第百五十五集 罰ゲーム
1月13日 11:00 清水寺
1人で来たわけだが、どうするかねぇ…
「なんで丑崎1人なんだよ。」
「他のお2の人はいないのですか?」
「まあ…いろいろあってな…」
「お2人がいないのは丑崎さんの了承の上だと聞いておりますので、今日は4人で捜索に出ましょう。」
言ってたのか…さすがに吉留さんが事情を知らないと監督役として上の人に怒られるんだろな。
「じゃあ俺は稲荷大社の方に向かいます、隠れ場所として使われてるかもしれないので。」
「でしたらそうですね、私も同行しましょう。」
「いえ、1人で行くっていう罰ゲームなんで、1人で行きます。あっ…」
勢い余って言ってしまった。
「しょうもねぇことやってんなぁ。」
「しょうもないことやってますね。」
「はぁ…わかりました…何かあったらすぐに連絡してください、でも無茶だけはしないでくださいね。」
「はい、わかってますよ!行ってまいります!」
さてさて、行くか。
11:40 稲荷大社
デッケェ鳥居だなぁ。
実際に稲荷大社に来るのは初めてだ、中学の修学旅行はそこまで自由時間長くなかったからな、全然回れなかったんだよな。
「うおぉぉこれが千本鳥居ってやつか、すげぇ!」
こんなん見せられたらつい観光気分になってしまう、だってこんなみっちり鳥居建てることあるか?ないでしょ!夜とかに来たら異界の門と繋がって異世界行きそうなレベル。
それは今回はいいとしてだ。
地図を見るからに、うわぁ…めっちゃ山じゃん…そらそうか、山含めてここ全部が稲荷大社のようなもんだもんな、知らんけど。
(稲荷山か、懐かしい。)
久しぶりに酒呑様が声掛けてきた。
(ここについてなんか大事なこととかある?)
(特になし、と言いたいところだが、女狐と一悶着あった。)
この方々の場合一悶着って言ったら結構デカい戦争レベルのものを想像した方が正しいと思う。
(戦ったりしたの?)
(そうだな、だがあのクソ野郎に仲裁されるとは思わなんだ。)
(あのクソ野郎って?)
(前に佐曽利とやらの妖気の持ち主だ。)
ここでその話が繋がるのか、少し気になる。
(その妖魔については、やっぱ思い返したくない感じ?)
(悪いがそうだ、今の言葉で言うと、キモい、だな。)
そんなレベルなのか…
(わかった、また今度どっかで聞かせてくれ。)
(カカカッ!気が向いたらな。)
話はここまでっと、そろそろ山登りを始めようかな。
すると、階段の上から悲鳴が響いた。
なんだ?また妖魔が出たのか?
「妖魔が出現しました、直ちに避難を始めてください。」
ここは専用のアナウンスがあって助かる!階段からは人が降りてくるから、草むらを走るか!
12:00 伏見稲荷大社 四ツ辻
おっといたいた、今度はちょっと多いな。一本踏鞴が1.2.3っと、周りの避難は済んでるみたいだし、やっちまおうか!
「下がっていなさい、童。」
この声、もしかして!
「あんた!また!」
10日に出会った大男とまったく同じ姿、今日こそは逃がさねぇ!
「拙僧が始末するゆえ、童、今のうちに逃げなさい。」
「逃げるかよ!むしろ今は妖魔よりあんたに用があるんでな!」
だが妖魔の討伐だけは協力してやる、あんたはその後だ!
「ぬん!!」
謎の大男の一撃により、一本踏鞴の2体は消え去った。
「残り1体後ろから失礼!」
これであとは逃がさないようにすれば完璧!
「やりますねぇ童、ではこれにてさらば。」
「待て!あんた一体何もんだ?脱獄犯の慈心と関係あんのか!」
大男は丑崎の発した言葉で足を止めた。
「拙僧はただの通りすがりの坊主にございます、それ以上でもそれ以下でもありません。」
坊主だってのは認めるのか、じゃあやっぱ慈心である可能性は高いな。
「童、あなたは丑崎魁紀ですな?」
「なんで俺の事を。」
「見ればわかりますとも…このような童が戦いに参加するようになってしまっているとは…嘆かわしい…」
「何言ってんだ、あんた。」
「失礼、独り言にございますれば。童よ、引き返すがよい、これ以上踏み込んではならぬ。」
大男はそう言い残し、姿を消した。
「おい待て!」
まただ、また消えちまった…!
それよりなんなんだよ、これ以上踏み込んではならないって。次こそは絶対問い詰めてやるからな。
そうするとして一体どうすりゃいいんだ?どこに身を潜んでるのかもわかんない、どのようなタイミングで出てくるかもわからない。うーん……そうか、前例が2回しかないけど、どっちも妖魔が現れた時に姿を表してる、だったら次も京都のどっかで妖魔が現れたら出てくるんじゃねぇのか?
よし、ともかく収穫はあった、帰ってみんなに知らせよう。
12:30 ???
一方、その頃。
「嘆かわしい…もうあってはならないのです…童が戦いに向かうのは…だから俺は…拙僧は…!」
その男はただ空を眺め、己の怒りを空にぶつけた。
「この身はもう長くないでしょう…それまでは…せめて…童たちの明るい未来のために…うっ…うああああああああああああ!!!」
彼の怒り、そして悲鳴は誰にも届くことはなく、ただ空に響いただけだった。
12:30 ???
さらに同時刻、真昼間だが暗闇の場所にて。
「まだ見つからへんのか、長壁?」
「申し訳ございませんわ、脱獄したと聞いてからずっと探しておりますが、未だに尻尾が掴めませんわ。」
「まあゆっくりでええわぁ、焦るようなこっちゃあらへん。そやけど、妾の配下を食べるとは、ええ度胸してるなぁ。」
「では、此度は私が出向きますわ。必ず捕まえて見せますわ。」
「期待してんで、長壁。」
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