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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
半妖の破戒僧編
162/193

第百五十二集 捜索開始

  1月10日 10:30 京都駅


  あれから15分、未だに犬猿による喧嘩が続いていた。


  「蛇は黙っとれ!今この犬をなんとかすんのが先決や!」


  「巳扇さんは下がっていてください!この猿をどうにかしないと話が進みません!」


  「もうこの2の人は…」


  「はい、そこまでです。喧嘩してる方が話進まないし、旅館に荷物を預けるのが先決です。」


  この女性の方が吉留亜香梨さん、今回俺たちの監督役の方だ。


  「一癖二癖あるとは聞いていましたが、さすがにこれは癖が強すぎますね…」


  「うちの馬と鹿がすみません…」


  「なんであたしが混ざられてんのよ律。」


  「たぶん馬鹿って言いたいんだろ。」


  ちょっとずつ巳扇の言葉を解読できるようになってきてしまった。


  「では行きますよ十二家の皆さん、旅館に荷物を預け次第捜索開始となりますので、よろしくお願いします。」


  「「はい。」」


  11:00 湯の館・京


  いろいろあったが、なんとか旅館に着いた。


  「各自部屋に荷物を置いた後、2階の会議室に集まってください、そこで捜索の説明をさせていただきます。」


  「「はーい。」」


  11:03 湯の館・京 505号室


  ここが今日からの俺の部屋か、余計なものがない分スッキリしてていいな。


  セミダブルのベッドに小さめの机、トイレも洗面台もあるしその他もろもろも完備、風呂は大浴場あるから問題なし、と。


  完璧だな、なんなら家よりいいかもしれない。


  ただ飯は自分で選べられないもんなぁ…羽澤の飯が食えないのが悩みどころだな…


  気づかないうちに羽澤にかなり依存してるのかもしれない、いやかなり依存してる。まあでも朝食と夕食は普通に旅館が出してくれるから、無いよかいいよな。


  「うし、荷物は置いたし、行くか。」


  11:08 2F 会議室


  「全員揃ったようですね、では捜索の説明を始めます。事前の説明は受けてると思いますが、念の為もう一度簡単に説明をします。今回の標的は脱獄犯慈心、発見して反撃するようでしたら討伐しても問題ありません。」


  「討伐や言うとるけど、慈心はもう完全に妖魔なったんか?」


  「完全ではございませんが、8割ほどは妖魔であると推測しています。詳しい事情はわかりませんが、妖魔を食べた結果、半妖になったとしか。」


  改めて思うけど妖魔を自分から食べるとかどういう神経してるんだろ、そうせざるを得ない状況だったんだろうけど、だとしてもなぁ。


  「こちらの写真に写っているのが慈心です。」


  吉留は写真を何枚かホワイトボードに貼る。


  ちょっと待て、なんか凄い既視感あるんだけど。


  「なんやなんや、フードに角とかほぼ丑崎はんやないかい!実は丑崎はんが慈心やったオチか?」


  申喰の言う通り、顔は全然違くとも、パッと見の外見は俺とほぼ一緒…


  「写真では分かりずらいのですが、慈心はかなりの大男だと聞いておりますので、丑崎さんと見間違うことは無いかと思います。他に特徴としては武器の大薙刀に包帯を巻いていて、酒瓶を常に持っているとのことです。」


  破門の理由絶対酒だろ酒、割としっかり破戒僧じゃねぇか。


  「次に捜索方法ですが、最後の目撃情報があった場所から周辺に広がるように2組に分かれて捜索していただきます。」


  待てよ、どういう分かれ方されるんだ、それ次第で面倒くささがだいぶ変わる。


  「午上さん、巳扇さん、そして私で一組。丑崎さん、申喰さん、小戌丸さんで一組。以上の組み合わせで探索に向かいます。」


  おいおいおいおいおい!わかっててやってんだろその組み合わせ!俺は酉脇じゃねぇぞ!どうすんだよこの犬猿ペア!


  「あーらら、仲良くやんなよ、藤十郎と正。」


  「さすがに心を配らなければならない組み合わせですね…丑崎さん、頑なに張ってください。」


  そう思うなら変わってくれ…この2人の仲裁とか酉脇にしかできないって…


  「では早速行きましょう、場所は三十三間堂です。解決は早ければ早いほど良いですので。」


  まあ頑張るか…とっとと見つけて捕まえれば喧嘩する暇もないだろ。


  「おい犬、足引っ張ったらどうなるかわかっとんのやろな?」


  「猿こそ、足引っ張らないでくださいよ。」


  「あ?」


  「なんですか?」


  「2人とも喧嘩するなら全部終わってからにしてくれ…」


  もう始まったよ…


  「それもそうやな、丑崎はんが言うんや、そうしたるわ。感謝しぃや犬。」


  「魁紀さんに感謝してくださいよ、魁紀さんがいなかったら猿なんて組んであげてませんからね。」


  「はいそこまでー、永遠に終わんなくなっちゃうから。まず現地着くまで仲良くしようねー。」


  酉脇の苦労がよくわかった、こんなん常に止めてないと勝手に新しい喧嘩が始まる。


  11:40 三十三間堂前


  三十三間堂、とにかく像がいっぱいあるところだ。確か風神雷神とかいろいろあったけどちゃんと覚えてない。


  「ここで分かれましょう、私たちは西、申喰さんたちは東をお願いします。」


  「はいはい任しとき。」


  午上、巳扇、吉留の3人は西に向かった。


  「ほなわしらは東や、行くで。」


  「指図しないでくださいよ、リーダー気取りですか?」


  「あ?」


  「なんですか?」


  「はい、俺が指示出すから2人は仲良くして…お願い…」


  仲良くしなくてもいいから捜索中はせめて喧嘩しないで…

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― 新着の感想 ―
[良い点] >羽澤の飯が食えないのが悩みどころ しっかりと胃袋を握られていますね(笑) 争奪戦は羽澤さんが一歩リードでしょうか。 [気になる点] 妖を食べてしまった破戒僧。 力を欲して自分から望んで…
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