第百四十九集 もっと先の話
12月24日 8:30 東京テイスニイランド
「鬼寅、誓え、もう私は二度とスペースギャラクシーに乗りません。」
「誓うわ…もう私は二度とスペースギャラクシーに乗りません…」
ちなみに何があったかと言うと、鬼寅が派手にぶちまけた。
「もう怖いとかじゃないわ…あんなに酔うものだったのかしら…スペースギャラクシーって…」
確かにあれは上下左右揺れまくるからな、酔ってもおかしくは無いけど。
「魁紀は大丈夫だったの?」
「大丈夫だ、どうしても少しはふらつくけど大丈夫。」
「あっ、そっちじゃなくて、こう…真由ちゃんの…かかってない?」
ああそっちか…
「そっちも大丈夫だ、降りるまで鬼寅我慢してたから助かった。だがともかくだ、もうこういうのには二度と乗るな、いいな?」
「うん…」
「ならばよし。」
まさか酔う系のものがダメだったとはなぁ、こういうのは耐性の問題だから仕方ないけど、もう強がるのはやめていただきたい。
「まゆちん大丈夫?おぶっこうか?」
「さすがにそこまでされる必要はないわよ…でもちょっとは休憩させて欲しいわ…」
「そうしよう、羽澤と鷹取は鬼寅のこと支えてやってくれ、座れるとこ見つけてくる。」
「うん、任せた。」
「ほらまゆちん、手ぇ貸して!」
「ありがとう…」
9:00 東京テイスニイランド
ちょっと歩いたとこにちょうど4人で座れるところがあったから、そこでしばらく休んだ。
「もう大丈夫か?」
「うん、もう大丈夫よ。」
「次からは強がらないでね。」
「でも思ったよりまゆちんが女の子だったから安心したよ〜!」
割と失礼な事言うなこいつ。
「思ったよりってどういうことよ!」
「だって思ったよりちゃんと魁紀にアタックしてるんだもん!ゆなゆなは文化祭で魁紀とイチャイチャしてたし!私だけ出遅れてるぅ!」
「ちょっと待て!だからイチャイチャしてねぇって!」
「ふーん、でも私文化祭1日目ずっと魁紀と手繋いでたわよ?私のが先だわね。」
「おい鬼寅それを言うのは!」
今ここでそれを言うとまずい!
「へー、思ってるより大胆だね魁紀ー。」
羽澤は一瞬丑崎を睨むが、すぐさま鬼寅とにらめっこを始めた。
「くそぉ…入院してた分を今取り返さなきゃ…ギュッ!!もう離さない!」
「離れろ、歩けない。」
「なんか私だけ冷たくない!?」
「気のせいだよ。」
離してくれ…冬なのに暑い…
「私だって魁紀のこと好きだもん、あの2人よりも先に、あの2人よりもっと長い時間で…なのに魁紀は素っ気ないし、ぜんっぜん振り向いてくれないし、鈍感だし…まあだからといって諦めたりしないけどね!」
「あのなぁ…」
「いつか絶対、天音がいいって言わせてやるから、覚悟してよね!」
チュッ…
「おまっ!」
鬼寅と羽澤が見てない間に、鷹取は丑崎の唇を奪った。
「初めてじゃないし、いいでしょ!今度は不慮の事故だなんて言わせないから!」
「「今、何した?」」
鬼寅と羽澤は何かを感じ取り、鷹取と丑崎の方を見た。
「知らなーい!私次あれ乗りたーい!!」
「おい!待てっ!」
丑崎は尋問されぬよう、鷹取を追いかけた。
「待たないよーだ!でも…魁紀のいい返事はどれだけ経っても待ってる…」
「なんか言ったかー?」
「何も言ってない!」
20:00 東京テイスニイランド
1日はあっという間だった。最初こそはドタバタしてたけど、そっからは本当に一瞬だった。アトラクション乗りまくって、ご飯食べて、お菓子買って、そんで今はパレードを見てる。
「いつも思うんだけど、あの着ぐるみの中って暑くないのかな?よくそんな状態で踊れるね。」
「聞いた話だけど、中に保冷剤とか入れてるらしいよ!」
「さすがにそれはないんじゃないかしら…」
確かに、着ぐるみ着てるのによくあんなに動けるよな、俺だったら絶対転けて頭外れて中身バレてる。
「またみんなで来たいね。」
「うん!また来たい!」
「今度はシーにも行きたいわね。」
御三方楽しそうでなによりだ、次はいつになるんだろうな。
「あれ?雪降ってきてない?」
「本当だ!!わーい!!」
「この時期にしては早いわね。」
雪か、確かなんだっけ、ホワイトクリスマスって言ったっけ、これ。
「なんだがロマンチックだね。」
「こんな時に相手がいたらなぁー。」
「ふん…」
どういう状況だよ、本当にどういう状況だよ、あなたの事が好きですって3人の女の子に言われてる状況の恋愛話がどこにあるんだよ。しかもよりによって好かれてる人間がこんなにも優柔不断って終わってるだろ。
「何度目になるかわかんねぇけど、いつかは絶対に答えを出すから、それまで…」
「何度も言わなくて大丈夫、分かってるから。」
「答えなんてもう分かってるしねー!大丈夫大丈夫!」
「好きなだけ悩みなさい、私が許すわ。」
「ありがとうな…」
何度も何度も考えては答えを出すから待ってくれ、か…待たせる側はともかく待ってる側はどんな気持ちなんだろう…俺だったら答え出るまで気が狂いそう。
3人に優劣なんて正直ない、好きか嫌いかの話なら好き…の方だし。こういう時酒呑様や龍太郎に相談できたらなぁ…いや、このことは自分で悩んで決めるべきだ、俺が俺の意思で決めなきゃ3人に失礼だ。
答え出せるまでしっかり悩んで、しっかり考えて、その時の俺が思う俺の好きなやつの手を取る…いやぁ、難しいな…
「そろそろ花火上がるよ!」
「見たーい!!」
「魁紀、もっと近いところで見に行くわよ!」
羽澤と鷹取は先に走り出し、鬼寅は俺の手を取って2人を追いかけた。
「おう!」
果たして、丑崎は一体誰の手を取るのか、それはまだもっと先の話である。
ラブコメ展開書くの下手すぎて嫌になりそうです…