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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
151/193

第百四十一集 終演

  10月25日 21:40 日本武道館 ステージ上


  (酒呑様、まだかかりそう?)


  (慌てるでない、今に終わる。)


  「ガアアアアアア…!アアアアアアアアア!!!」


  「暴れんな…!」


  丑崎は佐曽利の頭を掴み、そのまま床に押さえつけた。


  「アアアァァァ……」


  「よしっ…」


  そして、徐々に佐曽利の身に纏っていた妖気が消えていき、佐曽利は元の姿へ戻った。


  (終わったぞ魁紀よ。そして1つ、ことが済んだら誰もいない地に向かえ。)


  (ありがとう酒呑様、それはいいけど、なんで?)


  (その時に話す。)


  何やらすごく意味深だ。


  (わかった、後で聞く。)


  最近の酒呑様は前と比べて様子がおかしい、意味深なことをよく話すようになった。


  ただ話し方だったり態度とかはいつも通りだからそこまで気にならないのが問題なのかもしれない。


  「これで、いいのかな…疲れた…体が重い…」


  丑崎は疲れからか、その場に倒れ込んだ。


  「魁紀!!」

  「魁紀さん!!」


  大丈夫だから今は大声で呼ばないで欲しい…


  「結局出番はなかったね。」


  「本当よ、なんのために体力を温存させたと思ってるのかしら。」


  羽澤と鬼寅もゆっくりではあるが、丑崎に向かって歩いていた。


  「あぁ悪い悪い…こっちで何とかなった…」


  「それより本当にもう終わったの?」


  「あぁ…佐曽利さんの妖気は童子切で吸い切った…もう妖魔になる心配は無いはずだ…そうだ、鷹取と相馬は無事か…?」


  「それは心配ないぜ魁紀、恵ちゃんはまだ目が覚めねぇけど、鷹取の方はそれなりにピンピンしてるぜ。」


  ならよかった…


  「なになに!魁紀心配してくれたの!?うっれしいなーうっれしいなー!」


  うるせぇ…やっぱよくないわ…


  「それじゃあ俺は朋実たちと葉山先生を呼んでくる、みんなはここで待っててくれ!」


  「待つのは龍太郎の方だ。」


  丑崎たちが話してる間に、大谷たちはすでに武道館の中に入ってきていた。


  「物音が鎮まったから入ってきたけど、思ったよりみんな元気そうだね。葉山先生はもう呼んであるから、それまでにみんなゆっくり休んでてね。」


  そうか、もうだいぶ話が進んでるようだな。ならこっちはこっちの話を進めるか。


  「よっと、ほんじゃあとはみんなに任せた!ちょっと散歩してくる!」


  「ちょっ魁紀!!」


  今は悪いが待てない


  「ことが済んだらすぐ帰るから!安心しろ!」


  「おい!!」


  丑崎はそう言い残して武道館の外に出ていった。


  21:47 日本武道館 正面出口


  (酒呑様、どんな話だ?)


  (気が使えるではないか魁紀よ、誰もいないところに行くとは。)


  (酒呑様最近やけに意味深だからな、悪いことがあったら嫌だなと思って。)


  (我をなんだと思っておるのだ。)


  実際最近そうじゃん。


  (それでそれで、どんな話?)


  (先程吸った妖気の話だ、こいつを解き放とうと思っておるのだ。)


  (え、普通に酒呑様の力にすればもっと強くなるしいいんじゃねぇの?)


  (馬鹿者が、こんな雀の涙程度の妖気で我が強くなれるはずが無かろう。が、それはそれ、この妖気には本来の主がおる、そいつの妖気を我の糧とするのは癇に障る。)


  佐曽利さんの妖気、自分のものでは無いと思っていたけど、酒呑様が言うほどの人物の妖気だったのか。


  (そいつはどんなやつなんだ?)


  (思い出すだけで吐き気がする、今はそれだけ分かってればよい。)


  (そう…なのか…)


  (では妖気を解き放つ、多少周囲に衝撃が出るかもしれんが、まあそこは気にしなくてもよかろう。)


  (いや気にして!?ここ皇居の近くなんだけど!?)


  (皇居?カカッ!未だにそんなものが存在していたとは!なら尚更気にしなくてよくなったわ!むしろ衝撃の強さを上げて吹っ飛ばしてもよいな!)


  (良くねぇから!家帰るまで我慢してくれ、そしたらどっかいい場所見つけるから!)


  こんなことで警察の世話にはなりたくねぇ!


  その後丑崎は武道館にいたみんなと合流し、葉月の到着を待った。


  葉月の到着後、佐曽利と相馬、そして怪我人は病院に運ばれ、残りの者はそのまま1度帰宅することになった。


  10月26日 8:00 自宅


  今日が休みで本当によかった、めっちゃ疲れた。ベッドってこんなにふかふかだったのか、もう2度と離れない。


  「魁紀!お見舞いに行くよ!」

  「魁紀!お見舞いに行くわよ!」


  なんでお前らそんなに元気なんだよ、昨日の功労者に対しての労いというものはないのかね、お父さん悲しい!


  そんなことを考えていた丑崎であったが、問答無用でベッドから下ろされるのであった。


  10:00 東京都港区 東京兎月病院


  昨日の夜病院に運ばれた怪我人組、龍太郎、冬、鷹取。そんで意識を失ってる組、佐曽利さんと相馬。結果から見てよく5人で済んだもんだ。


  「来たね兄ちゃん嬢ちゃん方、昨日運ばれた5人だが、田口君は妖気の使いすぎとあちこちの骨にヒビが入ってる、新井さんはたぶん実戦慣れしてない故のガス欠、鷹取さんは右腕に大きい切り傷があって、傷跡は今後消えないだろう。ともかく全員しばらく安静だ。」


  鷹取にあとで改めて謝っとかねぇとな。


  「佐曽利さんと相馬さんに関してだが、佐曽利さんはまだ目を覚まさない状態だ、妖気に慣れてない体に妖気を暴走させたからだろうな。相馬さんの方はついさっき目を覚ました、面会は禁止されてるが見に行ってやってくれ、今の彼女には寄り添ってくれる人が必要だ。」


  「ありがとうございます、薬守(やくも)さん。」


  「いいっていいって、それじゃあな。」


  卯道はその場を後にした。


  「まずみんなの所に行かないとね。」


  「先に恵のところに行った方がいいと思うわ、薬守さんの話聞いてなかったのかしら。」


  「ん?何か言ったのかな真由ちゃん?」


  「あら聞こえてないのかしら、ごめんなさい、私としたことが耳が悪いことを忘れてしまったわ。」


  「病院で喧嘩するなお前ら。3人のところには俺が行ってくるから、相馬のところには2人で行ってこい。」


  こういう時は女子トークで何とかしてもらった方が相馬のためになるだろ、知らんけど。


  「うん、そうしよっか。」


  「ええ、わかったわ。」


  10:10 東京兎月病院 病室(男)


  「失礼するぞ、調子はどうだ龍太郎。」


  と、聞いたのはいいが、調子良さそうには見えないな。


  「全部終わったらちゃんと言うって言ってたのになんで言わないの!!」


  「だ、だからまだその時ではないというかなんと言いますか…」


  夫婦喧嘩の真っ最中だった…

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