第百六十集 光と祈り
1月20日 10:40 東福寺
なんだ、あの目は…禍々しいだけじゃねぇ、何かを吸い取ってるような…
「皆さん!城から攻撃が来ます!構えて!!」
吉留の掛け声に全員が反応し、武器を構えた。
「なんや?ツタ?触手か?」
「どう見ても蔓ですよ!」
城から蔓が伸びるってどういう状況だ…!
「くっ…!蛇眼!」
巳扇が蛇眼を放つが、蔓は石になることなく、進み続けた。
「律!危ない!!」
巳扇を庇った午上だったが、一緒に蔓に捕まった。
「丑火凄斬!」
植物なら燃えるだろ…!
「そのような攻撃が効くと思いまして?甘いですわ。」
丑崎は炎の攻撃を放つが、蔓が燃えることはなかった。
「クッソダメか!!」
蔓は止まることなく、全員にまとわりつき、拘束した。
全く動けねぇ…てか棘生えてるから痛え…!
「嘆かわしい…未だに妖魔がこうも童たちを傷つけるなどと…!断じて許す訳には…!ぬん!」
慈心から光の衝撃波が生まれ、蔓が剥がれていく。
今何したんだ慈心やつ…!え、なんであいつ空中に浮いてんだ…!!
「妖魔がどうとかおっしゃっていましたが、自ら妖魔の力を使うとはどういうおつもりでしょうか?」
「拙僧はすでに破門となった者ゆえ、今更こだわる必要はありません。妖魔を葬るのであれば、使う力がどんなものかなど些細なこと。」
「ふふふ、妖魔の力が使えても、私の相手にはなりませんわ。時期に思い知ることになるでしょう。」
「拙僧を甘く見ないでください!」
浮遊していた慈心が天守閣の目に向かって飛び込んだ。そして左手を胸の前に構え、目を閉じた。
「法術・慈悲の光。」
慈心の薙刀に光が纏った。
「覚悟!!」
「小さな光ですこと…身構える必要すらありませんわ。」
長壁姫はただ冷たい目で慈心を眺め、城から伸び出る蔓で叩き出した。
「まだまだ…!!」
慈心は空中で受け身を取り、再度天守閣に向かって飛び出した。
「小さな光だとしても、闇を切り払うには十分です!」
「私の宵闇を、その小さな光で払えると思いまして?」
「やってみなければ、わかりません!!法術・真言の導き!」
慈心から天守閣まで、光の道が生成された。
「光は…祈りは…どこまでも届きます!魔妖術・光翼聖螺!」
慈心の薙刀から、光の螺旋が繰り出された。
「しつこい男は嫌われますわよ、本当の光というものを見せて差し上げますわ。」
天守閣の目が光り輝き、震え出す。そして辺りの妖気を吸い込み始め、慈心の光の道、そして光の螺旋もまた吸い込まれた。
「なんですと…」
「己の身の小ささを感じながら絶望してくださいませ。」
目の震えは徐々に強くなり、何かを放とうとしている。
「おい、あれは流石にやばいで!!」
「さっきの慈心を見た感じですと、蔓は光に弱いのかもしれません!」
「確か蘭さんが光の呪いの符と妖の術が上の手でしたよね?」
「やるだけやってみる!午神の裟瑪倶よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の熱誠。守れ、午気!」
光輝く午神のオーラが午上を包む。すると午上にまとわりついていた蔓が消えていく。
「これなら自由に動ける、光呪符・照!!」
午上の放った光呪符に午気の力が上乗せされて、捕まった全員の蔓を消すことができた。
「逃げれるやつは全員逃げろ!」
「無茶言うなや!空中やぞ!」
「攻撃の反動でなんとかするしかなさそうですね…!」
「できる限り蛇眼で止めます、皆さん今のうちに!」
「さあ皆様、是非人の身で私に抗ってくださいませ。魔妖術・宵闇城郭大明星。」
「いけません!せめて童たちだげでも!法術・蓮華の守り!」
慈心は蓮華の花の形をした円陣を展開した。
「死ぬなら拙僧だけでよろしい!」
「そう思えるのでしたら、ぜひそのまま守っていてくださいな!」
天守閣の目から、広範囲の光が発射された。
「冥土の土産に教えますわ、この光を浴びても死にはしませんわ。ですが死なないだけで、体がどうなっても保証はしませんわ!」
さすがにやべぇ…手が出ねぇ…!
(酒呑様!これどうにかできるか!?)
(悪いが魁紀よ、変わりたいところではあるが、あの女の血界のせいで変わることができん。おまけに力も万全に使うこともできぬ、妙な血界よ…ともかく魁紀よ、血界が消えるまで気を確かに持つのだ。)
(できるとこまで頑張る…)
光はもうすぐそこまで来てる…覚悟決めるしかねぇのか…
「当初の目的に十二家が5人、上々の結果でございますわ。さよならですわ、皆様。」
「玉ちゃんとこの人形ごときが、出しゃばりすぎだ。」
血界が空から壊れ、1人の男が飛び込んできた。