどれだけ弱いか実感したよ。)


  (あやつらが強いか、カカッ!まあお前からしたらそうであろうな、そう見えるのも仕方あるまい。良いか魁紀、強さとは経験、すなわち時間。限りなく永遠に生きる妖魔にとってそれは些細なこと、時間は無限にある、己の力に向き合えば強くなるであろう。だから弱くとも良い、伸びしろがあるというものよ。)


  そりゃそうだよな、妖魔は鍛えようと思えばいくらでもできるわけだから。あとはやる気次第なところもあるけど、あいつらはちゃんと鍛えてあの強さを手にしてるわけだから、そこに関しては見習わないとな。


  (だが魁紀よ、教えるは良いが、我は人間の戦い方に詳しいわけではない。ゆえにお前には妖魔の戦い方を叩き込もう。)


  (妖魔の戦い方?)


  (お前、今まで散々戦っておいて気づかなかったなどほざくまいな?)


  (いやぁ常に必死だったから気づかなかったよーあはは。)


  マジで?そんなに違うの?


  (はぁ…まあよい…妖気とはなんなのか、考えたことはあるか?)


  (妖魔から生まれた力の源で、今となっては人間が生まれつき持っていてもおかしくはないやつ。)


  (大雑把ではあるがだいたいそんなところだ。つまり我ら妖魔が1000年以上も前から持っている力のことよ、さっきの強さの話にも繋がるが、それだけの時間を妖気と向き合ってきたのだ。ゆえに妖魔が人間より強いのは当然のことよ。)


  それは考えたこと無かったな、生まれつき十二家に生まれて、妖気持ってて、そんでなんか知らんけど童子切持たされて今に至るわけだ。それで自分のことはともかく、妖魔が人間より強いなんて考えもしなかった。


  (そこで、今のお前に足りぬことを教えてやる、妖気の使い方よ。)


  (学校で教わった流したり纏ったりするだけじゃダメってこと?)


  (そんなこと初歩も初歩よ、そこら辺の餓鬼でもできるわ。例えば、此度は浮遊する必要があったであろう?あれは足元に妖気を溜め込んで濃度を増やす、濃度の高い妖気の圧力で体が浮かび上がる、そういう仕組みよ。だが人間の妖気限界なぞたかが知れておる、長時間にわたって妖気を放出するのは無理であろうな。)


  思ったより論理的な説明だった…水圧に押されて人が海の上に浮かぶとかああいうのと同じ理論なのかな。


  (試しに今やってみよ、部屋内ならば誰かの邪魔になることもあるまい。)


  (おけ、やってみる。)


  足元に妖気を溜めるイメージ…


  丑崎は全神経を使って、足元に妖気を流し、纏った。


  (そのままだ、どんどん足元に溜めろ。)


  すると徐々に、丑崎の体が浮かび上がる。


  (おおすげぇ!!浮いてる浮いてる!!)


  (喜ぶのはまだ早いぞ、そのまま維持してみせよ。)


  すげぇなこの感覚、マジで浮いてるよ俺。でもなんか辛いな、頭に血が上ってない感じがする…


  (徐々にキツくなってきたであろう?それが今のお前の限界だ。慣れれば我の妖気が無くともしばらくは空を飛ぶこともできるようになるであろう。)


  (なかなかしんどいなこれ…でもできるって分かると楽しくなってきた!)


  (人間はそういう風に思うのだな、まあよい、次だ。おおたけ…じゃなかった、武本が片手で長壁を抑え付けた瞬間があったであろう?あれはまず空中で妖気を足元に溜め、溜まった妖気を蹴る。それと同時に妖気を爆ぜさせ、飛ぶ力を増幅させる。さらには自身を分厚い妖気で包んで自分が傷を負うことも防いでいる。片手で長壁を抑えられたのも、妖気の押し合いで長壁が負けたからだ。)


  あんな一瞬の出来事を一つ一つ細かく言語化できる酒呑様もやばいな…


  (妖気ってそんなに便利なものだったんだな…)


  (お前が知らぬのも仕方ないことよ、今のように人間が妖魔に教えを乞うことなぞなかったからな。)


  なるほどな、今までは妖気で陰陽だったり妖術を使ってきたけど、そもそもの使い方ができてなかったんだな。


  (教えるのはここまでよ、あとは自分で考えるのだな。我はもう寝る。)


  すぐ寝るなこの人。


  (ありがとう、なんかやれそうな気がしてきた。)


  (カッカッカッ!精進せよ。)


  初めてだと思うけど、ちゃんと妖気と向き合わないとな。

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