第百五十集 初詣
1月1日 7:00 鎌倉 鶴岡八幡宮
「あけおめ〜、ことよろ〜。」
「新年なのにテンション低すぎない?」
「そら学校もないのにこんな朝早く鎌倉まで来たらテンション低くなるだろ。」
夜は年越しそばを食べて、んで4時間だけ寝て電車乗って4人で初詣しに鎌倉まで来てるわけだ。
「そういや葉月先生の件で1回来たなぁ、割と最近なのにもう懐かしいや。」
「へーなになに?その話。」
「まあ、いろいろあったんだよ。」
冷残、敵は敵でも、いろいろ考えさせられた敵だったな。
「そんなことより早く行くわよ、結構人並んでるし。」
「それじゃ行こうか。」
「はっつもうで!はっつもうで!」
初詣来るのいつ以来だろ、あれは確か中学…いや小学生の頃か?わからん、久しぶりすぎて。
8:00 鶴岡八幡宮 本宮前
「外からここまで来るのに1時間って…」
「みんなお願い事は決まった?」
「決まってるわ。」
「たくさんあるよ!あれとか、あれとか!」
願い事は口に出して言わない方が叶うぞ。
「魁紀は?」
「俺はまあ、そうだな…」
3人に対して俺なりの答えを伝えられますように、かな。
「教えなーい。」
「いいじゃん教えてくれたって。」
「ダメよ幽奈、願い事は口に出したら叶わなくなるわよ。」
「そうだよゆなゆな、聞いちゃダメだぞ!」
そうだぞ、この願いだけは叶って貰わないと困る。
「じゃあ行こうか。」
脱帽、二礼、二拍手、一礼。参拝の仕方を書いてくれるのは嬉しい、場所によって違うのと普通に覚えてない。
3人に俺なりの答えを出せますように…
よし。
「帰ろっか。」
「そうだね、どこも人多いだろうし。」
「ご飯だけ食べて帰りたいわね、お腹がすいたわ。」
「私も!」
そういうことを言われると腹が減ってきた、責任を取ってもらうためにご飯に行くしかねぇな。
「帰り道で確かいいしらすの店があったはずだから、そこに行こう。」
まあ俺しらす好きじゃねぇから食えねぇけど、他に何かしらあるだろう。
8:15 しらす屋
「なんでよりにもよってお前らがここにいるんだよ…」
店に入ると、そこには新井兄妹に五十鈴、そして田口と大谷がいた。
「なんだなんだ、カップル同士で初詣か?」
「龍太郎はそうかも知んねぇけど俺はちげぇよ!琴里と行こうと思ったら冬奈がな…」
「おいバカ兄貴なんか言ったか?」
「何も言ってません…」
あそこの兄妹は相変わらず仲悪いな…
「で、龍太郎たちは?」
「いや、ほら、色々あったし…2人で初詣とか…行ってみたい…じゃん…?」
どんどん声小さくなってったけどまあなるほどそういう事か。
「夏と冬奈と3人で店に入ったところ、たまたま田口さんと大谷さんがいただけですよ、丑崎さん。」
「本当に偶然すぎるよねー、龍太郎とご飯食べてたら3人が入ってきてたんだもん。」
偶然がこう何度も重なってたまるかよ…まあいいや、ご飯食べよう。
「せっかくですし、店の方にお願いして席を一緒にしていただきましょうか。」
「いいね琴里ちゃん!そうしようそうしよう!」
五十鈴の言ったことに大谷はテンション高く同意した。
その後は全員で同じ席でご飯を食べ、話をした。
五十鈴と夏は相馬の件について聞いたり、龍太郎と大谷は葉月先生の件について聞いたり。どっちも関与してる俺からすればそこまで思い出したいことでもないが、もう解決出来たことだから思い出して悩むこともない。
「んでよ魁紀、結局3人の誰が好きなんだよ。」
「いいか夏、世の中には触れていい話と触れてはいけない話がある。そしてそれは触れてはいけない話だ、表出ろ、その体に教えてやるよ。」
せっかく今考えたくなかったから頭の隅にしまった話なのに思い出させやがって、許さん。
「おおいいぜ!最近はまともに体動かしてなかったからな、いい運動になりそうだ!」
「覚悟しろよ、武器ないからって戦えない俺じゃないぞ。」
「魁紀こそナメるなよ、格闘術なら葉月先生仕込みでたくさん習ってきたからな!」
「2人ともそこまでです、やるなら学校が始まってからにしてください。」
「「あ、はい、すみませんでした…」」
仕方ない、総班長がそう言うなら素直に従おう、五十鈴とことを構えるつもりはないからな。
「まったく…こんな所で問題を起こそうとしないでください、後から先生に怒られるのは私ですから…」
「「はい…すみませんでした…」」
苦労人というべきか、うちのクラス問題児しかいないもんな、問題児共の総班長と考えたらそら苦労人だわな。
「もう食べ終わったのでしたらお金を下さい、私がまとめて会計してきますので。」
会計までやってくれるなんて…すまないな五十鈴…
「「ごちそうさまでした。」」
9:15 鎌倉駅前
気づいたらまた1時間くらい経っていた、みんなでご飯を食べていたからか時間が早く感じる。
「では私たちはこれで帰りますが、みなさんはいかがなさいますか?」
もうやることないし早く帰って寝てぇな。
「俺は帰る、眠い。」
「そうだね、ちゃんと寝れなかったし。」
「私は少し買い物してから帰るわ。」
「私は実家に帰る!そろそろ高校受験だからちゃんと勉強しろって親に怒られて…」
むしろなんで今まで怒られなかったんだよこいつ、てか遅すぎるだろ、試験2月だろ。
「私と龍太郎はこのまま江ノ電で江ノ島に行ってくる!」
「こんな寒いのによく行けるよな。」
「朋実がどうしてもって…」
あっ…心中お察しします…
「それでは解散ですね、ではみなさん、また学校で。」
「「またねー!」」
こうして、騒がしい1日となった。
新しい1年になったからと言って、特に何かが変わるわけでもなく、これからも同じメンツで学校生活を過ごしていく。
祈るべきは、平和的でごく普通な面倒事の起きない日常が、これからも続けてくれること。案外当たり前な事だけど、維持するとなると難しい。だからこそ、それがとても大事に思えてくる。
「あっ、そろそろ期末テストじゃん…」
「今更すぎない?」
「帰ったら範囲教えて…」
「仕方ないなぁ。」
やはり平和的でごく普通な面倒事の起きない日常を維持するのは、難しすぎるのかもしれない。
冬休み編はこれで終了です、ラブコメ展開ちょっと勉強します…自分で書いててもなにこれ?ってなったレベルなので…
次からはまた新しい章が始まりますので、今後もどうかご愛読よろしくお願いします。