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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
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第百五十三集 観光道中

  1月10日 11:40 三十三間堂前


  さて、三十三間堂の東つったらなにがあるんだ?地図見て調べてみるか。


  ええと近いとこだとなんかお寺がいっぱいあるな…遠いとこだと稲荷大社、東福寺に清水寺か。うーんこんな任務なかったら普通に観光したかった…!


  「丑崎はん、どこから行くんや。」


  「負傷してるって話もなかったし、ちゃんと動けると予想して、少し遠くから行こう。」


  さらに観光欲も少し足して。


  「清水寺から行こうか。」


  「んな人多いとこおるんかほんま?」


  「魁紀さんがそう言うなら今は従うべきですよ猿。オイラたちの代わりに指示を出してくれてるんですから。」


  「んなこと言わんでも分かっとるわ犬、疑問に思ったから口に出しただけや。」


  「疑問というと人が多いとこに行くわけない、的な?」


  さすがに我欲は通してくれないか…


  「そうやな、世間に自分のことが晒されとったら人が多いとこに行きずらいやろ。せやからどっちか言うと稲荷大社のが怪しい思うわ、山なんやからいくらでも隠れる場所あるやん?」


  確かにその通りだ、稲荷山に入られたらもう探しようがない。だからこそ稲荷山が1番行くべきなのは分かる。


  「でも清水寺に行くぞ。」


  「なんでやねん!なんで今の説明でそうなんねん!」


  「俺が行きたいから。」


  「ようキメ顔してんなこと言えるなぁ…」


  「それならオイラも清水寺に行きたいです!普段来れないですし!」


  よしこれで2対1、多数決で清水寺だな。


  「これで慈心おらんかったら指示出し代わってもらうで、丑崎はん。」


  「あとでいくらでも代わってあげるからとにかく行こう!」


  「こんなん結局ただの観光やんけ…」


  なんとか申喰を説得して、清水寺に向かう3人であった。


  12:00 五条坂


  来た、キタキタキタ!!清水寺!!まだ坂の途中だけど!!


  「ほんまなんでこんなとこ来よう思うねん、なんもないやろ。」


  「分かってないなー申喰、まず俺と正は滅多に来れない、そして俺は寺院巡りが大好きでね、時間が許すならこのまま八坂神社とか龍安寺とか金閣銀閣その他もろもろ全部回りたいところだ。」


  ただあくまで今回は任務、少しは我慢しなければならない。


  「ちょうど昼ですし、何か食べましょうか。」


  「それには賛成や、朝からなんも食べてへんから腹が減ったわ。」


  「食べ歩きができるはずだから、適当に買って歩きながら食べようか。」


  12:10 五条坂


  「やっぱ八つ橋うめぇな。」


  「そんなんで腹の足しになるかい、ガッツリ唐揚げとコロッケが1番やろ。」


  「いいえ、ソフトクリームこそ至高です!」


  いや、それが一番腹の足しにならんだろ。


  「なんやなんや、なんか騒がしないか?」


  言われてみればなんだか騒々しいな、人の群れがこっちに走ってきてる。


  「妖魔ですね、妖魔の臭いがします。」


  「さすがやな犬、鼻がよう効くやないかい。まあ構えた方がええな。」


  「妖魔だ!!逃げろぉぉ!!」


  面倒くせぇなぁ、観光の邪魔しやがって、ただじゃすまねぇぞ。


  「避難はもう警備の方がやってくれてるみたいです、行きましょう。」


  12:15 清水寺


  妖魔が出たというのに、割とみんな落ち着いて逃げれてる、そして警備員の方もスムーズに避難活動ができてる。これも京都という土地が原因で、だいたい平安時代から妖魔が出現するようになったけど、初めて現れたのが京都だ。詳しくは分からないが、京都は日本の他の場所と比べて妖魔がかなり湧きやすい。それゆえ住民はみんな妖魔に対する警戒も強いし、他のところの人よりも妖魔に慣れてる。だからこうして逃げる時もスムーズなわけだ。


  そして妖魔は一体、通常より多少大きい鴉天狗だ。


  「妖魔は…なんやたった一体かいな、一瞬で始末したるわ!」


  「おい申喰!!」


  「まったくです、これだから猿は!」


  申喰が飛び込んだ瞬間、1人の大男が鴉天狗と申喰の間に入った。


  「お待ちなされ、(わっぱ)よ。」


  「な、なんやお前!」

 

  「童が戦うなどとんでもない、拙僧にお任せあれ。ぬん!」


  大男は正拳突き1つで、鴉天狗を吹っ飛ばした。


  えぇ…なんだあれ…これがワ〇パ〇マ〇ってやつか。


  「ご無事てすな、では、失礼。」


  大男は申喰を見るやいなや、直ぐに消え去っていった。


  「なんやったんや…今の男…」


  「服装からして僧侶だと思うけどあの笠被ってる僧侶ってなんて言うんだっけ?」


  「確か虚無僧(こむそう)ですね。」


  何もかもかっこいいな、俺も明日から虚無僧になろうかな。そんなことはとりあえずいいとしてだ。


  「まさか今のが慈心だったり…」


  「ですが薙刀は持っていませんでしたし、酒瓶も見当たりませんでしたよ。」


  「顔が見えへんかったからなんとも言えんな…」


  可能性はある、体は本当に大きかった、あの感じ2mは余裕であると思う。それに鴉天狗を一撃で仕留めた時点で並の人間では無い。


  「あの笠を被ってる人はだいたい2種類に分かれます、1つは修行僧、もう1つは罪を問われないために笠を被る犯罪を犯した武士です。」


  「そういや自分のこと拙僧って言うとったな。」


  「でしたら前者のが確率高いと思います。」


  こんな現代にも修行僧っているもんだな、特にあんな笠被ってる人なんて見たことないや。


  「せやけど慈心ちゃうとも限らへん、帰ったら報告や。」


  「そうだな、そうしよう。」


  「ですね、それじゃ成果はそれなりに得ましたし、観光の続きとしましょうか。」


  「よしそうしよう、今すぐ行こう、入場料いくらだっけな。」


  「気ぃ抜くの早すぎちゃうか?」


  謎の笠を被った大男が気になるけど、まだ慈心だって断定はできない。反対に、このタイミングで現れる大男なんてそうはいない、おまけに一人称が拙僧で戦闘力もある。追いかけられなかったのが失敗だったけど、きっとまたどこかで現れるはずだ。


  それまでは、ゆっくり観光するとしよう。


  「ええんか?ほんまにこんなんでええんか?」

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